町村議会新議員研修会

講師

議会運営と質問の基本的考え方

議会の構成

1.議会の特色

  • 長は独任制であるのに対し、議会は合議機関である。
  • 議会の意思は最終的には本会議における議決によって決まる。議決は多数決(過半数で決する)によるのが基本である。

2.議長・副議長→町長・副町長との違いを確認

  • 議長・副議長は選挙によって選ばれる。
  • 副議長は議長に事故あるとき、又は議長が欠けたときに議長の職務を行う。副議長は議長の職務代理者ではなく、副議長の職名で議長の職を行う。
  • 正副議長ともに事故あるときは、仮議長を選挙し、仮議長が議長の職を行う。
    →正副議長ともにコロナウイルスの陽性または濃厚接触者となった場合
  • 議長の職を行うもの(副議長、仮議長)がいない場合は、年長の議員が臨時議長として議長の職を行う。(※議席の指定、会議録署名議員の指名、会期の決定の権限)

<議長の主な権限> → 広範な議長の権限に従うことを表明する機会が選挙

(1) 秩序保持権
●議場を混乱に陥れることなく、議事を円滑に進行するための権限。
●議員個人に対しては、i発言の制止、ii発言取り消し命令、iii出発言禁止命令、ivy 退去命を発することができる

(2) 議事整理権
会議の議事を円滑に行うための権限
① 議会・会議を開閉する権限
定例会等を開閉する権限や、当日の会議を開閉する権限は議長が有する。
② 議事日程を作成する権限(本会議招集権・日程なければ会議なし)
③ 議事を進行させる権限(定足数の確認、採決方法の決定等)
④ 発言を許可する権限
議場における正規の発言はすべて議長の許可

(3) 議会代表権

  • 議会という地方自治体の機関を代表する権限
  • 対外的な議会の意思表示(意見書等)は議長名でなされ、外部からの議会に対する行為(請願の提出等)は議長宛になされる。
  • 委員会が第三者の出席を求める場合等において通知を発するのは議長である。委員会の出席説明の要求く条 18)、公聴会の公示く

(4)事務統理権(予算執行権、庁舎管理権はない)

•事務局を指揮し、議会の事務を統括的に処理する権限

① 会議録を作成する権限
・ 議長は事務局に命じて会議録を作成(調整)させる権限を有する。
②事務局職員の任免、事務局の指揮監習法138>
・ 議会の事務を担任させるため、議会に職員を置き、職員は議長の命を受けて議会事務

(5)議員に対する権限

議員に対する出席催告(法第 113条)、未応招又は欠席議員に対する招状の発付(法第 137条)、閉会中の議員の辞職許可(法第126条)等

(6)調整権

議会が法律的に又は政治的に行き詰った際に打開策を講ずることが当然の議長の責任・職務である。

3.定例会と臨時会

  • 定例会は定期的に招集される議会。通年会期(365日開催)も選択可能。
  • 臨時会は必要がある場合において、審議される事件を特定して招集される。
  • 招集権は長にあるが、臨時会については例外的に議長も招集できる。
  • 災害等の場合、開会の日を変更することが可能となった。(地方自治法改正)

<長の招集告示の例(川崎市)>

① 定例会
川崎市告示第288号
令和2年第4回川崎市議会定例会を次のとおり招集します。
令和2年5月25日
川崎市長福田紀彦
1日時 令和2年6月1日(月曜日)午前10時
2 場 所川崎市役所内市議会議場

② 臨時会
川崎市告示第258号
令和2年第3回川崎市議会臨時会を次のとおり招集します。
令和2年5月1日
川崎市長福田紀彦
1 日時 令和2年5月13日(水曜日)午前10時
2 場所 川崎市役所内市議会議場
3 付議事件  (1) 令和2年度川崎市一般会計補正予算

本会議と委員会

  • 本会議は議員全員で構成される議会の最終意思決定機関。
  • 委員会は本会議の下調べ機関であるが、独自に調査を行うことができる。

    常任委員会→議案、請願等を審査、その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査
  • 委員会は、本会議中は開くことができない。本会議が優先される。
  • 委員会は本会議に比べ、議会が独自に組織や運営を決める自由度が高い。
    →地方自治法ではなく、会議規則や委員会条例で規定。※ オンラインによる委員会
  • 議会は会期ごとに独立している。ただし、委員会は閉会中継続審査事件を有していれば、閉会中も活動できる。
    →閉会中における委員視察
    標準会議規則 (委員の派遣)第74条 委員会は、審査又は調査のため委員を派遣しようとするときは、その日時、場所、目的及び経費等を記載した派遣承認要求書を議長に提出し、あらかじめ承認を得なければならない。
<委員会審査の特徴>

◉委員会においては、実質的な審査を行うため、本会議に比べ手続を簡素化している。〔形式よりも実質重視〕

① 委員会では「議事日程」を作成する必要はない。→「延会」はない。
② 質疑(事件が特定されているので質問はない)について、本会議では自己の意見を述べることができないとされているが、委員会において委員は自由に質疑し意見を述べることができる。
③ 質疑回数の制限がない。→一問一答
④ 動議(修正動議を含む)は委員一人が提出し、賛成者がなくても議題となる。ただし修正内容の周知を図る観点から「あらかじめ委員長に提出」することとされている。
  標準会議規則 (委員の議案修正)
  第69条 委員は、修正案を発議しようとするときは、その案をあらかじめ委員長に提出しなければならない。
⑤ 委員会の記録は会議の概要とし、全文反訳を求めていない。これは委員会の公開と関連した扱いであるが、透明性の確保の観点から本会議と同じ扱いとする傾向にある。

◉委員会の審査に幅と深さをもたせ、審査の慎重を期すため、①委員派遣、②委員外議員(オブザーバー)、③参考人のような制度が設けられている。

◉委員会では委員同士で議論(熟議)することが重要。

<会議公開の原則>
  • 住民代表の機関である議会の審議状況を住民(現在及び将来)や報道関係者が自由に見聞できること。
    (傍聴の自由、報道の自由、記録の公表)
  • 委員会は実質的議論の場であるという考えから、標準委員会条例は、聴を委員長許可とし、原則公開とはしていない。
  • 実態としては公開の方向で各議会は対応しているが、迷惑施設に関する議案などの場合、公開では忌憚のない意見を述べることができない場合もある。委員会を非公開とする場合、その理由を明確にし、住民に説明することも必要である

5.協議調等の場 → 委員会との違いを確認

  • 会議規則で協議調整等の場(全員協議会、正副委員長会議等)が設置できる。
  • 議会の庶務的事項(委員会間の調製、広報、図書室運営など)を協議。
  • 議案を議決することはできない。

議会運営とは

1.憲法における地方議会の位置づけ

憲法
第93条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の東員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

◉二元代表制

・ 二元代表制の意義を確認することが必要「諮問機関」ではない。→ 議会の独自性と執行部との緊張関係
・ 議会の役割

① 住民代表機能→住民目線。住民のいやがることも
② 監視機能→  積極的に監視する
③政策提案機能→夢を語る

◉「議事機関」とは(憲法 93条)

◯議会は立法機関である。地方議会の場合それに加えて当該団体の最終意思決定機関(首長の事務執行の前提手続の了承)の機能も有する。
◯「議事」とは会合して事を議すること。会合による相談、審議。また、議すべき事柄。〔新字解(1868)

議事手統=審議する手続
  審議する環境を整備するための手続
  議長選挙 会期決定議席の指定等
  議会内の調
  執行部との調整

議会運営の主体は議員 特に議会運営委員会の役割は重要

議会運営委員会の運営上の留意点

  • 定足数の考え方は常任委員会等と同じであるが、議会運営について協議するという委員会の性格上、全員が出席することが望ましいとされている。
  • 委員会意思の決定は表決によることとなるが、議会の円滑な運営を確保するためには、全員が納得するまで調整することが望ましい。少数者の意思を尊重する運営が望まれる。
  • 議会運営委員会における決定事項を議員は守しなければならない。委員は決定事項を周知徹底させる責任を負っている。→オブザーバー (委員外議員制度)

定例会の流れ(例)


3.議会(委員会)運営の基本的考え方

①規則(法律、会議規則、条例等)は議員によって守されなければならない。議員の権利と議会の権利が衝突した場合、議会の権利(秩序)が優先する。
→選挙で選んだ議長の指示(秩序保持権等)に従う。正副議長を選挙で選ぶ意味は、正副議長の決定に従うという意思表明である。 =アンパイアとしての議長
② 議会は公平と誠実さをもって運営されなければならない。
③ 議員の権利は同等平等である。議員は同じ権利、義務を有する。
→ 議員平等の原則
④ 審議を進めるためには定足数以上の出席が必要である。定足数の目的は、代表性を持たない組織が議決することを防ぐことである。
→ 定足数の原則
⑤ 過半数で決する(価値は相対的。明日は我が身)。決定されるまで発言することは自由であるが、一旦決定されたらその意思に従わなければならない。
→過半数の原則議会意思は本会議議決で決定
⑥ いったん議決が行われると、同じ会合で同一の議案やそれと本質的に同様の議案を取り上げることは議事規則に反する。
→ 一事不再議の原則
⑦討議における個人攻撃は常に議事規則に反する。討議は事実に向けられるべきで個人の人格に向けられてはならない。

4.議会豆知識

〇 招集 召集
【召集】議会を天皇が「召す」こと。
憲法第7条天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ぶ。二 国会を召集すること。
【招集】長が対等の立場で議会を「招く」こと。
O 事件 議案
【事件】 処理もしくは調査すべき事柄又は議題となる問題のこと。議案、人事、選挙、会期等、〇〇に関する件
【議案】議会の議決を要する案件のこと。具体的内容を持っているもので、そのまま議決の対象となるもの予算条例案
《議事次第書例》
<議題の告>
•議長日程第〇、「【第〇号議案】【〇〇〇〇の件】」を議題といたします。

審査審議
【審査】委員会において、議案等の特定の事件について、議論し一応の結論を出す一連の過程のこと。
【審議】議会の本会議において、付議事件について説明を受け、質疑し、討論をして表決する一連の過程のこと。※ 委員会の閉会中の継続審査又は調査
〇質疑質問(代表質問 一般質問)
【質疑】議題になっている事件について、賛否又は修正等の態度決定が可能となるよう不明確な点について、提出者等の説明や意見を質すもこと。このため、質疑に当たっては、自己の意見を述べることはできないこととなっている。
【質問】議題となっている案件とは無関係に、当該地方公共団体の事務全般について、報告を求め又は所信を質すこと。

〇表決採決
【表決】本会議での議会の意思又は委員会における会議の意思を決定するため、個々の議員又は委員が参加して、議案に対して賛成又は反対の意思表示をすること。
【採決】議長が本会議で議題となっている案件について、議員に賛成・反対を問い、その意思表示を集計すること。表決とは裏腹の言葉で、表決とは議員側からみた表現であり、採決とは議長側から議員をみた表現となっている。

5.主な会議原則  →  会議を公正・効率的に進めるルール

(1) 定足数の原則(議事定足数・議決定足数)
◯会議を開くに必要な最小限の出席議員数。合議体の成立要件。
◯議員定数(条例定数)の半数以上の出席が必要(特別多数議決を除く)。
※ 議長も議員であるので、出席議員に含める。

(2)過半数の原則(出席議員※の過半数で決する。議長裁決。例外あり)
議会が意思を決定するには、出席議員数(採決の際に表決権を有する議員)の半数プラス1人以上の賛成を要する。→ 特別多数議決
例)議員の除名の議決 在職議員の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の特別多数議決
※ 議長の扱い 過半数議決の場合の出席議員には、議長は表決権を有しないので含めない。(特別多数議決及び選挙については議長も含める。)


(3) 会議公開の原則→秘密会
住民代表の機関である議会の審議状況を住民や報道関係者が自由に見聞できること。
(傍聴の自由、報道の自由、記録の公表)
→ 誰に向かって発言するか?会議録として歴史にも残る。


(4)発言(質問・質疑等)自由の原則=制約あり
議会は言論の府として、議員は議会で誰からも拘束されずに自由に発言できる。
ただし、何を、どこで、いつ発言するか、議会のルールに従う必要がある。


(5)討論交互の原則・討論1回の原則
◯本会議における討論で述べられる賛否の意見は、表決の前提という、やり直しのきかないぎりぎりの線に立って述べられる意見。
◯討論の公平を期すため反対、養成を交互に行う。
例)・趣旨説明の後の場合(委員会付託省略)趣旨説明は賛成内容であるから討論は反対から
・ 委員長報告が修正または原案否決の場合は、論は賛成か

III. 発言(質問・質疑)をめぐる留意事項

(1) 自治体のニーズ把握と優先順位の決定→活動の方向付け
自治体は、それぞれが独特である。どの自治体も特有の問題を抱え、どの問題に重点を置くかの順位も異なってくる。
(2)観察すること→些細な変化への気づき
普段の行動を、既存の問題や浮上しつつある問題を見つけ出す機会として利用する。一ヶ所に限らず別の地域も観察するために時折、普段とは違う道を歩いてみる、客層の違う店に入ってみる、など、街中のささいな変化にアンテナを張る。
(3)住民との会話→聴くことに徹する※傾聴力
住民と話をする際は聴き手となることを第一とし、議論や弁解は避けるべきである。態度全体に、情報を得ようとすることへの純粋な意欲を表すようにす
る。
人々との対面という設定での情報収集に加え、積極的に近づいてくる住民からは自発的な情報提供や批判を受けることもある。
(4)読む→正しい情報の収集
書簡や新聞記事には、これまでに浮上しなかった問題が見出せるかもしれない。他の自治体の問題が記事になれば、「私たちの自治体も同じ問題を抱えているのだろうか」という疑問が湧いてくるかもしれない。

2. 発言者が心すべきこと

(1)的を得た質疑をすること。
議題外のことを質問したり、ピントのはずれた質疑をして答弁者を困らせ、あるいは時間のむだづかいをしてはならない。
(2)わかりやすい質疑をすること。
自分だけがわかればよいというのではなく、会議員全員を代表して質疑している、というような気持ちがほしい。
(3)同じことを何度も質疑しないこと。
自分の主張を提議者が受け入れ、気に入る答弁をするまで、しつように答弁を求めるというようなことをしてはならない。
(4)質疑者としてのエチケットを守ること。
自分にはわからないからおたずねするのだ、という態度をとるべきであって、相手を尋問するような強圧的な態度をとるべきではない。
(5)発言についての取り決めに従うこと。
発言に関する規則、申し合わせを守り、発言の割り当て時間や順序等について、司会者の命に従うべきである。
(6)他の質疑者の質疑にも耳を傾けること。
自分の質疑だけ終わると席をはずす者がある。さらに、他の質疑者の質疑の際よく聴いていないで、すでに質疑された事項について平気で質疑する者がいる。他の会議員の迷惑となるばかりでなく、会議をだらけさせることになるから注意を要する。

3.発言に対する制約 ← 発言自由の原則

議会は言論の府であるが、ルールに従わなければならない。

(1) 質的制限
・無礼な言葉や私生活にわたる言論等を行ってはならない。
・発言は簡明に行わなくてはならず、議題に供されている案件に関する発言でなければならない。

□発言取消し・訂正→同一会期中に処理
 政治家として発言には責任を持つ。→そのまま残すことが原則

ア 取消しの方法
  第一は、発言者自らが取消しを申し出て議会が許可した場合。
  第二は、議長が秩序維持権に基づき取消し命令を出す場合。
   →取消し発言は配布用会議録に掲載されない。(会議規則による)
イ 発言の訂正
  ・ 発言の訂正は、字句に限る。
  ・ 訂正は発言者本人の申し出(議長の許可)によるほか、内容によっては、議長の会議録調製権に基づく修文によっても可能である。
(2)時間的制限
・議長によって会議が開かれない限り議員は正式の発言をすることはできない。
・ 議長の許可がなければ議員は発言できない。
・ 議長は、必要があると認めるときは、あらかじめ発言時間を制限することができる。ただし、発言の種類ごとの議員の発言時間の制限は、均等でなければならない。
(3) 回数制限
・質疑については、会議規則で明文をもって回数を制限している場合でも、委員会においては自由に質疑できることとされている。
・その場合質問については、質疑の回数制限の規定が準用されている。
・討論については、「討論一人一回の原則」がある。
(4) 場所的制限
・ 議員の発言は登壇して議員全員に対してなされなければならない。
・ 議長が許可した場合は議席で発言することができる。

IV.質問と質疑

質問と質疑

◯質問とは、当該地方公共団体の事務全般についての議員の調査権の発動。普段における議員活動の成果。質問によって何を得るか、目的を明確にすることが必要。
◯質疑とは、議題になっている事件についての議員の調査権の発動。賛否又は修正等の態度決定が可能となるよう提出の経緯や内容を質すとともに、疑問点について解明を求める。
◯行政の現状及び課題を執行部の責任ある者に対し、公開の議場において直接口頭で質すことで、住民に対し現状と課題を明らかにし、かつ会議録に残すことにより後世に伝えることとなる。
◯客観的な論拠、データに基づき、説得性を高めることが必要である

発言通告

◯会議において一般質問を行おうとする議員は、あらかじめ議長に発言通告書を提出しなければならないという制約がある。→ 通告の範囲は会議規則による
標準会議規則(一般質問)
第61条 議員は、町(村)の一般事務について、議長の許可を得て、質問することができる。
2質問者は、議長の定めた期間内に、議長にその要旨を文書で通告しなければならない。

◯これは審議効率を高めるという趣旨であるので、質問通告書は、答弁者がおおよその準備をできるような内容であることが適当である。質疑についても同様。


「なにを対象に、どういう問題意識で問いただすのか。」
→答弁を引き出すための手段と考える。
→問題を明らかにするためのストーリーを作る。論点を明らかに
→「その他」という項目はできるだけ使わない。

◯しかしながら、二代表制を活かすためには、議会と首長との間の緊張感も必要。
※ 質問重複の回避
一般質問については質問者が多数であるため、質問内容が重複する場合がある。
重複を避けるため、事前に会派間の情報交換を行う等の工夫も行われている。

質問

  • 当該地方公共団体の行政全般にわたり、抱える課題について質すこと。
  • チェック機能とともに、議員(議会)の意見を提案することも重要な役割である。

(1)質問の意義・着眼点

【住民代表機能を果たすための着眼点】→住民意思へのきめ細かな配慮。
▶ 「わがまち」のささいな変化にも注意を払う。
▶ 住民の意見を傾聴する。
▶ 議会報告会、議会と住民の対話の場の成果を活かす。
▶SNS等で「わがまち」が抱える課題を住民に明らかにし意見を募る。


【監視機能を果たすための着眼点】→執行部の所・現状を明らかにする。
▶「わがまち」の抱える課題の撃理を行い、優先順位に従い解決策を模索する。
▶単なる批判ではなく、客観的な分析に基づき行政運営の問題点を明らかにし、解決の方向を探る。
▶事実関係の確認は必要最小限とし、課題に対する姿勢(考え方)を明らかに
する。
国の動向、同様の課題を抱える他の自治体の例、マスコミの評価など多角的な調査を行い、なにが問題なのかについて説得力を高める。
▶ 議会が行った政策提案の実現について、今の状況を確認する。

【政策提案機能を果たすための着眼点】→監視の結果を提案につなげる。
▶「わがまち」のビジョン(夢)を示すこと。
▶ 提案実現のための必要な達成手段を提案すること。達成手段は条例化、予算措置、事務改善などの手法が考えられる。
▶ 提案は監視機能の結果得られた課題の解決をベースとすることも必要。
▶提案は新規施策だけではなく、今ある事業の見直し、中止なども含む。

(2)質問の方法

◯方法としては一括質問・一括答弁方式、一問一答方式(分割質問方式)がある。

◯質問は質疑のように対象が限定されていないことから、一問一答方式においては議員自身の考えや論点が拡散しないよう注意することが必要である。

◯パネル等の利用については、議会の判断であるが、言論の府であることを充分
留意する必要がある。→ 会議録の掲載方法

質疑

◉議題となっている案件について疑義をただす発言。案件に対する議員の調査権の発動。案件に付随し、議題外において行うことはできない。

◉質疑によって案件に対して全議員は共通の理解を持つことができる。

(1)質疑の意義・着眼点

  • 質疑の基本は議題となる案件について疑義をただすことである。そのためには、提出された背景、国の動向、他の自治体の対応、住民の反応などを幅広く情報収集することが必要となる。
  • 対象となる案件には、例えば条例改正の場合、議題となっている改正案だけではなく、条例全体、さらに改正の背景となる社会的問題も含む。
  • 条例の場合、解釈の指針や予算措置、施行による住民生活への影響、課題なども質す必要がある。
  • 「ただす」だけでなく案件に対する具体的建設的提案を行うことも重要。
  • 本会議における質疑と委員会における質疑が重複しないよう、それぞれの役割の明確化を図ることが必要である。
    ・ 本会議の質疑によって議案の基本的問題点を明らかにする。
    ・委員会ではそれら問題点について執行部を含めて委員間で討議(議論)しながら問題点の解明に向け議論を深めていくことが望まれる。
  • 予算については前年度決算の課題が解決されているかを問う。
  • 決算については、期待された成果をあげているか、今後の財政運営に反映させるべき事項はないか、という視点が重要である。
  • 与党的立場からは長の提案をさらに強固なものにする質疑も考えられる。

(2) 質疑の方法

  • 質疑の方法としては① 一括質疑・一括答弁方式と、②一つひとつの疑義を解明していく方法(一間一答方式)がある。
  • ①の方法は基本的な事項について質疑をする場合に向いており、②は詳細な審議を行う場合に向いている。
  • 両者の中間として項目毎に分割して質疑を行う分割方式がある。
  • 委員会においては、執行部を含めて議員同士で議論するという姿勢が重要である。

(3)質疑の成果としての政策提案

(ア)議案修正=修正動議(議員定数の十二分の一以上の者の発議)

◯修正は議案をより良きものにするため提案。長提出の議案に加えて、議員提出議案についても修正することは可能である。ただし、長の権限を侵さない、という制約がある。
法第 97 条普通地方公共団体の議会は、法律又はこれに基く政令によりその権限に属する選挙を行わなければならない。
② 議会は、予算について、増額してこれを議決することを妨げない。似し、普通地方公共団体の長の予算の提出の権限を侵すことはできない。
◯特に委員会においては、住民福祉向上の観点から、より良き内容にするための修正を常に視野に入れて検討することが必要。


(イ)決議(付帯決議)(国会:「附帯」決議)

〇議案を議決するに際して、可決するとしても、施行上の留意点を決議という形でまとめることにより、議会としての意思を表明することができる。
〇決議には法的拘束力はないが、執行部に対して政治的に影響を与えることができる。
〇 特に決算については、予算執行上の問題がある場合は、次年度予算における執行上の留意点を決議という形で表明し、注意喚起を行うことが有効である。
◯付帯決議は議案を委員会で議決する際に、議案に対する委員会としての意見を決定して議案に付することであり、委員会としての意思決定となる。


<参考> 決算附帯決議に対する市の対応(佐賀市議会広報より)
決算審査の充実
決算議案については、議会がこれを不認定(否決)にしたとしても、制裁的な法規定がなく、決算審査が形骸化していると言われるゆえんともなっています。
このため、佐賀市議会では決算審査を充実させる目的で平成 26年度まで試行実施してきた事務評価の経験を生かし、平成27年度から附帯決議による市長への意思表示を行うことにしました。
議会意思の予算等への反映
附帯決議では、今後の予算やその執行(事業運営等)への議会意思の反映を求めています。反映するかどうかは、市長が判断することになりますが、市長・市当局に緊張感をもった適正な予算措置やその執行を促す効果が期待できます。

参考資料


◎ 質問の論点の明確化するための作業ノート案
▶ 主張したい問題点について多角的に問題設定し、質問の通告書作成に役立てる。
▶その際重要なのは、住民の声とともに、主張を根拠づける客観的なデータの収集
▶ 一般論から具体論へ展開する。質問のストーリーを作る。


<作業ノート>案
◯ 最終的になにを実現したいか【政策提案】、またはなにを明らかにしたいか【監視機能】、を明確にする
◆ なぜこの問題提起を行うのか。
◯一般論として、そのことによって住民にとってどのようなメリットをもたらすか。または現状がどのようなデメリットをもたらしているか。その要因は何か。
◯主張に対して首長・執行部はどのように考えるか想定する。(過去の答弁を参考)


【政策提案を行う質問の場合】
◯実現したい主張を現在の町政特に総合計画とどのように関係づけるか。
◯主張を実現するために必要なデータの収集。(他の自治体の対応も含めて)
◯主張を実現のための手段の提案。
◯目的実現の障害は何か。なにを変えれば実現できるか。★ 予算、人材、住民意識等
◯実現した状態を維持するためにはどのような施策が必要かについての具体的に提案する。


【監視機能を果たすための質問の場合】
◯具体的問題点について、現状はどうなっているか。現在の町政、特に総合計画との関係性はどのようになっているか。
◯問題を解決できないとどのような状況になるのか。それを明らかにするために必要なデータの収集。(他の自治体の対応も含めて)
◯明らかになった問題点を解決できない理由の解明。なにを変えれば実現できる
か。☆予算、人材、住民意識等

◯実現した状態を維持するためにはどのような施策が必要か、具体的に提案する。

[作業の例]

主張 長が廃止を予定している公園を子供のために残すべき
◯質問の目的・主張最終的になにを実現したいかを明確にする
◆ なぜこの問題提起を行うのか
▶ 廃止予定の公園を残すべきである。公園は必要である。

◯一般論として住民にとってのメリット、または現状がどのようなデメリットをもたらしているか、その要因は何か、を確認する。
▶ 公園は子供の情操教育、運動機能の向上、友達作りのために必要である。また大人にとっても緑は憩いの場となる。
▶ 防災拠点としても必要である。

◯主張に対して首長はどのように答えるか想定する。(過去の答弁を参考)
▶ 公園からの騒音で困っているとの住民の苦情がある。廃止する方向で検討している。

◯現在の総合計画とどのように関係づけるか。
▶ 育ち育てる環境の充実、水と緑・公園の魅力の向上、地域防災活動の推進等が総合計画に掲げられている。

◯一般論から得られた方向性に基づいて、この問題を解決するための必要なデータ(他の自治体の対応も含めて)を駆使して主張を展開する。
▶公園のもたらす子育て環境への影響
▶ 防災拠点としての公園の必要性

◯主張を実現のための手段を提案し回答を引き出す。
▶騒音への対応策
▶清掃の徹底

◯目的を実現するためになにが障害となっているか。なにを変えれば実現できるか。
▶他の自治体における騒音対策の実例
▶ 騒音対策のための専門家の提言
▶以上を実現するための予算措置

◯実現した状態を維持するためにはどのような施策が必要か具体的な提案
▶清掃等維持管理の徹底
▶ 今後の公園造成への応用

V.議員に求められているのは

1.議員の位置付け

◯議員は特別職の地方公務員<地方公務員法3>→全体の奉仕者
議員の職務の特殊性から常勤・非常動という区分けには該しない。
<勤務時間がない、雇用関係にない)→365日 24時間議員として活動
→ 議会における活動のバックボーンになるのは、普段における議員活動
地方公務員法
(一般職に属する地方公務員及び特別職に属する地方公務員)
第3条 3特別職は、次に掲げる職とする。就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決着しくは同意によることを必要とする職

◯特別職の公務員であることから発生すること→コンプライアンス政治倫理
▶ 法的責任
・ 議会の秩序維持(議長の命に従う議会内のルール→懲罰)
・ 兼職・兼業禁止→個人の兼業禁止の緩和(地方自治法改正)300万円
・公選法による寄附禁止※お金だけではない。会費でも対価性が必要
▶ 政治責任・道義的責任→世論→選挙
・ 全体の奉仕者としての責務
  憲法第 15条②すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
  政治倫理違反に対する責任(議員としての行為規範)
  ★ 政治とカネの問題→法的責任
  ★ ハラスメント
  ★ SNS等ソーシャルメディアポリシー
▶ 資産等の透明性確保
・ 資産公開→利害官関係の明確化
・政務活動費収支報告書

◯守秘義務の適用がない。→ コンプライアンス
・ 公務員の守秘義務は、特別職である議員には適用されない。
・秘密会の議事や監査委員としての守秘義務など個別に規定。

2.議員のコンプライアンスの特色

◯ 一般的にコンプライアンスとは、「法令を遵守すること」とされている。その趣旨は、企業、具体的には雇用関係にある社員が法令等を遵守することにより、企業の社会的信頼を維持、向上させ、延いては収益を高め、株主など関係者の利益に資することにある。


◯議員のコンプライアンスはどのように考えるべきであろうか。
→ 議員にとって「職場」とは?議会だけが職場か?
◯議会(議長)と議員に雇用関係は生じていない。議員の雇用主はしいて言えば住民である。ヨンプライアンスを雇用主と構成員との関係で捉えるならば、議員は住民の頼を維持し、向上させるために法令等を全人格的に遵守することを使命とすべき、と言えるのではないか。
→ 議員は議員という仕事を行う個人事業主

◯議員のコンプライアンスとは、議会活動、議員活動、私的な活動等にわたり、それぞれの活動で遵守すべきルールを自覚しながら、住民の負託に応え、公正公平に職務を行使することにより、結果、議員という職業に対する住民の頼を高めることである。→政治倫理

◯さらに、「やってはいけないこと」を明確にするだけでなく、自分のフィールドの中でルールを守りながら、プレーヤーとして存分に活動すること(「やるべきこと」)を自らに課すことに意義がある。→命ぜられるのではなく、主体性・自己責任性が非常に強い

◯その際、議員の活動原理の基本は、「公正公平」であり、「全体の奉仕者」として、大局的な立場で結論を導き出すことが必要である。

3.政治倫理とは

◯政治倫理は単に内心の道徳的規律だけではなく、政治に係わる者の行為規範(守るべきルール、行動の指針)である。

◯議員の職は、主権者である住民からの話に基づくものであるから、公職者の私的な利害関係によって公職の遂行を妨げてはならない。
◯従って、公権力の正当な行使を確保するには、「公的」な利益と「私的」な利益との衝突を防止しなければならない。→政治とカネ 公と私
(藤本一美専修大学名誉教授による)

◯政治倫理とは、代表者としての品位を保ちながら、公平・公正に行動し、公的な利益を追求するために議員が持たなければならない行為規範(行動ルール)である。

◯政治倫理を実効あるものとするための前提として、議員は利害関係や資産状況をあらかじめ明らかにすべきとされる。→資産公開
◯ 国会の行為規範では「職務に関して」のルールとされているが、本来政治倫理は議会活動だけではなく、議員活動、選挙動、私的活動においても遵守しなくてはならないルールである。
→議員のコンプライアンスの中心

◆衆議院・参議院の行為規範
第1条議員は、職務に関して廉潔を保持し、いやしくも公正を疑わせるよ
うな行為をしてはならない。
第2条 企業又は団体の役職に就いている議員は、当該企業又は団体に関し政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律の規定により関連会社等報告書を提出すべき場合を除き、当該企業又は団体の名称、役職等を議長に届け出なければならない。
第3条議員は、議長又は副議長の職にある間は、報酬(自己の事業に係るもの及び金額が年間百万円以下のものを除く。次項において同じ。)を得て企業又は団体の役員等を兼ねてはならない。
2議員は、常任委員長又は特別委員長の職にある間は、報酬を得てその所管に関連する企業又は団体の役員等を兼ねてはならない。
(以下略)

◯地方議会においても、国会における政治倫理要綱や行為規範に倣って、政治倫理条例や政治倫理要綱が定められる例が増えており、その遵守が求められている。
◯ただし、最近においては、「政治とカネの問題」だけでなく、職務遂行における品位、高潔性の確保に対象が広がっている。→ ハラスメント問題、SNSの適正使用等

ハラスメント対策

(1) 議員に関するハラスメント対策の課題(研修・相談・再発防止)

① 議会におけるハラスメント対応の方向性→定義の明確化
・ ハラスメント防止に重点を置くのか。→議員倫理の徹底品位 議会基本条例や政治倫理条例に議員の責務規定を置く方法
・ ハラスメントが発生した場合の対応策に重点を置くのか。
対応策に重点を置く場合、ハラスメントの定義や議会の取るべき措置について具体的に定める必要がある。


② 議員の職務の特異性
▶議員の場合、「職場」「職務」の範囲をどのように捉えるか。
議会として対応する場合、議員活動のうちどの活動までがハラスメント禁止の対象となるか。私的活動は対象か。→ 政治倫理との関係


③ ハラスメントについての判断(相談)機関について
▶ 総務省は、和2年10月2日、各都道府県総務部長等あてに発した「地方公共団体におけるパワーハラスメント対策の取組状況について」において、人事委員会又は公平委員会への苦情相談が可能であることを職員に周知するよう要請している。→ 議員が関与している場合対応可能か
▶ 議員に関するハラスメントについての第三者による判断(相談)機関を自治体として設けるか、議会独自に設けるか。※ 議員で構成することは適当か。例えば百条委員会
▶ ハラスメントの客観的基準をどのように設けるか。
  【基準の例】
  パワー・ハラスメント →一般的な基準と同じでよいか。
  ・ 職場の地位、優位性を利用しているか
  ・ 業務の適正な範囲を超えた指示や命令をしているか
  ・ 精神的苦痛を与えているか
  ・ 職場環境を害しているか


④ 再発防止策について
▶ 議員が加害者の場合、有効な再発防止策をどのように講ずるか。
氏名公表、問責・辞職勧告決議等
▶ 再発防止策の最終決定者(責任者)は議長か、首長か。

⑤ 不快行為への対処をおろそかにしない→防止のための実効策
・ もし不快な言動がなされた場合は、そのまま放置し、問題が大きくなることを避けるため、話し合いによりお互いの主張を理解し、関係を改善する場を設けることが適当である。→ 風通しを良くする努力

【ハラスメント防止のため、いかにして問題意識を共有化するか】

◯「そんなつもりではかった」という意識をいかに変えていくか。
→ハラスメント行為の原因があればその問題を解決することが必要。
周りの配慮と努力が重要。見過ごさない!風通し良い環境

◯議会内や職員に対して、ハラスメント行為として「やってはいけないこと」について話し合い、申し合わせを作る。基準を共有する。
→ 行為者だけの責任にしない。みんなの問題として解決


◯その前提として「共生する」ことの重要性を再確認することが必要。
「君の考えには反対だが、意見は保障する」ヴォルテール 民主主義の基本となる考え方


◯さらに相手を尊敬する(リスペクト)という姿勢が重要。
※ リスペクトトレーニング(「ピースマインド」ホームページ)
•映画界において質の高い作品を手掛けるにあたり、スタッフやキャストが安心して働くことができ、作品づくりに集中できることが大切であるという考えのもと、作品の制作に携わるすべての人が「リスペクト(尊敬)」を共通認識として持つことを目的としている。
•同じ職場で一緒に働くメンバーが相互に「リスペクト(尊敬)」のフィルターを通して接する「思考の筋力」を鍛えることで、心理的安全性が高まり、誰もが安心して能力を発揮できる職場環境づくりに貢献する。
•誰かが決めたルールを覚えて守るのではなく、役職など立場を問わず参加者全員がフラットにディスカッションするワークを通じて、各職場において全てのメンバーが相互に主体性を持って工夫をしながら、継続的によりよい職場環境をつくり上げていく必要がある、という理解に繋げる。..


◎ ハラスメントを防止(禁止)するという方向は同じでも、議会(議員)と企業の職場環境は異なる。
議員、議会の特性に応じたハラスメント対策をいかに構築できるか、が今後の重要な課題である。

(2) 第三者機関を設けている例

◎狛江市「ハラスメント防止条例」「ハラスメントの防止等に関する指針」
※ 狛江市では令和2年に「人権を尊重しみんなが生きやすい狛江をつくる基本条例」を制定し、「何人もハラスメントを行ってはならない」としている。

◯狛江市では、市長、議員を含めた全ての狛江市職員を保護の対象とする「狛江市職員のハラスメントの防止等に関する条例」が議員提出で制定され、平成30年11月1日から施行。同条例5条に基づき、「ハラスメントの防止等に関する指針」を作成。
◯同指針では、市長及び議員の責務をのように規定している。
「市長等及び議員は、自らがハラスメントを行わないことはもとより、ハラスメントの事実があると疑われたときは、自ら誠実な態度を持って疑惑の解明に当たるとともに、その責任を明確にするよう努めなければなりません。
良好な勤務環境を確保するためハラスメントの防止及び排除並びに被害者への配慮に努めなければなりません。」→全職員の勤務環境保持
◯相談窓口を庁内(総務課)、庁外(「21世紀職業財団」)に設置

◯ハラスメントに関する苦情を調査審議し、公平な処理に当たるため、「狛江市
ハラスメント苦情処理委員会」を設置している。

◯ハラスメント苦情処理委員会の所掌事項。
・ハラスメントに係る事実関係の調査に関すること。
・ ハラスメントに係る対応に関すること。等
▶委員会の構成
・委員会は、有識者3名と市職員2名から構成される。
・相談・苦情に係る当事者が市長等又は議員である場合は、市職員に代えて臨時に2名の委員を別に置くことができる。
▶ 委員会の権限
・行為者が市長等又は議員である場合は、原則として委員会で処理する。
・ 委員会では、調査審議に当たり、必要に応じて、市長等、議員、職員その他苦情・相談に関係する者に対して、聴取することができる。
・委員会は、調査審議を終えたときは、その内容をまとめ、市長に報告する。

◯条例、規則及び本指針に反して職員がハラスメントを行った場合は、その態様によって、懲戒処分等の対象となる。なお、行為者が市長等又は議員であった場合は、市長の責任で職名、氏名及びハラスメントの内容等を公表することができる。

【寄附禁止のおさらい】(公選法 199条の2第1項)→公民権停止

(ア)候補者等本人の行う寄附の禁止
◯候補者等(候補者、候補者となろうとする者及び公職にある者)は、当該選挙区内にある者に対し、どのような理由かを問わず、寄附をしてはならない。
◯寄附の禁止は、選挙運動期間であるか否かを問わず、いつでも禁止される。

(イ) 「寄附」とは?
◯「寄附」とは、お金だけでなく、物品、その他財産上の利益になるものを与えたり、与える約束をしたりすること。
◯売買代金や、会費・党費など決められた額を支払う義務のあるもののように「債務の履行」として支払うものは寄附にはあたらない。ただし、債務の履行の形をとっていても、例えば、経済的な価値が極めて少ない物に対し法外な支払をする場合は、寄附と見られることもある。

Q 政治家は、正月に自宅に来た選挙区内にある者に対し、酒食を提供することができるか?
A できない。
Q 政治家が会費制の結婚式に自ら出席し、定められた「会費」を支払うことは差し支えないか。
A 定められた「会費」である限り、禁止されない。→対価性が必要
Q政治家自身が喪主を務める葬儀に際して、選挙区内にあるお寺の僧にお布施を渡すことは、禁止された寄附にあたるか?
A 読などに対する報酬として行うものであれば、債務の履行として認められる限り、禁止された寄附にはあたらない。
Q政治家が選挙区内にある者に対して、もらった香典に対するお返し(香典返し)を贈ることはできるか?
A その地域において、香典返しが社会習慣として定着し、一種の義務的な性格を持つものである場合、もらった香典に対する返戻の程度(香典の半額程度)の香典返しであれば寄附にはあたらない。

(ウ)「選挙区内にある者」
◯旅行などで一時的にその選挙区内に滞在している者も含まれる。
◯選挙区内に住所を有している者に、選挙区外で寄附することも違法。
◯子供も対象になる。
◯会社・団体なども、事務所や施設が当該選挙区内にあれば、「当該選挙区内にある者」に該当する。
◯選挙区が含まれる自治体に対する寄附も例外ではない。
Q 政治家は、子どもにお年玉をあげてもいいか?
A 親族(六親等内の血族、配偶者及び三親等内の姻族)である子どもに対してあげるのであれば可能。

Q 政治家の選挙区外に住所を有する友人に不幸があり、たまたま当該政治家の選挙内にある葬祭場で葬儀が行われる場合、供花や花輪を出すことは差し支えないか?
A 「選挙区内にある者」とは当該選挙区内に住所を有していなくても、寄附を受ける際に当該選挙区内に滞在する者も含まれる。
Q 市長や市議会議員がその報酬の一部を返上することはできるか?
A 禁止された寄附にあたる。そのため、報酬の返上又は減額については、報酬条例の改正による減額措置により行うことになる。

(エ)「いかなる名義をもってするを問わず」
◯純粋な慈善目的であっても禁止される。赤い羽根募金も、被災者支援の募金も、町内会のお祭りの寄附も、一切の寄附が禁止される。
Q 政治家が自治会で集める被災地支援の募金に応じることはできるか?
A たとえ被災地支援という名目であっても、債務の履行ではない募金を政治家が行うと罰則の対象になる。
Q 地の高等学校野球部が全国大会に出場することになり、市議会議員有志で徼励金を出し合い、「市議会」名義で渡すことはできるか?
A 名義上「市議会」となっていても実質的に個々の議員からの寄附である場合は禁止され
る。


(オ) 違法だが処罰しない特殊な類型→合法ではないことに注意
① 候補者等が結婚披露宴に自ら出席し、その場においてする祝儀の供与
② 候補者等が葬式に自ら出席し、その場においてする香典の供与
③ 候補者等が葬式の日までの間に自ら問しその場においてする香典の供与
※ 「自ら出席し」なので、親族の代理出席の場合は処罰の対象となる。
Q 密葬の日の後、候補者等が用問して、香典を出すことはできますか。
A 密葬の日の後、候補者等が弔問して遺族(親族でない選挙区内の者)に対して香典を出すことは、罰則をもって禁止されています。

(力) あいさつ状の規制(罰則はなし)
選挙区内にある者に対して年賀状、暑中見舞状その他これらに類するあいさつ状(電報を含む)を出してはならない(公選法147条の2)。
ただし、答礼として自筆(署名だけではダメ)によりあいさつ状を出すことは、禁止されていない。
•弔電、祝電等は年賀状等に類するものではないので、本条の規制を受けないものと解される。
Q 「喪中につき年賀のあいさつを失礼します」なる欠礼のハガキを選挙区内にある者に対して出すことはできますか?
A 年賀状に類するあいさつ状と認められるので、できません。

VI. 最近における地方自治法改正から

兼業禁止

◎ 地方自治法の政正
地方自治法の一部を改正する法律が、和4年12月16日に公布され、議会の議員に係る請負に関する規制の明確化及び緩和がなされることとなった。(令和5年3月1日から施行)
改正内容は、①議会の議員に係る請負に関する規制の明確化及び緩和に関する事項、と②災害等の場合の開会の日の変更に関する規定の備に関する事項、の二点である。

◯兼業禁止に関する問題意識と改正内容はのとおりである。
課題1
「請負」の定義が条文上不明確であり、失職をおそれ、立候補を躊躇する原因となっているとの指摘
・ 過去の判例を参考として、規制の対象となる「請負」の定義を明確化する。
「請負」の定義を「業として行う工事の完成若しくは作業その他の役務の給付又は物件の納入その他の取引で当該普通地方公共団体が対価の支払をすべきものをいう。」とするものとする。
課題2
個人による請負は全面的に禁止されており、議員のなり手不足の原因となっているとの指摘
・ 地方公共団体の議会の議員個人による当該地方公共団体に対する請負の規制の対象から除外される、各会計年度において支払を受ける当該請負の対価の総額の上限額は、300万円とすることとされた。
※ 「300万円」の根拠個人企業の年間売上高の全国平均の2割程度(300万円)が適当とされた。
◎ 総務省は、「条例等の定めるところにより、地方公共団体に対し請負をする者である議員が、当該請負の対価として各会計年度に支払を受けた金銭の総額や請負の概要など一定の事項を議長に報告し、当該報告の内容を議長が公表することとするなど透明性を確保するための取組を併せて行うことが適当」としてい
る。

議会における手続のオンライン化

◎ 地方制度調査会答申
「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会の実現に向けた対応方策に関する答申」(令和4年12月28日)
◯ 議会に関連する手続のオンライン化
「議会が関わる法令上の手続には、書面等により行うことが求められているものがあるが、「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」により、議会と行政機関等との間で行われるものについては、原則として、既に、オンラインにより行うことが可能とされている。他方、住民の議会に対する請願書の提出や、議会から国会に対する意見書の提出など、住民と議会、議会と国会等の間で行われる法上の手続は、同法の適用対象外とされている。多様な住民が議会に関わる機会を広げる観点や、議会運営の合理化を図る観点から、これらの手続についても、一括して、オンラインにより行うことを可能とするべきである。」


◎ 地方自治法改正(令和5年5月8日公布、令和6年4月1日から施行)
※ 以下、改正内容については全国都道府県議会議長会に設置された「都道府県議会デジタル化専門委員会」の報告書(和5年4月21日)から引用

◯法令等で「~書」、「文書」、「書類」等によると規定されている手続は、書面等により行われなければならない。

◯しかし、情報通技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成14年法律第151号。以下「デジタル手続法」という。)により、法令の規定に基づく行政機関への申請や行政機関が行う処分通知等はオンラインにより行うことが可能とされている。

◯一方、地方議会は、デジタル手続法に規定する「行政機関」から除かれている。そのため、地方議会に対する請願書の提出(同法第124条)や、地方議会から国会に対する意見書の提出(同法第99条)などはオンラインでは行えない(下図、表)。

◯今回の改正で、地方議会に対する住民からの請願書の提出や国会に対する地方議会からの意見書の提出など地方議会に係る手続について、一括してオンライン化を可能となった。
▶紙の書類を単純に電子化させるだけでは、議員等の利用者の手間や労力にのみに着目することを通じて、デジタル化によってかえって面倒になったという誤解を生じさせることにもなりかねない。
▶議会に係る手続等のデジタル化は、事務の効率化や能率化のためだけに行われるものではない。普通地方公共団体の重要な意思決定を担う議会が、住民からの負託に、より一層こたえていくために行われるべきものである。新しい技術の発展にも対応しつつ、今後もデジタル化を進めることを通じて、住民から信頼される開かれた議会を構築していくことが求められている。

3.議会・議員の責務を明確にする規定の創設

◎ 地方制度調査会答申
「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会の実現に向けた対応方策に関する答申」(令和4年12月28日)
・ 議会の位置付け等の明確化
議会の役割・責任、議員の職務等について、その重要性が改めて認識されるよう、全ての議会や議員に共通する一般的な事項を地方自治法に規定することも考えられる。
具体的には、地方自治法の議会の設置根拠の規定に、議事機関として住民が選挙した議員をもって組織されるという地方公共団体における議会の位置付けを追記すること、地方公共団体の所定の重要な意思決定に関する事件を議決する等の議会の役割・責任を明確に規定すること、議員は、議会の権限の適切な行使に資するため、住民の負託を受け、誠実に職務を行わなければならないことを規定することが考えられる。
この際、特に、議員に関する規定は、職務を行う上での心構えを示すものであり、新たな権限や義務を定めるものではなく、本来の議員の職務以外の不適切な行為を正当化し、助長するようなことにならないよう、十分留意すべきである。


◎ 地方自治法の改正(令和5年5月8日公布、同日施行)
第89条 普通地方公共団体に、その議事機関として、当該普通地方公共団体の住民が選挙した議員をもつて組織される議会を置く。
②普通地方公共団体の議会は、この法律の定めるところにより当該普通地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、並びにこの法律に定める検査及び調査その他の権限を行使する。
③ 前項に規定する議会の権限の適切な行使に資するため、普通地方公共団体の議会の議員は、住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならない。


<総務省の解説>(「地方自治」908号)
本条は、答申において「議会の役割や責任、議員の職務等の重要性が改めて認識されるよう、全ての議会や議員に共通する一般的な事項を地方自治法に規定することも考えられる」とされたことを踏まえ、「普通地方公共団体に議会を置く」という改正前のシンプルな規定を改め、議会の役割及び議員の職務等を地方自治法上明確に規定したものである。


◯ 第一項は、議会の位置付けを規定するものである。憲法第93条第1項において、地方公共団体に議事機関として議会を設置するとされていることを踏まえ、地方自治法においてもその旨を明確に規定している。なお、ここで「議事機関」としているのは、憲法の規定と同様としたものであるほか、議決権が議会の権限中最も基本的・本質的なものとされ、「議事機関」とは一般的に「議決機関」であると解されていることを踏まえたものであ

◯第二墳は、議会の権限を確認的・総則的に規定するものである。
議会は地方公共団体の意思を決定する機関であるものの、進の意思決定機関ではない。第 96 条に規定された議決事項以外の意思決定は長等の執行機関が行っている。これを踏まえ、議会が行う団体意思の決定は、条例・予算等の重要な事項について議決を通じて行われるものであることを明確化する観点から「この法律の定めるととろにより当該普通地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し」と規定している。また、「議決」「検査」「調査」以外にも、議会には「選挙「同意」「報告の受理」等の権限があるほか、地方自治法以外の法律や政令、条例において定められているものがあるが、これらの権限については「その他の権限」として規定されている。

◯第三項は、議員の職務を規定するものである。議員の役割は、あくまで議会における議決等を通じて休民の意思を適切に同体の運営に反映することである。このため、「前項に規定する議会の権限の適切な行使に資するため」として、議員が行う職務は、第一一項に規定する議会の権限の適切な行使に資するために行われるものであることを明確にしている。その上で、議会は、独任制の長と異なり、地域を代表する立場にある各議員がそれぞれの立場で住民の意見を丁寧に汲み取って議論を交わすことで、多様な利害の調整や意見集約を行う役割を有しており、議員が住民の意見を適切に反映した議論を行うことが、議会としての適切な意思決定に繋がるものであることから、「住民の負託を受け」「誠実にその職務を行わなければならない」と規定している。なお、第三項は、あくまで議員が職務を行うに当たっての心構えを規定したものであり、議員の新たな義務や権限を規定したものではない。
▶ 立法機関としての議会の役割を表していない。
▶議員職を職業として明確にしていない。→就労証明の問題
▶ 普段における議員活動の重要性を示していない。

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