役所を動かす質問のしかた
備忘録
◉地元の県議会議員や市町村議会議員の印象アンケート⇒①何をしているかわからない56.1%、②いてもいなくても同じだ34.9%
◉議員個人が役所に住民の意見を届けたとしても、よほど大きな社会問題にならない限り役所は動かない。
◉議員は議案を提案できる。地方自治法112条。
◉一般質問は住民に向けた課題提起である。
◉一般質問は執行部の考えに寄り添うのではなく、あくまで住民に近い立場として行うべき。
◉執行部の職員からみれば、普通の政治活動に熱心でない議員の一般質問は、その前提になる事実も曖昧で、思いつきで質問をしているのように感じてしまう。
◉執行部の職員は、担当の仕事をしているプロだという認識を持つべき。
◉議員の多数派が政策実現を迫れば、執行部は多数派の意見を無視する事はできなくなる。
◉現代は執行部だけでなく、議員にも説明責任が求められるようになってきた。そのためにも議員は自治体の課題を住民の前に晒し、結論に至るまでの過程を見せる事が必要。⇒ 政治の見える化
◉一回の質問で政策を実現するような答弁は返ってこないと認識すべき。
◉同じテーマの質問を繰り返して、同調する議員を増やす。
◉一般質問には3種類ある。①政策提案型、②課題・責任追及型(政治的イニシアチブを獲得するのが目的)、③自己主張型(これは受け入れられる可能性が低い)
◉曖昧な答弁をさせないように再質問を行う。
◉第三セクターは責任の所在が曖昧となる。
◉議会(議員)は監査機能を発揮させるために、財政や契約、財産管理について十分な千門知識を持っている必要がある。
◉課題・責任追及型の一般質問は事実の存在が重要だが、追求するための専門知識が必要。
◉条例には立法事実がある。立法事実とは法律や条例の目的や手段を根拠付ける社会的な事実を指します。データや市民の意識などが含まれ、立法法務の重要なポイントです。審議するには事実関係(条例の場合は立法事実)を具体的に知る必要がある。
◉議案に対する疑問点を聞くのが質疑であり、質疑には意見を述べる事ができない。本会議や委員会では質疑しか行えず、議案に対しての首長の考えを問いただす行為はできない。
◉質の高い一般質問とは、執行部の政策や施策を的確に評価して、役所の政策形成に影響を及ぼす質問の事。
一般質問の内容としてふさわしいか
では、何でも質問すればいいのでしょうか。議長の発言許可は、実際はかなり緩やかに行われているのが一般的だと思いますが、説明員である執行部の立場で聞いていると、一般質問として、あまりふさわしくないと感じる質問もあります。例えば、過去のデータの推移や、個別の事務の説明を求める質問です。これらは事前に資料要求すれば示されるため、本会議の議場で問うのは時間の無駄と言わざるを得ません。また、再質問等の中で細かい数字を聞かれることもありますが、これもあらかじめ質問者が調べて、そのデータを提示しながら質問をすればいいだけのことです。また、地域課題に関する要望を一般質問で問う場面もよく見受けられます。本会議という公の場で公式の言質を取りたいという意図も理解できるため、一概に否定すべきではないとは思います。しかし、本会議の議場で首長と議員が共有する公の時間であることを考えたとき、一般質問の内容としてふさわしいのかという視点もぜひ持ちたいものです。
◉地方自治法を解釈すれば、一般質問の答弁者は議場に出席している者で、最も的確に説明ができる者であるべき。ただし答弁者の指定は出来ない。
◉答弁作成の流れ⇒係長が作成した答弁案を課長が審査・修正し、部局長に上げて審査と修正が繰り返されます。政策提案型の質問に対して、前向きな答弁をする場合には財源が必要になるため、世の発強も受ける必要があります。役所は基本的に縦割りの組織ですから、答弁案内容に関係する部署にはすべて事前に協議調整をして、了解してもらう必要があります。このような謙査・修正・協議調整を繰り返すため、とりまとめ担当課に提出する案が出来上がるのが深夜になることもよくあります。
◉答弁書作成において当局が留意している事。①過去の経緯を踏まえているか。②簡素に答えているか。③問いに答えているか。
◉執行部の一般質問に対して思う事
◯年に4回の時間の無駄(極端。そう思う人もいる)
◯乗り越えるもの
◯執行部のやることにできるだけ口出しさせてくない。
◯議員はあれこれ質問してくるが、自分たちが出した提案には責任はとらないじゃないか。←提案する議員が責任をとってくれないだろうか。
◯どうでもいい事を質問して職員の負荷を負わせるような議員に対して、職員は本気にならない。手伝おう、提案を受け入れようという感情にならない。
◯職員は議員を無責任と思う傾向がある。
◯職員は提案した政策の実現に協働して取り組む議員を望んでいる。
◉提案者として出来る事はやる!という姿勢が職員に伝われれば、執行部の対応は前向きになる可能性がある。
◉役所が機動的に動けない理由は、次のような手順を踏むから。①問題が事実か確認する、②事実であり提案された内容が汎用的な施策であるか調査する、③提案された内容が汎用的であっても大きな声で反対する一部の人が存在すれば躊躇する。
◉よくある一般質問の流れ。①事実確認の為の質問→②課題の指摘→③解決策の提案。
◉転出・転入アンケートの実施はいいかも。
◉ある問題があったとして、その問題の事実を端的に示すのではなく、その問題をある住民の物語として伝える事で、聞き手の感情を動かす事ができるかもしれない。
◉予算編成が10月から11月なので、来年度の予算を変えるには9月の一般質問が最終期限となる。
◉地方自治法は、第2条第14項に「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と定めている
◉執行部の政策立案プロセス=①現状認識→②課題認識→③仮説設定→④検証→⑤提案。この順序で執行部が動いているのであれば、その手順にに沿って一般質問を行えば説得力が増すような気がする。
◉調査権限は国会議員にもありませんが、「政府は可能な限り協力すべき」(平成20年4月4日内閣総理大臣答弁)とされています。地方議員に対しても同様であると考えられ、執行部は個人情報や企業の取引情報等でない限り、その提供を拒む理由もないはずです。
◉参考になる考え方として、「AIDMA」というマ1ケティング理論があります。これは、Attention (注意)→ Interest (関心)→ Desire (欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の頭文字を取ったもので、消費者の購買決定にいたる心理を表しています。簡単にいうと、消費者にその商品に関する「注意」を引き、知ってもらい、「関心」を持ち、良い・欲しいという「欲求」の段階を経て、「記憶」され、後日買うという「行動」に移す、というプロセスです。では、執行部に議員提案を採用して実現する「行動」をとらせるためにはどうすればよいかです。まず「注意」です。政策提案では「現状認識」です。現状を認知させ、注意を引いて、その後の行動を呼び起こすため、まずは現状・事実をより正確に知らせましょう。
次に「関心」です。政策提案では、現状に対して行政が解決すべき課題であると感じることが「関心」ですから、「課題認識」を持たせることが重要になります。
そして「欲求」です。「仮説」を提示し「検証」することで「共感」を深め解決したいという「欲求」を呼び起こします。さらに「記憶」です。一度ではなく粘り強くアピールすることが大切です。
その上で「検討します」という「行動」が生まれます。要は、執行部の事情にも配慮しながら、共に課題解決のために政策を作り上げる姿勢が必要ということです。一般質問での提案は、議員個人として行うものにすぎない以上、これを採用するかどうかは、執行部の自由裁量です。だからこそ、一議員が市役所を動かすためには、執行部を「その気」にさせる政策提案が必要なのです。