農業委員会との懇談に向けての事前学習
農業委員会の概要
○ 農業委員会は、その主たる使命である『農地等の利用の最適化の推進(担い手への農地の集積・集約化、遊休農地の発生防止・解消、新規参入の促進)』を中心に、農地法に基づく農地の権利移動の許可、農地転用案件への意見具申など、農地に関する事務を執行する行政委員会として、市町村に設置。
【必須事務】
○ 農地法等によりその権限に属させられた事項(農地の権利移動の許可、農地転用案件への意見具申等)
○ 農地等の利用の最適化の推進(担い手への農地の集積・集約化、遊休農地の発生防止・解消、新規参入の促進)
【任意事務】
○ 農業一般に関する調査及び情報提供
○ 法人化その他農業経営の合理化
【農業経営の法人化】
農業経営を法人化することには次のようなメリットがあります。
・税制上の優遇措置や補助金制度の利用が容易になる
・社会的な信用度や知名度が高まりやすい
・人材の確保や育成につながる
・事業承継先の幅が広がる
・経営力が高まり事業運営の効率化が期待できる
・後継者問題の解消が期待できる
農業を法人化するには、主に以下の4つの要件を満たす必要があります。
・株式会社(公開企業でないもの)、農事組合法人、合名会社、合資会社、合同会社のいずれかであること
・主たる事業が農業であること
・総議決権の過半数が農業関係者で構成されること
・役員の過半数が法人の行う農業に常時従事する構成員であること
農業を法人化する年収の目安は、一般的に500~600万円を超えたタイミングとされています。この金額を超えると法人化による税制上のメリットが大きくなり、法人税の方が有利になる場合が多くなります。
農業委員会の設置基準
○原則として市町村に1つ設置(必置)
<例外>
○農地のない市町村には、農業委員会を置かない。
○農地面積が著しく小さい(都府県200ha以下、北海道800ha以下)市町村には、置かないことができる(設置するか否かは市町村が選択)。
○市町村面積が著しく大きい(24,000ha超)又は農地面積が著しく大きい(7,000ha超)市町村には、区域を2以上に分けて、その各区域に農業委員会を置くことができる。
<設置の意義>
○農地利用最適化の推進機関として位置付け。
○農地制度に関する業務執行の全国的な統一性、客観性の確保。
○市町村長から独立した行政委員会として、公平、中立に事務を実施。
農業委員会の設置状況
〇全国1,741市区町村のうち、1,693市区町村で1,696の農業委員会を設置。
農業委員会の運営
○農業委員会は、市町村長が議会の同意を得て任命した「農業委員」で組織され、農業委員は、合議体としての意思決定(農地の権利移動の許可・不許可の決定など)を担当。
○農業委員会は、「農地利用最適化推進委員(以下「推進委員」という。)」を委嘱し、推進委員は、担当区域における農地利用最適化の推進を担当。
農業委員 | 農地利用最適化推進委員 | |
主な役割 | 農地利用の最適化に重点を置いて、現場活動を行う | |
主な活動 | 農地の貸し借りや売買、農地転用申請などの審議、農業委員会の活動方針の決定 | 農地利用の最適化に関する業務、担い手への農地の集積・集約化、遊休農地の発生防止・解消、新規参入の促進 |
管内の農地全体に責任を負い、法令の審議や議決を行う | 有る | 無い |
農業委員と推進委員
農業委員
○農業に関する識見を有し、農業委員会の所掌事項に関し職務を適切に行うことができる者のうちから、市町村長が議会の同意を得て任命。
○任命要件
① 原則として、認定農業者等が農業委員の過半数を占めること
② 中立委員(農業委員会の所掌事項に利害関係を有しない者)が含まれること
③ 年齢、性別等に著しい偏りが生じないように配慮すること(青年・女性の積極的な登用に努めること)
○任期は3年。
○定数は次の区分に応じて、それぞれの上限(カッコ内は推進委員を委嘱しない場合)の範囲内で条例で定める。
① 農業者数が1,100人以下又は農地面積が1,300ha以下=14人(27人)
② ①及び③以外= 19人(37人)
③ 農業者数が6,000人超、かつ、農地面積が5,000ha超=24人(47人)
推進委員
○農地等の利用の最適化の推進に熱意と識見を有する者のうちから、農業委員会が委嘱。
○任期は農業委員の任期満了の日まで。
○定数は農業委員会の区域内の農地面積の100haに1人の割合で、条例で定める。ただし、農業委員会の区域内の地理的条件等が農地等の利用の最適化の推進が困難なものと判断される場合は、市町村が必要と認める数を加えることが可能。
注:農業委員会の必置義務が課されていない市町村、遊休農地率1%以下かつ担い手への農地集積率70%以上の市町村は、推進委員を委嘱しないことが可能。
注1:農業委員と推進委員は、いずれも特別職の地方公務員(非常勤)。
農業委員と推進委員の連携
「農業委員会に関する懇談会」におけるこれまでの主な指摘事項
1.農業委員会の意義・役割
①改革の必要性
○将来に向かっての改革なくして現在のままでの農業委員会の存続は難しい。
②今日的意義・役割
○農業委員会の設置は現在でも意義があると考えるが、実際の運営では農地保全の役割を十分に果たしていない点があり、転用への対応も甘いとの批判がある。
○農業委員会は農地管理の方向付けと管理を行う自主的な組織として今日的な性格を有してる。
○農業委員会は、農業者の代表としての立場を保持すべき。
○農業委員会の設置の必要性は都市近郊から山村まで異なっているのではないか。
2.活動のあり方
①今後の活動の方向
【農地法等に係る活動を重視・重点化すべきとの考え方】
○地産地消、体験農園などに力を入れるのではなく、農地法の厳正・的確な運用の本来業務に重点化すべき。
○農協、土地改良区、普及センター等の他の団体も含めて業務・役割のあり方を整理して、農地業務と本来の役割を担うべき。
○優良農地確保の活動は全国の農業委員が必須の業務として課すことが考えられる。
【農地法】
農地法は、農地を保護して食料の安定供給を確保することを目的として制定された法律です。農地法の主な内容は以下のとおりです。
◯農地を農地以外の用途に転用する場合は、原則として農林水産大臣または都道府県知事の許可が必要
◯農地を売買・賃借する場合は、農業委員会の許可が必要
◯農地を所有する者は、農地の適正かつ効率的な利用を確保する責務を負う
◯耕作権(賃借権)を保護するため、定期賃貸借の法的更新や小作地の返還に関する規定がある
◯農地の利用関係の紛争を解決するため、農業委員会または知事が和解の仲介を行う
農地法では、農地と採草放牧地が規制の対象となります。農地とは作物の栽培に利用される田んぼや畑などの農業用土地、採草放牧地とは耕作や養畜目的の採草や家畜の放牧に利用される農地以外の土地です。
農地法に基づく許可申請には自治体ごとに締切日が設けられており、申請後すぐに許可が下りるわけではありません。許可を受けずに手続きを行うと、工事に停止や原状への回復の命令が出される場合や、罰則の適用を受ける場合もあります。
【地域農業の課題に係る活動を行っていくべきとの考え方】
○地域によって農業が抱える問題は異なるので、その問題を話し合える組織とすべきであり、農業委員会ごとの重点施策はいろいろあってよい。
○農業委員会が地域農政の政策立案から実行まで取り組むべきで、地域農政を考える場合にも、転作問題にも農業委員会は積極的にかかわっていくべき。
○農業委員会は、流通、消費、教育問題などを含めて広い視野でバランスのとれた活動のリーダーシップを取るべき。
②活動の方法
○個性ある地域農政を担う点を重視して政策立案から実践までの活動主体となるべき。
○これからの農業委員会はボトムアップで主体的な活動が必要。
○農業委員会の活動を現場で支える地区の協力員(改良組合長への委嘱等)との実態的な連携が重要。
○事務局職員の企画、立案を踏まえて農業委員が現場で活動する形態が一番よい。
③他団体の活動との関係
○今後は、関係団体毎の活動を改めて、役割分担を話し合いではっきりさせて、地域のルールづくり、緊密な連携のための組織づくりが必要である。
④建議・答申活動
○建議に力を入れないと農業を守る役割が薄れるので強力に取り組むべき。
○農地の問題、緑地化、環境問題など地域の問題を建議し、地域の農業振興の方向づけに貢献する必要がある。
⑤地域参加、都市農村交流
◯体験農園の企画、学童農園、食農教育、都市農村交流に積極的に関わっていくべき。
⑥情報の受発信
○農業委員会の活動について広く消費者に理解してもらう必要。
○的確な情報が受信、取り出せる仕組みづくりが効果的。
⑦活動の第三者評価
○農業委員会の活動を第三者委員会により評価するなど、地域に対する説明責任を果たす機会の確保が重要。
3.組織のあり方
①必置規制
○農地面積が少なく、地域的に農業委員会の必要性がないところでは市町村による業務肩代わりの方向付けもよい。
○必置基準の引き上げはやむを得ないが、農業委員会の設置は、市町村の置かれた状況と市町村の行政側の考え方もあるので慎重な考え方が必要。
②市町村合併への対応
○合併後は、農業委員会の下部組織の活動が重要。広域市町村の委員定数の場合には、その行政区域面積も定数の判断要素に加える必要がある。
○合併後の課題としては、活動が広域化するので協力委員の設置と職務代理者の複数制が必要であり、さらに複数農業委員会を設置する場合の基準のあり方も検討が必要。
③委員定数
○委員定数は市町村の置かれた状況やその意向を踏まえて弾力化を検討すべき。
○小規模農業委員会では問題がなければ総委員数で5~10名でもよい。
④委員構成等
○高齢化した農業委員では地域をまとめきれない場合もあり、学識経験者を参画させるべき。地域農業を客観的に俯瞰できる委員のウエートを高めるべき。
○農業委員会には、消費者、学校の先生、農業を志す学生などのオブザーバーを入れて幅広く意見を聞くことが必要。
○選任委員では認定農業者、女性農業者、土地改良区の理事等が構造政策上大事である。できれば土地改良区は別枠とすべき。
○任命制の導入、地域外の選任委員、専門家の積極的活用を行うべき。
○農業従事者数の6割を担う女性の積極的登用が農業委員会の活性化上、重要。
⑤委員の選出方法
○公選委員と選任委員では意識に差があり、農業者による組織としての意識を持ち続けるためにも公選制が必要。
○法律制定当時と農業委員会を巡る情勢は大きく変化しており、公選制を維持する必要性は低下している。
○選挙実施率が1割未満であることが公選制と言えるのかどうか、また、選任委員数の減少などは根本的な問題。
○選出方法は意欲のある者が選ばれるような方法の検討が必要。
【公選制が廃止】
平成27年9月4日、「農業協同組合法等の一部を改正する等の法律」の公布に伴い「農業委員会等に関する法律」が改正されました。これにより、農業委員の公選制は廃止となり
4.財政基盤のあり方
○国の食料政策に直接結びつく農業政策は、地方分権の動きの中での一般財源化による市町村の自主的な対応とは異なる面があり、交付金は、特に財政が豊かでない市町村の大切な財源。
農業委員会についての資料(農林水産省)
農業委員会による農地利用の最適化活動の優良事例
二人一組の地区担当で利用調整(北海道芦別市農業委員会)
体制
・農業委員:16名
地区の特徴・状況、課題
・地区の全体が中山間地域で、条件不利地の集積と遊休農地発生の抑制が課題
令和4年度最適化活動の目標と実績
・農地集積率:93.6%(目標)→93.8%(実績)
・遊休農地(緑区分)の解消面積:0ha(目標)→0ha(実績)
取組の特色・内容
【担い手への農地集積】
➢ 中山間直接支払や多面的機能支払等既存の制度を活用し、地区において「守るべき農地」を維持するよう担当部局と連携。
➢ 農地の権利移動に際して、地区の状況に精通した担当委員2名を配置し、出し手、受け手双方の調整に当っている。
➢ 「集積・集約化が困難な農地」については、今後、地域計画の協議の場で「保全等を進める区域」として条件不利地(農地)への計画的な植林等の保全事業を行う区域とすべきかを農家の意向等を踏まえ必要に応じて検討する。また地区の委員が定期的に実施する利用状況調査の外に随時農地パトロールを行い、遊休農地の発生を抑制している。
【多面的機能支払交付金】
「多面的機能支払交付金」とは、農業者と地域住民が農地、水路、農道などの地域資源を共同活動で保全管理している活動組織に交付金を交付する制度です。
取組の効果
【担い手への農地集積】
➢ 地区内の農地流動化に関する情報が地区担当委員、事務局の間で共有され、出し手と受け手の利用調整に有効活用されている。
➢ 目標地図素案を作成する上で必要な各地区の農家の意向把握作業も担当委員2名を定め地区内の調整等を含め行
い、農地の集積・集約 促進している。化を促進していく。
【遊休農地の発生防止】
随時農地パトロールを実施しているため農地の遊休化を防止している(各委員が個別に地区内を巡回)
農業委員によるマッチングの取組(北海道新篠津村農業委員会)
体制
・農業委員:14名
地区の特徴・状況、課題
・村全域が農業振興地域、うち66%が農振農用地
令和4年度最適化活動の目標と実績
・農地集積率:99.57%(実績)→99.61%(目標)
・遊休農地(緑区分)の解消面積:0ha→0ha
・新規参入者への貸付け等同意面積:0ha→0ha
取組の特色・内容
【担い手への農地集積】
➢ 農業委員は、担当地区の集落の話合いや自治会に随時出席し、地域への顔つなぎや地域の農業経営者の状況(規模拡大・縮小意向等)を日頃よ把握
➢ 村内の農業経営者は、農業専業の認定農業者がほとんどで拡大意向も強く、離農や規模縮小により空きの農地が出ると取り合いの状況
➢ 空きの農地が出た際、農業委員は、日頃の委員活動により収集した情報等を基に受け手を調整の上、出し手の農地と受け手をマッチング
取組の効果
【担い手への農地集積】
農業委員は、農地のマッチングに当たっては、空きの農地やその地域内の受け手農家の状況(立地や希望する拡大面積)を踏まえて実施
➢ 地域内の利害調整を丁寧に行い、紛争の未然防止に寄与している
➢ 排水等の条件が劣る農地も周辺の農地とセットで引き受けてもらうなど適切にあっせんが実施されており、集積・集約化が進んでいる
【新規参入の促進】
➢ 村内は稲作経営が中心で、水田は既存農家がフル活用しているため、新規参入者には、畑地での野菜作による参入及び経営の安定を促している
農地を守るセーフティネットの構築(岩手県滝沢市農業委員会)
体制
・農業委員: 9名/農地利用最適化推進委員:11名
地区の特徴・状況、課題
・特に水田農地において担い手が高齢化しており、機械の更新時期にやめる方も多い。
・10a規模の田が多く、近隣市町からの入り作もあり、経営農地が分散し作業効率が低い。
令和4年度最適化活動の目標と実績
・農地集積率:50.1%→51.2%
・遊休農地(緑区分)の解消面積:0.8ha→1.0ha
・新規参入者への貸付け等同意面積:6.8ha→7.9ha
取組の特色・内容
【担い手への農地集積】
地域での話し合いにおいて、現況地図を囲み地域の将来像を協議。地域の実情に応じて、「地域まるっと中間管理方式」を推進するなど市・農委・農地バンクが連携し、農地の集積・集約化を促進。
➢ 農地中間管理事業の実施にあたっては、地区の農業委員や推進委員が地区内の合意形成に主導的な役割を担っている。
【新規参入の促進】
➢ 積極的に県等主催の新・農業人フェアに農業委員や推進委員も参加し出展するとともに、相談対応や、若手・先輩農家との顔合わせ等を行っている。
➢ 新規参入者には、営農計画書の作成の支援、就農場所の確保や地元農業者との顔つなぎ等を行い、就農後は新規参入者を訪問し、営農状況の確認や相談を受ける等のアフターフォローを継続して行い、離農防止を図っている。
【委員の活動日数等】
➢ 最適化活動に該当する活動を事務局と委員の間で再確認を行なっている。また、委員からの要望を受け、事務局が活動記録簿をExcelで作成し、委員の入力や事務局の集計が簡単に出来るよう工夫している。
取組の効果
【担い手への農地集積】
令和4年度に地区の推進委員が中心となり、離農する農家の農地約18haを地元農家4人へ売渡成立させている。
➢ 農地中間管理事業を活用した農地集積(R3・4)にあたっては、「地域まるっと中間管理方式」により新たに受け皿となる一般社団法人が設立され、農地を守るセーフティネットが構築された。
➢ 研修会等の場で、上記の「地域まるっと中間管理方式」の取組を委員間で共有。これにより他の地域にも取組が波及している。
【新規参入の促進】
➢ 令和4年度は、個別に相談に応じた肉用羊を飼育する法人と肉用牛を飼育する法人が新規参入しており、地元でのサポートを受け順調な経営が行われている。
➢ 市内若手農業者の有志で、馬のたい肥を使ったスイカを生産し、市の伝統文化「チャグチャグ馬コ」と特産品の「スイカ」のPRに貢献する
など、新たな発想で地域農業の活性化が図られている。
【委員の活動日数等】
➢ 令和4年度における委員1人当たりの活動日数は月平均13.7日であり、県内でもトップクラスとなっている。
➢ 委員における活動記録の作成・提出、事務局における集計作業が効率化され、円滑な農業委員会活動に繋がっている。
農地利用最適化活動及び町補助事業の活用により農地集積・遊休農地解消等を実施(新潟県聖籠町農業委員会)
体制
・農業委員: 13名
地区の特徴・状況、課題
・農地面積1,330ha(田1,010ha、畑320ha)、平地農業地域
・作物は水稲、大豆のほか、砂丘地では、園芸(里芋、長芋、ごぼう)、果樹(さくらんぼ、ぶどう、
梨など)が盛んである。
・水田整備率(33.1%(県は65.2%)、新潟県内29位(R4.3現在新潟県調べ))が低く、水田の大区画
化が進んでおらず、コスト削減や無人トラクター等のスマート農業への取組が遅れている。
・水稲、果樹を中心に、近年離農者が増えているが、受け皿となる担い手不足も課題となっている。
令和4年度最適化活動の目標と実績
・農地集積率:71.3%→72.9%
・遊休農地(緑区分)の解消面積:0.09ha→0.78ha
・新規参入者への貸付け等同意面積:6.8ha→1.7ha
取組の特色・内容
【農地の集積】
➢ コスト削減や後継者の確保の観点から、地域の担い手と農業委員は、基盤整備の必要性を強く認識しており、農業委員が協議の場を設けるなどの取組を行うことで、地域で積極的に基盤整備事業の活用、担い手への集積・集約化に向けた話し合いが行われている。
➢ 農業委員会は、農地バンクとも連絡・調整し、基盤整備と合わせた農地中間管理事業の積極的な活用を進めている。
【遊休農地の解消】
➢ 町の遊休農地対策補助金(平成24年度から実施。令和4年度予算額1,680千円)を活用し、遊休農地を解消し、再生利用につなげる取組を事業担当課とともに実施している。
➢ 認定新規就農者を中心に農地の確保の意向について、農業委員が相談に乗るなどサポートをし、遊休農地の解消をした農地の活用に努めている。
【新規参入】
➢ 利用意向調査と時期を合わせて、保全管理をしている農地の所有者に対し、新規参入者等への貸付けの意向を調査している。
取組の効果
【農地の集積】
➢ 令和4年度は町内7地区で担い手と農業委員が基盤整備、農地中間管理機構の活用に向けた話し合いを実施。また、担い手に対して新規に85haの農地集積がなされた(うち農地中間管理事業の活用は25ha ) 。
➢ 基盤整備、農地中間管理機構の活用の話し合いにより、担い手への貸付における農地中間管理事業の活用が進んだ(農地中間管理事業借入面積676ha、耕地面積に対する借入割合49.3%(新潟県内1位)R5.3現在)。また、耕作者間での話し合いの結果、徐々に農地の集約も進みつつあり、耕作環境が改善されてきている。
【遊休農地の解消】
➢ 令和4年度は町の遊休対策補助金の活用により、1名の認定新規就農者(作物ぶどう)が農業委員の農地あっせんなどのサポートを受けながら、 0.78haを再生利用し、経営の規模拡大が進んだ。
【新規参入】
➢ 保全農地の所有者に対して貸出しの利用意向を調査した結果、対象者の3割程度から新規参入者等への貸付意向があることの回答を得た(令和4年度調査対象49人中17人、貸付意向があった面積1.7ha)。
農地バンクとの連携による農地集積の取組(岐阜県郡上市農業委員会・西和良地区)
体制
・農業委員: 19名/農地利用最適化推進委員:19名
地区の特徴・状況、課題
・郡上市は、県中心部に位置する中山間地域で、市域の9割を山林が占める
・地区の約4割が70歳以上の高齢農家であり、遊休農地の増加や集積が課題
令和4年度最適化活動の目標と実績
・農地集積率:28.6%→29.8%
・遊休農地(緑区分)の解消面積:0.6ha→0ha
・新規参入者への貸付け等同意面積:1.7ha→0.6ha
取組の特色・内容
【担い手への農地集積】
➢ 郡上市では、高齢化や相続による非農地化や不在地主の増加を防止するため、農地バンクとの連携や基盤整備事業と合わせた集積を推進している。
➢ 西和良地区内の洲河地区において、基盤整備事業の実施に向けた集積を進める機運が高まっていたことから、農業委員・推進委員、担い手、農地バンク、市による推進方針協議を実施。協議に際しては中山間直接支払の集落戦略も活用した。
➢ 中山間直接支払の地区代表でもあった最適化推進委員が地区内農地の耕作状況をまとめた資料を作成し、担い手の耕作状況を踏まえて事業対象区域以外にも集積範囲の拡大を図った。
➢ 地区内の農地所有者の中には、貸付に懸念を示す者もいたが、機構集積協力金の交付や将来の耕作が困難となった際の遊休農地化の防止等、集積メリットを粘り強く説明し同意を得た。
➢ 農業委員・推進委員が地権者へ往訪した際、機構集積協力金の留意事項も説明できるよう、バンク相談員や事務局による十分な事前説明や説明資料の充実等、バックアップを実施。
取組の効果
【担い手への農地集積】
➢ 当初は県営中山間総合整備事業の受益地で、集積率50%以上(1.4ha以上)の集積目標を設定していたが、農業委員・推進委員による地権者への説明を重ねた結果、賛同者が増加し、目標を大きく上回る約8.5haを担い手である1経営体へ集積(受益地内72%、地区内43.3%)することとが出来た。
➢ 機構集積協力金も交付されたため、基盤整備事業の地元負担金や獣害対策費として活用し、担い手が農業経営しやすい環境を整備する見込みとなっている。
➢ 本事業の実施を契機として、集積が滞っていた他の地区でも検討を進める動きが出てきた。
➢ 今回の取組で中山間直接支払の集落戦略が有効であることが実感できたため、これを活用しつつ引き続き集約に向けた取組を進めることとしている。
農福連携等の取組で農地バンクを活用し農地集積・遊休農地解消(和歌山県上富田町農業委員会)
体制
・農業委員: 8名/農地利用最適化推進委員:7名
地区の特徴・状況、課題
・和歌山県南西部に位置し、町の中央部には富田川が流れ、温暖な気候を活かして、水稲、
梅、ミカン、スモモなどの生産が盛んである。
・農業者の高齢化等により、農業の担い手不足の進行、農地の遊休化が課題となっている。
令和4年度最適化活動の目標と実績
・農地集積率:27.9%→29.2%
・遊休農地(緑区分)の解消面積:2ha→0.4ha
・新規参入者への貸付け等同意面積:2.0ha→1.4ha
取組の特色・内容
【担い手への農地集積・遊休農地の解消】
➢ 平成29年の新体制移行時に農業委員と推進委員の役割分担を明確化し、推進委員は最適化活動(農地集積、遊休農地対策、新規参入促進)に特化。※農地パトロールは両委員で実施
➢ 推進委員は農地バンクから業務委託を受けている地元JAと連携し貸借条件の事前協議等を実施。
➢ 遊休農地解消のため、農地所有者や担い手の事情を考慮し必要に応じて推進委員自らが簡易な整地や草刈りを行い、その後、農地バンク事業を活用。
➢ 推進委員が農地所有者との間に入って利用調整に尽力し、農作物の加工販売等を通じて障がい者の就労支援を行うNPO法人の耕作規模拡大を支援。
取組の効果
【担い手への農地集積・遊休農地の解消】
➢ 上富田町は農地バンクを活用し43.5haを集積(令和4年度)。※担い手への農地集積面積の約1/4
➢ NPO法人には令和4年度までに49筆(2.9ha)の農地を集積(うち9筆(0.9ha)は遊休農地を解消)。※4年度は0.9haを集積
➢ 令和4年度までに町内の新規就農者5名に対し39筆(3.8ha)の農地を集積。※4年度は1.3haを集積
➢ 後継者がいない農地について、利用調整に入り、令和4年度に約1haの農地を担い手に集積。
➢ ニンニク等を生産する農業法人に対し令和4年度までに遊休農地を含む約2haの農地を集積。※4年度は0.6haを集積
農業委員等が中心となった農地の承継・集約化(鳥取県琴浦町農業委員会)
体制
・農業委員: 13名/農地利用最適化推進委員:12名
地区の特徴・状況、課題
・昭和30年代半ばより収益性が高く災害に強い芝の栽培が行われており、近年はブロッコ
リー、白ネギの促進も行っている
・農業者の高齢化による担い手不足、農畜産物の価格低迷による農業経営の収益低下
・地区の約4割が中山間地域で、耕作条件不良、鳥獣被害等により遊休農地の増加が課題
令和4年度最適化活動の目標と実績
・農地集積率:37.1%→37.3%
・遊休農地(緑区分)の解消面積:10.6ha→11.0ha
・新規参入者への貸付け等同意面積:17.3ha→40.4ha
取組の特色・内容
【担い手への農地集積】
➢ 毎月、農家相談会を開催し、農業者からの相談に丁寧に対応。また、12月から2月の各月は強化月間として「耕作依頼農地の担い手へのマッチング」に取り組み、高齢化等により耕作を中止する農地が発生した際、農業委員や農地利用最適化推進委員が中心となって地域内外の農家にあっせんに取り組んでいる。
【新規参入の促進】
➢ 新規就農者に対して、生産組織を中心とした支援体制を整備し、農業委員会と指導農業者が中心となって研修後の農地を提供している。
取組の効果
【担い手への農地集積】
➢ 10ha超の個人耕作者が後継者がいない等を理由に縮小する相談が持ち込まれた際、農業委員等が当該農地を地域内の方にあっせんを行うことにより、新たな担い手に引き継ぐことができた(農地の集約、遊休農地の発生防止)。
【新規参入の促進】
➢ 農家相談会等を通じて新規就農者への貸付同意を得ることで目標を大幅に達成した。
➢ 毎年、新規就農者が参入し、地域の活性化に寄与。特にミニトマトではIターン者が多く、スマート農業の導入により既存農業者並みの品質、収量の確保を実現。
農業委員等が中心となった農地の承継・集約化(鳥取県琴浦町農業委員会)
体制
・農業委員: 19名/農地利用最適化推進委員:26名
地区の特徴・状況、課題
・町内の約7割を山林が占める中山間地域であり、平地において米麦を中心とした土地利用型農
業を行っている。
・中山間地域では過疎化による後継者不足等により、遊休農地の増加が懸念される。
令和4年度最適化活動の目標と実績
・農地集積率:28.5%→27.4%
・遊休農地(緑区分)の解消面積:10.3ha→2.4ha
・新規参入者への貸付け等同意面積:0.6ha→6.9ha
取組の特色・内容
【担い手への農地集積】
➢ 農業委員等が中心となって畜産農家と耕種農家との耕畜連携によるWCS用稲の作付けを推進し、集積及び遊休農地の発生防止に取り組んでいる。
➢ 耕畜連携の取組により、肥料コストの低減や国産飼料作物の安定供給を図り、地域内で循環型農業を確立させる。
➢ 地域計画の協議の場にて地区の現状を担い手間で確認をする。
➢ 地元自治会の集会にてこれらの取組を説明。
【新規参入の促進】
➢ 農業委員・推進委員や農業委員会窓口への貸付相談等において離農希望等の相談があった際は新規参入者への貸付け同意について丁寧に対応するとともに、借受希望者への対応を実施。
取組の効果
【担い手への農地集積】
➢ 耕畜連携に取り組む農家数が着実に増加している。R3:0人(0ha)→R5:19人(40ha)※R6は32人(60ha)に拡大予定
➢ WCS用稲の農業機械は大型の為、不整形や狭小の農地では作付けできないことから、ほ場整備の機運が高まっている。
➢ 認定農業者以外からも耕畜連携の問い合わせが増加しており、集積率には現れないが遊休農地の発生防止に寄与している。
【新規参入の促進】
➢ 新規参入者への貸付け同意面積は目標を大幅に上回った。また、毎年2名程度が新規参入している。
農業委員等が中心となった農地の承継・集約化(鳥取県琴浦町農業委員会)
体制
・農業委員:37 名
・認定農業者19名、若手1名、中立委員2名
地区の特徴・状況、課題
・個別担い手の育成及び集落営農組合の法人化に力を入れている。
・耕地における作物の作付け率170%(二毛作で農地を有効活用(玉葱等))
・農業産出額県内3位、玉葱(全国5位)、いちご、れんこん、米、麦、大豆等
・毎年20名以上の新規就農者確保、町内6割の面積を占める平坦な農地を有効活用。
令和4年度最適化活動の目標と実績
・農地集積率:94.3%→92.4%
・遊休農地(緑区分)の解消面積:遊休農地(緑区分)既存・新規発生なし
・新規参入者への貸付け等同意面積:21.0ha→43.5ha
・月当たり平均活動日数:5.09日
取組の特色・内容
【遊休農地の発生防止】
➢ 農地パトロールを行い、農地が荒廃化する前に地区全体で協力し合いながら保全管理を行っている。
➢ 農地の受け手の相談があれば、隣接する農家や集落営農法人との間で利用調整を行っている。
【新規参入の促進】
➢ 農業委員会はJAや町と連携し、いちごやれんこん等の園芸作物におけるトレーニングファーム制度を実施・運営しており、新規就農イベントでUターン等を募集し、県外からも研修生を受け入れている。また、この取組の中で、研修生への指導能力を持った農家の紹介や農地の確保、研修後の就農先の紹介等を行い、新規参入の促進に貢献している。
取組の効果
【遊休農地の発生防止】
➢ 地域全体で農地を守っていく中で、周りに迷惑をかけられないという意識が根付いていることから、遊休農地の既存・新規発生なしとなっている。
【新規参入の促進】
➢ 新規学卒者やUターン等を含む新規就農者を毎年20名以上確保できている。また、過疎化や少子高齢化対策にも繋がっている。
その他の取組
➢ 農業委員会が農地中間管理機構や町と連携しながら、農地の利用集積・集約化に向けた情報提供及び利用調整に努めている。
農業委員等が中心となった農地の承継・集約化(鳥取県琴浦町農業委員会)
体制
・農業委員: 14名/農地利用最適化推進委員:16名
地区の特徴・状況、課題
・県本島中部に位置し、市域の大部分が海に面し8つの離島が存在。
・農家の高齢化や後継者不足から遊休農地化が多く存在することが課題
令和4年度最適化活動の目標と実績
・農地集積率:10.2%→11.1%
・遊休農地(緑区分)の解消面積:6.8ha→0.5ha
・新規参入者への貸付け等同意面積:1ha→-ha
取組の特色・内容
【委員の意欲の醸成】
➢ うるま市では県の指導農業士等に認定されているような地域のリーダーが複数人、農業委員や推進委員として活躍。
➢ 農業委員会研修会を実施することで委員一人一人が、意見を出しやすい雰囲気づくりを行うとともに、農業委員や推進委員としての役割及び活動の重要性を学ぶ場を設けている。
【活発な最適化活動】
➢ 農業委員や推進委員が地元自治会や地域計画の話し合いへ積極的に参加。日頃からの取組により地域の農家との繋がりが強い。
➢ また、農地パトロール実施中のゼッケン着用、名刺の活用、意向調査のため戸別訪問を実施。農業委員会新聞発行やSNS活用など活動の見える化により地域に根ざした活動に努めている。
【担い手への農地集積】
➢ 普段の活動を通して地域の農家との繋がりが強いことから、農地の貸借の相談や当事者間の利害調整に尽力している。
【新規参入の促進】
➢ 新規参入相談会を地域計画の話し合いの場や市のイベント(祭り等)を活用して実施。JAにも協力してもらい新規就農の間口を広げ、相談しやすい環境作りを行っている。
➢ 新規就農を目指す者を指導農業士(農業委員も含む)の下で研修生として受入れるなどの育成も行っている。
農業委員会について
農業委員会に届出・許可が必要なこと
- 農地の転用
- 農地の賃借・売買
- 農地の相続
- 農地の盛土
- ソーラシェアリング
農地の賃借・売買
農地を賃借したり売買したりする場合は、農地法に基づき農業委員会に許可を得る必要があります。
加えて、個人や法人が農業目的で賃借・売買する場合は、次の一定の要件を満たしている必要があります。
・農地すべてを効率的に利用できる営農計画をもっている
・農地を取得する者が年間150日以上は農業に従事する
・取得する農地面積の合計が原則50a(北海道は2ha)以上である
・周辺の農地利用に支障を与えない
さらに法人の場合は、賃借・売買のそれぞれに追加で所定の要件があるため注意が必要です。農地の賃借・売買の許可申請に必要となる書類や、細かな賃借・売買の要件については、各自治体によって様式が異なる場合があります。
農地の盛土
農地の改善のために、盛り土や切り土、掘削などを行う場合は、農地改良工事届を農業委員会に提出する必要があります。農地改良工事届は、農地の改良のための工事を始める1 カ月前まで提出しなければなりません。
また、各自治体それぞれに農地改良を行う場合の注意点があります。
例えば、福島県いわき市であれば次のとおりです。
・農地面積は1,000㎡以内まで
・盛土の高さは周囲の低い道路面より1m以内の高さまで
・工事期間はおおむね3カ月以内に実施する
・盛土の土質は農業に適した土のみを使用する
・工事完了後は速やかに農業を再開する
どうして農業委員会の許可を得る必要があるのか?
- 農地は農業上大切なものであり、また、一度農地以外のものにされると元に戻すことが困難であることから、将来に向かって、優良な農地を確保できるよう、土地の合理的な理由を踏まえ、適正な農地の転用が行われるようにしています。
- 規制における許可の方針として、下記のような要件があります。
- 農用地区域内にある農地及び集団的に存在する農地そのほかの良好な営農条件を備えている農地は原則として許可しない
- 市街地の区域又は市街地化が見込まれる区域内にある農地は転用を許可できること
- 具体的な転用計画を伴わない資産保有目的又は登記目的での農地取得は許可しないこと
転用できる土地と転用できない土地
許可等の審査にあたって、農地の立地条件、自然条件、都市的環境により次のように区分されます。
- 農用地区域内農地 【転用は原則として不許可】
市町村が定める農業振興地域整備計画において、農用地区域とされた区域内の農地 - 甲種農地 【転用は原則として不許可】
市街化調整区域内にある
・農業公共投資の対象となった農地(農業公共投資後8年以内)
・集団のうちでかつ高性能農業機械による営農に適した農地 - 第1種農地 【転用は原則として不許可】
・生産力の高い農地
・集団農地(10ヘクタール以上)
・農業公共投資の対象となった農地 - 第2種農地 【下に示す第3種農地に立地困難な場合等に許可】
近い将来、市街地として発展する環境にある農地や農業公共投資の対象となっていない生産力の低い小集団(おおむね10ヘクタール未満)の農地 - 第3種農地 【原則として許可】
都市的施設の整備された区域内の農地や市街地内の農地
例えば、
・駅、役場が、おおむね300メートル以内にある農地
・市街地の中に介在する農地等
考察
◉農業目的での賃借・売買する際の制限が、農地の有効活用の妨げになっている可能性が考えられる。