10/27町村議会研修会

災害時の議会・議員の役割

福嶋 浩産(ふくしまひろひこ)氏
中央学院大学教授元我孫子市長元消費者庁長官

◉災害時に権限を、国にすべきか?、自治体にするのか?→一番住民に近い自治体に権限をもたすべき。
◉災害対応の国への評価は低い。しかし市町村の評価はバラバラ。評価の高い自治体もある。
◉役所の中には議会対応が面倒だと思う人もいる。災害時には黙っててよ!と思う人もいる。でもそう思わせるのは日頃の議会せい。

災害時に議会の何を継続させるのか?

①住民と対話をすること
②議論すること
③議会は結論を出すこと


◉一人ひとりが住民の心を把握する事、そして議会として把握する事が大事。
◉議場で会議する事を継続させるのが重要ではない。別に体育館や大き気会議室でもできる(コロナの時)。
◉組長は行政に集まった情報は入る。役所には本当に必要な情報は入ってこない。それらはほとんど地域の中にある。組長は1人だけだが、議員は何人何十人いるので、住民の情報を得るには議会の方が情報収集しやすい。
◉災害時に議員に集まった情報を、議員が個別に担当課に個別にもっていっても余計な仕事を増やすだけ。委員長や議長に話して、議会として話をまとめるべき。そしてそれを議論して、まとめて行政に提案する。←これも災害時の話ではない。普段からそういった行動をすべき。
◉正義がひとつになったら怖い。正義が一つにならない方法←住民が集まって話せる場をたくさんつくる事。その中心が議会であってほしい。
◉災害時に求められる議会の対応は、日頃から求められている事。①対話する、②議論する事、③意思決定する事。これは日頃行っていると、災害のときにできない。つまり災害時に住民の意思が行政に届かなく反映されない。

予算要求をネットにあげてた。市民と一緒に予算案をつくった。予算案を市民とつくる。(我孫子市)

添付資料から--------------------------------
BCPで継続すべき本質
継続対象は「全議員による公開の討議と意思決定」であり、場所(本会議場)ではない。密回避のための代替として大ホールやオンラインを柔軟に活用すべき。
首長との関係の再構築(二元代表制の徹底)
議会は首長・行政への個別要望の“仲介窓口”ではなく、住民の多様な意見を集約・討議し、可決/否決/修正で責任を負う意思決定機関。日頃からこの関係を確立しておく。
非常時の最優先は住民との対話
住民の不安や要望(ワクチン、医療、事業者支援、学校等)を丁寧に収集。オンラインは回数増・即応・専門家接続に有効だが、合意形成の難しさがあるため、平時から顔の見える関係を築く。
議員間討議の回復
要望は議長・委員長に集約し、議員間で徹底討議して優先順位と方針を決め、行政に求めるのが本来の姿。非常時の“特例”ではなく、望ましい常態。
同調圧力と分断の回避
コロナ期に顕在化した接種を巡る同調圧力は、自由意思の尊重を脅かす。無作為抽出の住民会議など、多様な住民が安心して語れる対話の場を議会が主催・仲介する。
議会は常に意思決定機関
専決処分が増えても、議会は役割を放棄できない。首長は住民と相談して案を作り、議会は住民利益の観点で審査・決定するのが二元代表制。
公開討議と修正の実践例
我孫子市長期(1995–2007)の例では、与野党区別や根回しをせず公開討議を徹底。当初予算も審議を経て毎年のように修正され、議会責任が発揮された。
「不要不急」化のリスクと回避
要求政治の延長では人口減少・ネット社会で議会が形骸化する。住民の多様な利害を調整し適切な選択を下せる「唯一の場」になれば、議会は不可欠の存在となる。
資源の非対称と議会の強み
行政は人員・情報で優位だが、選挙で選ばれた複数の議員が地域と結べば、重要情報は議会にも集まる。これを核にBCPを設計できる。
結論/提言
議会BCPは「場所や形式の維持」ではなく、①公開性、②住民対話、③議員間討議、④最終意思決定の継続を設計思想の中心に据えること。併せて首長との関係を二元代表制に沿って平時から再構築する。

議会改革・議会活性化のための議員活動

東京大学大学院法学政治学研究科教授
金井利之氏

1. 「地方」観の再定義:地方議会/地方圏/自治体議会

  • 「地方議会」呼称の問題
    「地方」は中央からの相対概念で、霞が関・永田町目線が滲む。地方議員が国政政党の末端として系列化される構図や、「地方六団体」「三議長会」など中央との交渉体としての色彩が強い。
  • 「地方圏」対「東京圏」
    東京一極集中や偏在是正、ふるさと納税などをめぐり、地方側でも利害は一枚岩でなく内部対立が起きる。
  • 「自治体議会」という見方
    団体自治・住民自治を軸に、市町村中心の「自治体」単位で議会を捉え直す。憲法・地自法は「地方自治」と言うが、「地方公共団体」という語には中央目線が残る。

◉地方議会という言葉を使わないで欲しい。自治体議会という言葉でいいのでは?との意見。


2. 議会不信の再生産構造と代表民主主義の逆説

  • 不信の負のスパイラル
    不信 → 定数・報酬削減 → 活動総量(人数×時間)の低下 → 可視性低下 → さらなる不信。為政者・行政・メディア・研究者・利益団体にとって都合が良く、断ち切りづらい。
  • 代表民主主義の宿命と責任配置
    住民は“無答責”、為政者は“答責”される仕組みが検証を可能にする。批判や不信の存在自体は健全さの証でもあるが、検証・反省の制度化が不可欠。
  • 首長制下での責任の歪み
    首長は権力集中・要望の受け皿となるため根源的不信は表面化しにくい。他方、権力を持たない議会は不満の捌け口にされやすい。“牽制すれば政争、支援すれば馴れ合い”というジレンマに陥る。

◉議会改革で報告会を行うと、ニーズがなく集まらない→仕方ないので町内会に無理やり参加すると迷惑がられるようなケースがある。
◉なぜ代表民主主義なのか→住民が決めた事は仕方ない(民意)住民は間違わない→民意は選挙で表せる→
◉期待は首長にあつまり、不満は議員に集まる。
◉力を持つ人は悪く言われない。力は首長に傾いている。権力を持てれば悪く言われない。


3. 議会活動の総量=「人数 × 時間」をどう増やすか

  • 定数の影響
    定数削減は平均的には活動総量をじわじわ減らす。例外的に1人当たり時間を増やせば補える理屈だが、総体としては困難。
  • 報酬の影響
    報酬下落は本業シフトを招き、可処分時間を圧迫。ただし動機は金銭だけではないため、直結はしない場合もある。選挙競争の弱さは努力誘因を弱める。
  • 経済基盤・職業属性
    自営業・経営者は融通が利くが本業悪化で時間は減る。年金生活者・主婦(夫)・若年非正規・サラリーマン等で影響が異なる。可処分時間を増やす制度設計(働き方・会期・会議設計)が鍵
  • 活動動機
    権力欲・利他・承認・名誉など多元的。定数・報酬削減が承認や尊敬を減衰させる副作用に注意。住民側の評価・表彰・成果可視化もレバーになり得る。

4. なり手不足:定数削減での糊塗は限界

  • 小規模自治体を中心に深刻化。定数削減で見えにくくしてきたが限界に。
  • **「最低3人説」**のような極端な削減は、議会権力の偏在化・首長との力学変化を招く。
  • 社会全体の人手不足(自治会役員、民生委員、消防団、介護・看護・保育・教員・技術職など)と連動。他分野との人材獲得競合が背景。

◉立候補者の数をみて議員定数を決める事で、議員定数を削減しやすい。反対が生じにくい。


5. 多様性と正統性:代表構成は民意を映しているか

  • 現状の偏り
    中高年男性に偏重。属性の多様性が乏しい一方で、思想的には極端な意見が出やすい。
  • 民主的正統性への影響
    女性・若者・子育て・介護当事者の視点が反映されにくい。普選でも、子ども・外国人・関係人口は制度的に軽視されがち。立候補者層が偏ると、投票の意味合い自体が弱くなる。
  • 参画方策
    夜間・休日開催は家事育児・介護負担者に逆効果の面も。ハラスメント対策は必須。小規模自治体での処遇改善は限界があり、報酬設定方式や審議会の設計が論点。

6. 二元代表制の限界と「討議広場代表制」

  • 二元代表制の通念への批判
    “首長と議会は対等”の看板が、実質的に首長優位の正当化に使われがち。首長は選挙正統性を盾に「文句があるなら落とせ」と居直れる構図(ポピュリズム化)。
  • 代表の本質:議論においてのみ存在
    選挙だけで代表性は成立しない。多数の公選職(首長+議員)による公開討議のプロセスが代表の中身。
    多数決を下した瞬間、代表(討議)は停止し、首長の再議で再起動するという緊張関係。
  • 討議広場代表制
    フォーラムとしての議会に、議員間だけでなく、首長・職員・住民・関係団体を組み込み、熟議を通じて代表性を具体化する発想。

7. 首長との相互作用と与野党観

  • 直接公選首長制の下では、制度上“与党”は不要
    不信任の制度要件はあるが、議会は首長を選出できない。与党固定化は不要で、むしろ**結論流動性(是々非々)**が健全な熟議を促す。
  • 二元代表制論の運用問題
    与野党の固定対立は討議を閉塞させる。議会全体を“与党”に、首長を“執行者”に据える議会主導論は極端で、現行の二元代表制はそこまで想定していない。
  • 首長の議会対策
    安定多数を求める首長はオール与党化を志向しがち。だが、厳しい質疑が失われると政策品質は低下

8. 議会調査と百条委員会の現実

  • 情報が最大の武器
    予算・条例の拒否権は実運用が難しいため、質疑・提案での行動変容誘導が主戦場。政務活動・住民陳情・視察・メディア・SNSからの独自情報収集が前提。
  • 百条委員会の強権と限界
    出頭・証言・記録提出要求や罰則規定はあるが、
    1. 与野党分断で設置・追及が鈍る、
    2. 正当拒否・記憶不在・のらりくらり答弁、
    3. 議員側の質問技術不足、
    4. そもそも裏づけ情報の不足、
      が実効を損ねる。成功の鍵は事前の情報力

9. 政策サイクル:課題設定→立案→執行→評価

  • 政策・条例は手段であり、起点は課題設定
    現行政策の評価から“不十分さ”を見極め、課題を定義する。情報源は、国方針・専門家・報道・ネット世論・支持団体・地元の小さな声・議員の経験など多元。多様なバックグラウンドの議員が必要な理由がここにある。
  • 立案段階への関与
    施政方針・議案提出の前段から、**職員と議論する場(全協・説明会の高度化)**を確保。雰囲気確認に留めず、内容のすり合わせと代替案提示まで踏み込む。
  • 執行と評価
    “どぶ板・口利き”の弊は警戒しつつ、執行のモニタリングは評価・改善の資源。監査・決算認定・行政評価は形骸化に注意しつつ、データ(数字)を読み解く能力・支援体制が肝。

10. 議会事務局・行政職員との関係

  • 事務局の二つの顔
    調査系(政策・法制支援)と議事系(運営円滑化)。日本では**議会版の“財政課(CBO的)”**は希薄で、人数・人事で限界がある。
  • 独立強化論の現実障害
    人数で行政に劣後、人事権が首長側にあり、執務経験の蓄積も難しい。独自採用は人材確保が困難。
  • 行政職員との日常対話
    行政は首長の補助機関であると同時に自治体全体の公僕。議員が支援を得られるだけの説得力・準備を持つことが必要。

11. 住民との関係:パラドクスからフォーラムへ

  • 住民代表の念と距離感
    「議員=住民代表」の自己完結は、住民からの距離を広げがち。首長・行政は住民参加・協働で味方づくりを進め、議会は活動的住民と対立しやすく、不信の再生産が起きる。
  • 監視と陳情の現実
    住民監視は必要だが、実際は要望実現が主目的になり、実現できなければ「役立たず」批判へ。構造的限界がある。
  • 住民の声の組み込み
    請願者陳述・参考人招致・一般質問の住民枠・公聴会の実効化・議会主催の住民説明会など、議会を討議広場として開く。議員は議事整理・論点編集で価値を出す。

総括(骨子)

  1. 呼称と視座を「自治体議会」へ。中央・東京目線からの自立。
  2. 不信の螺旋は、活動量の減少と可視性低下から生まれる。反転には情報力・政策力の強化が前提。
  3. 活動総量は「人数×時間」。定数・報酬・会議設計・働き方を一体で見直す。
  4. なり手不足は社会的構造問題。多様性の拡大と参画障壁の低減が不可欠。
  5. 二元代表制の限界を踏まえ、議会を公開討議のフォーラムに再設計。
  6. 首長与党の固定化を避け、是々非々の流動性で政策品質を高める。
  7. 百条委員会の実効を上げるには、設置前からの独自情報収集・質問設計が必須。
  8. 政策は課題設定→立案→執行→評価の循環。立案段階から職員と議論を。
  9. 事務局の現実的限界を踏まえ、データ読解・法制・財政の補佐機能を厚くする工夫。
  10. 住民の直接発言を制度として議会に組み込むことで、代表性と信頼を再構築。

備忘録

◉百条委員会のターゲットは民間人にすべき。行政の者は議会対応に慣れているので、ボロを出さない。
◉議会ウケがよくない職員は出世できない。

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