米沢市「空き家対策」行政視察

7月31日、総務産業常任委員会で米沢市の空き家対策を視察した。配布資料によると、令和7年10月1日現在で把握する空き家は1,588件。このうち住宅が1,461件、工場や店舗などの非住宅が127件となっている。令和4年度の1,719件から131件、約7.6%減少した一方、老朽度が高いC・Dランクは住宅と非住宅を合わせて840件あり、全体の約53%を占める。特に緊急性が高いDランクは334件で、所有者不在の空き家も76件となっている。空き家総数は減少しているものの、管理や処分が難しい物件は依然として多い。

8人の職員と約5,200万円の予算
空き家対策は、正規職員5人と地域おこし協力隊を含む会計年度任用職員3人の計8人体制で進めている。庁内の関係17課で空き家等対策検討委員会を組織し、所有者の確認は税務課、害獣や蜂などへの対応は環境課というように役割を分担する。令和6年度当初予算は人件費を除いて5,207万9,000円。国費1,220万円、県費24万4,000円を活用し、残る約3,963万5,000円は一般財源である。米沢市の強みは制度の数だけでなく、現地調査や所有者確認、指導を実行する人員を配置している点にある。一方、この体制と財政負担を高畠町がそのまま再現することは難しい。
市民からの通報と現地対応
空き家は、職員による調査のほか、市民、町内会、民生委員、児童委員などからの情報提供によって把握する。令和7年度の通報対応は68件で、令和6年度の194件から126件減少した。ただし、冬期間の通報が127件から10件に減っており、空き家問題そのものが大幅に改善した結果とは判断できない。町内会長にも実態調査への協力を求め、行政のデータだけでは分からない居住状況や所有者情報を収集している。
管理不全空家等への指導・勧告
令和7年度は管理不全空家等について195件を調査し、147件を指導、102件を勧告した。措置完了は51件、住宅用地特例の解除は83件となっている。条例に基づく指導は5件で、勧告の実績はない。特定空家等についても、指導、勧告、命令の実績はない。屋根材の飛散、壁の穴、漏水などを確認し、危険性が高い物件に行政文書を送付する。補助金を出すだけでなく、所有者へ直接働きかけ、住宅用地特例の解除まで進めている点は、米沢市の取組の中で最も実効性が高いと評価できる。ただし、措置完了51件が同年度の勧告102件に直接対応するとは限らないため、単純に「半数が改善した」と断定することはできない。
応急措置・安全代行措置
所有者が不在の物件では、建物の一部解体、トタンの撤去、窓の閉塞などの応急措置を行っている。令和7年度は業者への委託が2件、73万9,200円で、職員による直営対応も2件実施した。所有者はいるものの、直ちに危険箇所を処理できない場合の安全代行措置は1件、55万円となっている。これらは周辺住民の安全を守るために必要だが、空き家の発生や総数を減らす施策ではなく、危険が生じた後の緊急対応である。
略式代執行
所有者が確認できず、危険性が高い物件について、略式代執行を1件実施し、620万4,000円を支出した。米沢市では、所有者による対応が可能な段階では管理不全空家等として指導し、行政が手を付けざるを得ない物件を特定空家等に認定する考え方を取る。放置すれば行政が解体してくれるとの認識が広がり、所有者の管理意識が低下することを防ぐためである。考え方には合理性がある一方、代執行には多額の費用と長い手続期間が必要となるため、最終的な安全網と考えるべきである。
相続財産清算人などの選任
所有者や相続人がいない物件では、裁判所に相続財産清算人などの選任を申し立てる。令和7年度は相続財産清算人を3件、所有者不明土地・建物管理命令を1件申し立てた。裁判所に納める予納金は1件当たり約80万円で、当初予算に300万円を計上している。所有者不在の物件を処分するために必要な手続きだが、解体費以外にも多額の公費と職員事務が必要になる。
不良住宅・特定空家等の除却補助
不良住宅や特定空家等を解体する個人に対し、除却費用を補助する。市町村民税所得割が非課税の場合は補助率10分の8、最大120万円、所得が320万円未満の場合は最大60万円となる。令和7年度は13件、1,301万1,000円を支出し、1件当たりの平均は約100万円である。13件の除却につながった成果はあるが、空き家1,588件に対する割合は約0.8%、Dランク334件に対しても約3.9%である。個別の危険空き家を解消する効果はあるが、この補助金だけで空き家全体を大幅に減らすことは難しい。
近隣住民空き家除去支援事業
近隣住民や地域団体が特定空家等と土地を取得し、除却後に地域で利用する場合、解体費を最大400万円、家財処分、測量、登記などを最大50万円、合計最大450万円補助する。跡地は公民館の駐車場、ごみ集積所、雪置き場、消防ポンプ小屋の駐車場などに活用された事例がある。しかし、令和7年度の実績は0件だった。補助額を超える自己負担、土地の所有名義、固定資産税、将来の維持管理について地域の合意を得ることが難しいためである。制度は特徴的だが、高畠町で常設制度として導入する実現性は低い。具体的な案件で地域の合意と跡地利用が決まっている場合に、個別に検討する方が現実的である。
空き家改修支援事業
空き家の利活用を目的とした改修費用を補助する。移住者が住宅として改修する場合は、基本額100万円に子ども加算20万円を加え、最大120万円となる。空き家・空き地バンクの物件を自ら利用する場合は最大50万円、地域活性化施設として改修する場合は最大60万円を補助する。令和7年度の実績は1件、110万円だった。制度は三つの利用方法を用意しているが、実績1件では、空き家流通を大きく促進しているとは評価できない。補助制度よりも、活用する人と売却可能な物件を増やすことが先に必要である。
隣接地取得支援事業
200平方メートル未満の狭小地、道路に接していない土地、不整形地などを解消するため、隣接する空き家や土地を取得する費用を補助する。測量などの費用は最大30万円、建物の除却または改修費は最大90万円で、合計最大120万円となる。令和7年度は5件、549万6,000円を支出した。通常の不動産市場では処分が難しい土地の問題を、隣接地と一体化して解決する制度であり、件数は少ないものの合理性がある。高畠町でも、接道条件や狭小地が原因で処分できない具体的な案件に限り、個別支援として検討する価値がある。
空き家・空き地バンク
一般の不動産市場で取り扱うことが難しい物件を中心に、行政が情報を公開し、利用希望者との橋渡しを行う。令和7年度は物件登録13件、利用登録21件、成約6件で、すべて売買だった。累計では物件登録114件、利用登録332件、成約60件となり、内訳は売買56件、賃貸4件である。登録物件に限れば一定の成約実績があるが、年間13件の登録は空き家全体の1%未満である。成約させる力よりも、所有者から登録物件を掘り起こすことが課題と考える。
空き家お探しマン
空き家を探している人の希望条件を登録し、市が条件に合う可能性のある物件を検索する。所有者に売却や賃貸の意向を確認し、希望が一致すれば不動産業者に仲介を依頼する。「空き家お探しマン」という特定の人物がいるのではなく、制度を広報するキャラクターである。令和7年度の利用登録は14件、累計24件、成約は累計1件となっている。成約実績は小さいが、主な費用は所有者への郵送料であり、大きな予算を必要としない。高畠町では名称やキャラクターではなく、利用希望者の条件に基づいて所有者へ意向確認する仕組みを参考にできる。
住まいのエンディングノート
米沢市は、空き家になってからの対応では遅いとして、発生予防を最も重要な対策と位置付ける。「米沢市版 住まいのエンディングノート」を作成し、家の活かし方やしまい方、家財整理、財産の承継について家族で話し合うことを促している。令和7年度から令和8年3月までに書き方セミナーを3回開催し、参加者は46人、45人、8人の計99人だった。取組自体は必要だが、ノートの作成後に売却、賃貸、解体、相続登記などへ進んだ件数は示されていない。現時点では、発生予防の成果よりも啓発活動として評価するのが妥当である。
高校生への空き家・相続の授業
県立米沢鶴城高校で、空き家問題と登記・相続に関する授業を行っている。2年生約160人、3年生約20人を対象に、それぞれ2回の授業を実施した。若い世代が将来の相続や住宅管理について学ぶことには長期的な意義がある。ただし、実際の空き家発生を抑える効果が表れるまでには長い期間を要し、短期的な成果を求める事業ではない。
空き家セミナー・相談会
エンディングノートの書き方セミナーのほか、出前講座や「住まいの終活セミナー」を開催する。宅地建物取引業協会が主催した空き家相談会にもアドバイザーとして参加した。移住定住支援センターでは、空き家バンクや移住に関する相談を受け、広報紙、ホームページ、SNS、FM放送などを通じて情報を発信している。相談の入り口を増やしている点は評価できるが、相談件数だけでなく、その後の売却や活用に結び付いた件数を把握する必要がある。
お悔やみ窓口との連携
令和5年7月から、家族が亡くなった際の手続きを一か所で進める「お悔やみ窓口」を設置し、相続する住宅についても相談を受けている。所有者が亡くなった後のため、厳密には生前の発生予防ではないが、相続直後に住宅の管理、売却、解体などを考えてもらう早期対応として有効である。高畠町でも、死亡届やお悔やみ手続きの際に、住宅の所在地、今後の利用予定、管理者、相談希望の有無を確認する仕組みは、比較的少ない経費で導入できる。
民間企業による無償解体
株式会社横山興業、株式会社福副、中央清掃有限会社の3社が連携し、家財の片付け、建物の解体、一般廃棄物の処分を無償で行う取組を1件実施した。行政代執行ではなく、市が相続財産清算人などの選任を申し立て、選任された管理人と企業が契約する仕組みである。解体費が無償でも、市には清算人選任の予納金、相続人調査、職員事務などの負担が生じる。企業の社会貢献意欲に依存するため、継続的に多数の空き家を処理できる制度とは考えにくい。条件が整った場合の補完的な手法と評価する。
9団体との連携協定
米沢市は、次の9団体・事業者と連携協定を結んでいる。
- 山形県行政書士会
- 山形県司法書士会
- 公益社団法人米沢市シルバー人材センター
- 山形県宅地建物取引業協会米沢
- 公益社団法人全日本不動産協会山形県本部
- 一般社団法人山形県古民家再生協会
- 株式会社横山興業
- 株式会社福副
- 中央清掃有限会社
相続、登記、売買、管理、古民家活用、家財整理、解体、廃棄物処理まで、各団体の専門分野を活用する体制である。協定を結んだだけで成果が生まれるわけではないが、行政だけでは対応できない課題を専門家につなぐ仕組みは、高畠町でも参考になる。
みらいのすまい応援事業
空き家対策と併せて、令和8年度から「米沢市みらいのすまい応援事業費補助金」を開始する。子育て・若者世帯が住宅を新築する場合、子ども1人につき20万円、最大60万円を補助し、市外からの移住には20万円、市内業者との契約には20万円を加算し、最大100万円となる。若者の定住支援策としては理解できるが、空き家抑制の観点では、新築住宅への補助は中古住宅や空き家の活用促進と必ずしも同じ方向ではない。空き家の取得・改修を選んだ場合の支援とのバランスが必要である。
住宅リフォーム支援事業
移住世帯、新婚世帯、子育て世帯などが住宅を改修する場合、全体工事費の20%、最大30万円を補助する。その他の世帯でも、雪対策、断熱、バリアフリー、克雪化、県産木材の利用など、対象工事を含む場合は工事費の10%、最大15万円を補助する。昨年度の利用は144件で、県から配分された予算の約99%を執行した。利用実績は多いが、空き家を改修した件数が区分されていないため、空き家対策としての効果は判断できない。住宅政策としての成果と空き家対策の成果を分けて検証する必要がある。
視察を通じた評価
米沢市は、空き家対策の制度数、担当職員数、庁内連携、管理不全空家等への指導・勧告の実行力では進んでいる。特に、職員が現地を確認し、所有者を調査し、指導、勧告、住宅用地特例の解除まで進める運用は高く評価できる。
一方、米沢市が最も重要と説明する「空き家になる前の発生予防」は、エンディングノート、セミナー、高校での授業、パンフレット、相談会などの啓発が中心である。その後、住宅の売却、賃貸、相続登記、解体方針の決定などに結び付いた件数は示されていない。
制度全体を見ると、人員、予算、実績の中心は、空き家になった後の調査、指導、勧告、除却、応急措置、代執行である。
したがって、米沢市の空き家対策は、次のように評価する。
空き家になった後の行政対応力は高い。
発生予防は多くの啓発事業を行っているが、実際に空き家を防いだ成果は確認できない。
多くの事業が8人の職員と約5,200万円の予算を前提としており、高畠町がそのまま模倣できるものは少ない。
高畠町で優先すべき取組
高畠町では米沢市の制度をそのまま導入するのではなく、財政負担が少なく、実施可能性の高い取組を選ぶ必要がある。優先すべきは、死亡届やお悔やみ手続きの際に相続住宅を把握して相談につなぐ仕組み、危険度の高い空き家への集中した指導・勧告、所有者や緊急連絡先の早期確認、空き家バンクに登録されていない物件の掘り起こしである。
また、発生予防を評価する場合は、エンディングノートの配布数や講座の参加人数ではなく、個別相談、相続登記、売却、賃貸、解体、管理者の決定、空き家バンクへの登録につながった件数を把握する必要がある。
今回の視察では、そのまま模倣できる大型事業は多くなかった。しかし、相続直後の早期接触、庁内の情報連携、管理不全化する前の指導など、高畠町の規模に合わせて取り入れるべき運用は確認できた。

