セミナー「行政の課題を解決する外部人材を登用する方法」

職員が減る中で行政業務は複雑化

人口減少によって生産年齢人口が減少する一方、自治体ではDX、広報デザイン、ふるさと納税、企業版ふるさと納税、企業誘致、採用広報など、新たな専門知識を必要とする仕事が増えている。講義では、2040年に約1,100万人の労働力不足が見込まれるとのデータも紹介され、職員数の確保が難しくなる中で行政課題は複雑化していくとの問題意識が示された。
これまでの「職員を採用する」「企業へ業務委託する」という方法だけでなく、必要な専門知識を持つ個人と行政が協働することを第三の選択肢として捉える考え方となる。

人とスキルを地域や組織でシェア

人口そのものを短期間に増やすことが難しい中、一人が一つの組織だけで働くのではなく、複数の組織で知識や経験を生かす「人をシェアする、スキルをシェアする」という方法が紹介された。
本業を持ちながら週1~2日程度ほかの組織に関わる人や、社会貢献・スキルアップを目的に複数の仕事を持つ人などを、自治体の課題解決に生かす考え方である。講義では、全国250以上の自治体で外部人材との取り組みが行われているとの事例も紹介された。

外部人材の関わり方は4種類

外部人材の関わり方は、職員と一緒に考える「伴走支援型」と、具体的な仕事を依頼する「業務発注型」、さらに専門的な助言を中心とするか、実際に手を動かすかによって4種類に整理できる。
専門的な助言を行う「アドバイザー」、一緒に考えながら実務にも関わる「コーディネーター」、特定テーマを助言する「スポットコンサル」、動画やデザインなど具体的な成果物を作る「実務サポート」である。最近は、助言だけでなく、職員と一緒に考えて実際に手も動かすコーディネーター型が増えている。

最初に必要なのは人材ではなく課題の整理

外部人材を募集する前に、「何が行政課題なのか」「どこまで関わってほしいのか」を明確にする要件定義が重要となる。
DXであれば助言だけが必要なのか、実際の業務改善まで行ってほしいのか、広報であれば戦略を考えてほしいのか、SNSや動画などの制作まで必要なのかによって求める人材は変わる。課題と人材像を整理した上で求人を作成し、募集、選考、登用へ進む流れとなる。

海陽町は採用応募4人から20人超へ

徳島県海陽町では、2022年度の職員採用試験の応募者が4人にとどまっていたため、人事・採用の専門家が外部人材として参加した。
現状分析やアンケートを行い、採用情報が十分知られていないことを課題として整理し、採用PR用のnote、オンライン説明会、採用パンフレットの改善、YouTube動画などに取り組んだ。noteには37記事、YouTubeには4本の動画を掲載し、応募者数は2023年に18人、2024年には20人を超えたとの事例が紹介された。

外部人材に必要な費用と財源

外部人材の導入費用は、人材本人へ支払う報酬と、人材を探してマッチングする費用に分かれる。報酬は月額、時給、成果物単位、成果報酬など、仕事内容によって設定方法が異なる。
アナザーワークスのサービス例では、プロジェクト型は1案件当たり約50万円、市町村向けの年間プランは約200万円との説明があった。また、総務省の「副業型地域活性化起業人」との親和性が高く、講義では外部人材への報酬等に特別交付税措置、受け入れ前の経費にも一定の措置があるとの説明があった。実際に利用する場合は、その時点の制度要件を確認する必要がある。

京都市は「活用」ではなく「協働」

京都市では、外部人材を単に使うという意味に見える「活用」を避け、「民間副業人材との協働」と位置付けている。
専門家から意見だけを聞くのではなく、自治体ごとの事情を理解した上で、一緒に悩み、一緒に考え、一緒に解決策をつくる「伴走者」として参加してもらう制度である。財政難を背景とする行財政改革でも、支出を削るだけでなく、収入や担税力を高めるためには従来と異なる仕事の進め方が必要との考えから制度を始めた。

京都市は段階的に制度を拡大

京都市では令和4年度に9人で通年アドバイザー制度を開始し、令和5年度の効果検証を経て、令和6年度は14人、令和7年度は15人へ拡大した。
さらに、継続的に関わるアドバイザーだけでなく、短期間の事業に対応する「スポットアドバイザー」、必要なときに相談できる「政策推進パートナー」など複数の仕組みを設け、部署や課題に応じて使い分けている。

外部人材との協働が職員育成にもつながる

京都市では、外部人材によって政策の高度化やスピード向上だけでなく、職員自身の能力、モチベーション、民間との共創意欲にも変化があったとしている。
特に、行政内部の言葉や課題を民間企業にも伝わる形に整理する過程を外部人材と一緒に行うことで、職員自身も民間とのコミュニケーション方法を身につけることにつながった。外部人材を職員の代替とするのではなく、職員自身の能力を高める役割も持つ。

担当分野を越える「政策越境」

京都市では、外部アドバイザーの知識を担当分野だけに限定せず、ほかの政策にも生かす「政策越境」が行われている。
アドバイザー同士の交流から、それぞれの専門知識を組み合わせれば別の政策にも活用できるとの提案が生まれ、担当部署を越えて相談できる仕組みへ発展した。外部人材には社会貢献を目的として自治体に関わる人もおり、その知識や意欲を限定された仕事だけに閉じ込めないという考え方である。

初めは成果を測りやすい事業から

外部人材との協働経験がない自治体では、最初から京都市のような幅広い伴走型を目指す必要はなく、仕事内容と成果を明確にした小規模な事業から始める方法が紹介された。
動画制作、採用広報、ふるさと納税など、成果を比較しやすい分野で実施し、寄附額、応募者数、業務時間などの変化を確認する。庁内に「外部人材が本当に役立つのか」という疑問がある場合も、定量的な成果を示しやすい事業から始めることで理解を得やすくなる。

小規模自治体でも応募は期待できる

京都市では、公民連携の1ポストに約100人、広報分野で約150人など、多数の応募があった事例が紹介された。一方、京都市には都市としての知名度があるため、その数字をそのまま他自治体へ当てはめることはできない。
アナザーワークスの実績では、自治体の規模にかかわらず1案件当たり平均20~30人程度の応募があるとの説明だった。重要なのは応募者を多数集めることではなく、必要な専門性を持つ最適な1人とマッチングすることであり、そのためにも募集時の要件定義が重要となる。

導入直後は職員負担が増える

外部人材を導入すると、要件整理、募集、面接、契約、情報共有、日常的な調整などが必要となるため、短期的には職員の仕事が増える。
京都市でも制度担当者が全案件の面接に参加し、外部人材に仕事を丸投げする制度ではなく、一緒に仕事をする制度であることを担当部署へ伝えていた。一方、外部人材とフラットな関係をつくることで、完成度の高い資料を作ってから相談する必要がなく、チャットなどで気軽に専門家へ相談できるようになった。
短期的な負担だけでなく、業務改善、職員のスキル向上、専門家とのネットワークなど、長期的に自治体内部へ何が残るかを見ることが重要となる。

公平性・情報管理・利益相反への対応

京都市では特定の個人を直接選ぶのではなく、公募を行った上で選考・契約することで公平性と透明性を確保している。
機密情報については守秘義務を契約で定め、外部人材が情報を外へ出してよいか迷った場合には事前に確認する運用を行っている。また、外部人材本人が関与した行政業務について、その人の所属企業が受発注に応募できない制限を設け、利益誘導を防止している。

短期成果だけでなく行政組織の変化を見る

京都市では議会から、外部人材の導入が職員削減につながらないかとの指摘が出たこともあるが、外部人材は職員の代替ではなく伴走者であり、職員育成にも効果があるとの考えで制度を運用している。
制度開始時には議会への説明を行い、その後は毎年度の予算で必要経費を説明している。短期的な事業成果だけではなく、職員の能力向上、民間とのネットワーク、政策形成能力など、長期的に行政組織が強くなったかという視点で見ることも重要との考えが紹介された。

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