改めて議員学習

前置き
議員の半期が過ぎて、改めて議員として持つべき知識を復習しようと思います。
ところで、議員の権限を誤って認識している人が多く見受けられます。実は私もそうでした。
議員の最も大切な役割は、議案を審議し、町の方針や制度を議会として決定していくことです。
一方で「議員に頼めば何とかなる」と誤解されることがあります。しかし、議員には事業を直接実行する権限(執行権)はありません。例えば「◯◯自治会の道路を広げてほしい」といった要望を議員が受け取り当局に伝えたとしても、それを必ず実現しなければならない義務は当局にはありません。議会として取り上げても、行政に法的な拘束力を及ぼすものではないのです。同じことは選挙公約についても言えます。「◯◯建設に反対します」というように、議員が意思を表明することは可能です。しかし「◯◯建設を実現します」と断言することはできません。なぜなら、当局が予定していない事業を議員が実行させる権限はないからです。そうした表現は誤解を招きやすく、場合によっては「票を得るための言葉」と受け取られてしまいます。つまり、議員にできるのは「議会として意見を表明し、当局に働きかけること」であり、最終的に事業を実施するかどうかを決めるのは町長と行政です。議員に言えば必ず何とかなる、という考えは誤解であることをご理解いただければと思います。
議員提案権
1. 提出できる主体
- 議員個人ではなく、一定数の議員の連署が必要です(地方自治法113条)。
- 議員定数の8分の1以上の賛成者があれば提出可能。
(例:定数16人なら2人以上、定数18人なら3人以上)
- 議員定数の8分の1以上の賛成者があれば提出可能。
2. 議員が提出できる議案の種類
議会において議決すべき事件(=町長提出の議案と同じ範囲)のうち、議員からも提出できるものがあります。代表的には:
(1)条例の制定・改廃
- 新しい条例を作る
- 既存の条例を改正する
- 既存の条例を廃止する
(2)予算の修正
- 町長提出の予算案に対し、議会が修正を加えることができます。
※ただし議員から独自に「予算案」を提出することはできず、提出できるのは修正案のみ。
(3)決算の認定に対する修正意見
- 決算は町長提出のものですが、認定にあたり修正や意見を付すことが可能。
(4)意見書・決議案
- 国や県に対する意見書の提出
- 議会としての意思表明(例:○○問題に関する決議)
(5)規則や規程に準じる議会内部の運営規程
- 議会会議規則の改正
- 議会の委員会条例の改正 など
3. 議員が直接提出できないもの
- 予算の原案(提出できるのは町長のみ)
- 契約や財産処分の専決事項など、首長の専権に属するもの
議長は長すぎる質問を制止できる
議長が長すぎる質問を制止できる根拠は、主に以下の3つです。
- 事前に定められた発言時間の超過
最も明確な根拠です。前回の回答でご説明した通り、一般質問などでは、あらかじめ「一人(答弁含め)60分」といった形で時間が定められている場合がほとんどです。この持ち時間を超えた時点で、議長は質問を止めることができます。 - 議題の範囲からの逸脱
議員の発言は、その時の議題の範囲内で行われなければなりません。質問が長くなるうちに、本題からかけ離れた内容になったり、同じ趣旨の繰り返しになったりすることがあります。このような「議題外の発言」や「重複した発言」は、議長が制止する正当な理由となります。 - 議事整理権・議場秩序維持権
議長は、議事全体を整理し、議場の秩序を保つ責任と権限(議事整理権・議場秩序維持権)を持っています。一人の議員の長すぎる質問によって、他の議員の発言機会が奪われたり、予定された議事日程が大幅に遅滞したりすることは、議会全体の機能不全につながります。議長は、これを防ぐために発言を制止する権限を行使します。
どのようにして止めるのか?
議長が実際に質問を止める場合、いきなり「やめなさい」と高圧的に制止することは稀で、通常は段階的な手順を踏みます。
- ステップ1:事前の注意喚起(イエローカード)
持ち時間が残り少なくなってきた際や、話が冗長になり始めた際に、議長は次のような形で注意を促します。- 「〇〇議員、簡潔にお願いします」
- 「持ち時間が残り〇分となりましたので、質問をまとめてください」
- 「その点は、議題の範囲から外れているかと存じます」
- ステップ2:明確な制止命令(レッドカード)
注意喚起にもかかわらず、議員が発言を止めない場合、議長はより明確に制止を命じます。- 「〇〇議員、持ち時間を超過しました。発言を終わってください」
- 「ただいまの発言は、許可された時間を超えましたので、これを止めます」
- ステップ3:物理的な措置
それでも議員が演壇から降りない、発言を止めないといった場合には、議長の命令により、事務局がマイクの電源を切るといった物理的な措置が取られることもあります。 - ステップ4:懲罰
議長の発言制止命令に従わないことは、議会の秩序を著しく乱す行為です。このような場合、他の議員から懲罰動議が提出され、懲罰(戒告、陳謝、出席停止など)の対象となる可能性もあります。
議長のこの権限は、特定の議員の発言を封じ込めるためのものではなく、限られた時間の中で、全議員に公平な発言機会を保障し、町民の負託に応える質の高い審議を行うために不可欠なものです。円滑で活発な議会運営のために、全議員がルールを尊重し、協力することが求められます。
常任委員会
常任委員会の複数所属について
- 改正前 (Before):
地方自治法では、議員が所属できる常任委員会は一つに制限されていました。 - 改正後 (After):
平成18年の地方自治法改正(法律第53号)により、この所属制限が撤廃されました。
改正後の地方自治法第109条第2項では、「議員は、少なくとも一の常任委員となるものとする」と定められています。これは、「最低でも一つの委員会には所属しなければならない」という下限を定めたものであり、所属できる委員会の上限を定めたものではありません。 これにより、法律上は一人の議員が二つ以上の常任委員会を兼任することが可能となったのです。
なぜ法改正が行われたのか?
この改正の背景には、以下のような狙いがありました。
- 議会の裁量拡大: 各議会が、その地域の実情や議員定数に応じて、最も効果的な委員会構成を自主的に決定できるようにするためです。
- 小規模自治体への配慮: 議員定数が少ない市町村議会では、「一人一委員会」の原則を守ると、専門分野ごとに十分な数の常任委員会を設置することが困難な場合があります。複数所属を可能にすることで、少ない議員数でも委員会を細分化・専門化させ、審議を充実させることができます。
- 審議の活性化: 議員が複数の分野に関わることで、より幅広い視野から行政をチェックし、政策を議論できるという期待もあります。
「法律」と「条例」の関係(重要な注意点)
- 地方自治法: 国が定める、地方自治の基本的なルールです。この法律が「複数所属を禁止しない」という大きな枠組みを定めました。
- 委員会条例: 各議会が、自身の議会のルールとして定める条例です。常任委員会の数、定数、委員の選任方法、所属など、具体的な運営方法はこの条例で定めます。
つまり、平成18年の法改正を受けて、高畠町議会が高畠町の「委員会条例」を改正し、複数所属を認める規定を盛り込まない限り、 従来の「一人一委員会」の原則が維持されることになります。
全国の多くの議会では、慣例や委員会の同時開催が困難になるなどの運営上の理由から、条例で引き続き「議員は、一の常任委員となる」と定め、複数所属を認めていないのが実情です。
常任委員会数の制限と細分化した自治体の例
委員会数の制限
地方自治法上、常任委員会の数に上限や下限の定めはありません。 委員会の種類や数は、各地方自治体がその行政組織や人口、議会の規模などに応じて、条例で自由に設置することができます。
細分化した自治体の例
岩手県 矢巾町(やはばちょう)
- 人口: 約28,000人
- 常任委員会の構成(4委員会):
- 総務常任委員会
- 文教厚生常任委員会
- 産業建設常任委員会
- 予算決算常任委員会
なぜこれが「細分化」の例なのか
矢巾町の最大の特徴は、「予算決算常任委員会」を常設している点です。
多くの議会では、予算案や決算の審査はその都度「特別委員会」を設置して行います。しかし矢巾町では、これを常任委員会とすることで、単に予算・決算期だけでなく、年間を通じて町の財政状況を継続的かつ専門的に審査・監視する体制を構築しています。これは、議会の最も重要な権能の一つである行政監視機能、特に財政チェック機能を強化するという明確な意図を持った、優れた細分化の例と言えます。
北海道 芽室町(めむろちょう)
- 人口: 約18,000人
- 常任委員会の構成(4委員会):
- 総務常任委員会
- 文教厚生常任委員会
- 産業建設常任委員会
- 議会広報広聴常任委員会
なぜこれが「細分化」の例なのか
芽室町の特徴は、「議会広報広聴常任委員会」を常設している点です。
通常、議会の広報(議会だよりの発行など)は、議会運営委員会や広報特別委員会が担うことがほとんどです。これを常任委員会として独立させることで、「議会がどのような活動をしているのかを住民に分かりやすく伝える」「住民の声を議会活動にどう反映させるか」というテーマに、年間を通じて専門的に取り組む強い意志を示しています。これは、住民に開かれた議会、住民参加を推進するという観点から、議会の情報発信・傾聴機能を強化するための細分化と言えます。
まとめ
人口2〜3万人規模の町で常任委員会を細分化する目的は、単に数を増やすことではありません。
- 矢巾町のように「財政監視」を専門化する
- 芽室町のように「広報広聴(住民との連携)」を専門化する
常任委員会の所属変更
常任委員の任期は通常1年や2年などと条例で定められており、任期満了時に改選(選び直し)が行われますが、任期の途中でも所属を変更することは可能です。
所属変更が行われる主なケースは以下の通りです。
- 議員の辞任による変更: 所属していた議員が辞職した場合、その欠員を補充するために、別の議員が新たにその委員会に所属します。
- 会派内での交代: 会派の方針などにより、同じ会派に所属する議員同士で委員を交代することがあります。
- 議会の議決による変更: 議会の議決を経て、委員の所属を変更することも制度上可能です。
手続きとしては、多くの場合、議員が議長に委員の辞任を申し出て許可を得た後、議会で後任の委員を選任するという流れになります。
常任委員会での調査のための参考人招致
常任委員会は、その所管事務の調査のために、必要に応じて参考人を招致し、意見を聴くことができます。 これは、議会の重要な権能の一つです。
- 根拠: 地方自治法第109条に基づき、委員会は議会の議決により、特定の事件について調査を行うことができます。 さらに、地方自治法第100条には、議会が選挙人その他の関係者の出頭や証言を請求できると定められており、この権限が委員会にも準用されます。
- 目的: 議案の審査や調査を行うにあたり、専門的な知見を持つ学識経験者、実務家、当事者などから直接意見を聴取し、より深く多角的な審議を行うことを目的とします。
- 手続き:
- 委員会内で参考人招致の必要性が議論され、招致する人物や聴取する内容について合意が形成されます。
- 委員会の決定として、議長に参考人招致の申し出を行います。
- 議長が日時や場所などを調整した上で、参考人に通知し、出頭を求めます。
- 効力: 参考人の招致は、あくまで「任意」での協力を求めるものです。正当な理由なく出頭を拒否したり、虚偽の証言をしたりした場合に罰則が科される「証人喚問」(百条委員会など)とは異なり、法的強制力はありません。しかし、公的な場での意見聴取であるため、多くの場合、協力が得られます。
常任委員会の任期を4年とすべきという議論
そのように言われる主な理由は、議会の専門性を飛躍的に高め、行政に対する監視能力や政策立案能力を強化するためです。以下に、その具体的な理由を解説します。
理由1:議員と委員会の「専門性」が格段に向上する
- 知識と経験の深い蓄積: 1年や2年という短い任期では、委員が所管する分野の法律、条例、過去の経緯、課題などをようやく理解し始めた頃に交代となってしまいます。これでは、いつまでも付け焼刃の知識で審議に臨むことになりかねません。4年間同じ委員会に所属することで、議員は特定の行政分野について腰を据えて学び、深い知識と経験を蓄積できます。
- 長期的な視点での審議が可能に: 自治体の課題の多くは、単年度で解決できるものではありません。例えば、都市計画や福祉政策、産業振興などは5年、10年といった長期的な視点が必要です。委員が4年間固定されることで、過去の審議の経緯を踏まえ、「あの時の議論はどうなったか」「計画は進んでいるか」といった継続的な追跡・監視が可能となり、審議に深みが増します。
理由2:行政に対する「チェック機能」と「政策立案能力」が強化される
- 行政との情報格差の是正: 現代の行政は非常に複雑・専門化しており、専業の職員である行政側と、議員との間には圧倒的な情報量や専門知識の差(情報の非対称性)があります。この差を埋めなければ、行政側の提案をただ追認するだけの「お飾り議会」になりかねません。議員が4年間専門性を磨くことで、行政と対等に議論し、提案の問題点を鋭く指摘したり、より良い対案を提示したりする能力が向上します。
- 「政策通」議員の育成: 4年間同じ分野を深く掘り下げることで、その分野における「政策通」と言える議員が育ちます。こうした議員の存在は、議会全体の議論の質を高め、行政側にも良い緊張感を与えることにつながります。
- 委員会としての政策立案: メンバーが固定されることで、委員会としての一体感が生まれ、単なる議案審査だけでなく、「この分野の課題を解決するために、委員会として条例を作ろう」といった、より積極的な政策立案活動にも取り組みやすくなります。
理由3:「癒着」のリスクよりも「専門性不足」のリスクの方が大きいという考え方
かつては、同じ議員が長く同じ委員会にいると、担当する行政部署との間で馴れ合いや癒着が生まれる、いわゆる「族議員」化する懸念が指摘され、頻繁な交代が良しとされてきました。
しかし近年では、その懸念以上に、議員の専門性不足によって議会のチェック機能が形骸化してしまうことのリスクの方がはるかに大きい、と考える議会が増えています。情報公開が進み、市民の目も厳しくなっている現代においては、癒着は起こりにくくなっており、むしろ行政と対等に渡り合えるだけの専門性を身につけることのメリットが重視されるようになっています。
まとめ
常任委員会の任期を議員任期と同じ4年にすることは、
「短期交代による弊害(専門性不足、審議の深化不足)」をなくし、
「長期在任によるメリット(専門性の向上、チェック機能の強化、政策立案能力の向上)」を最大化する
ための、極めて有効な議会改革の手法の一つとされています。
これにより、議会が単なる「議決機関」から、行政を厳しくチェックし、自らも政策を立案・提言する「政策決定機関」へと脱皮することを目指すものです。
議会事務局の任命権
議会事務局の職員の任命権は、議長にあります。
以下に、その根拠と具体的な運用について詳しく解説します。
任命権の法的根拠
議会事務局職員の任命権が議長にあることは、地方自治法第138条第4項に明確に規定されています。
地方自治法 第百三十八条1 都道府県及び市町村の議会に事務局を置く。2 (略)3 (略)4 事務局長、書記その他の職員は、議長がこれを任免する。
この条文により、事務局のトップである事務局長から書記、その他の職員に至るまで、全ての職員の任命・免職を行う権限(任命権)は、法的に議長に属することが定められています。
なぜ議長に任命権があるのか?(重要な原則)
この規定は、地方自治における「二元代表制」と「三権分立」の考え方に基づいています。
- 議会の独立性の確保: 議会は、首長(町長)と並ぶ住民の代表機関であり、行政(執行機関)を監視・チェックする重要な役割を担っています。もし、議会事務局の職員の任命権が町長にあれば、職員は町長の人事権の下に置かれることになり、議会が町長の影響を強く受けてしまう恐れがあります。これでは、議会が独立した立場で十分なチェック機能を果たすことができません。
- 議会人事権の確立: 議会が自らの補佐組織である事務局の職員を、自らの責任者(議長)の名で任命することは、議会の自律性を象徴するものです。これを「議会人事権」と呼び、議会が執行機関から独立して活動するための大前提となります。
実際の運用について(理論と実務)
法律上、任命権者は議長ですが、実際の運用は少し異なります。
- 職員の身分: 議会事務局の職員も、町長部局(役場)の職員と同じ「町の職員(地方公務員)」です。採用試験や給与体系、福利厚生などは、町の職員として一体的に運用されています。
- 人事異動の実務: このため、人事異動の際には、町長部局の総務課などが中心となって作成した人事異動案の中に、議会事務局の職員の異動も含まれるのが一般的です。
- 議長の「同意」と「任命」: 町長側から示された人事案(例えば「Aさんを事務局長に」という案)について、議長がそれに同意し、議長の名前で正式な「辞令」を交付することで、任命行為が完了します。
- 形式的には「内申・承認」: 実務上は、町長が人事案を議長に「内申(こういう人事案でいかがでしょうかと示すこと)」し、議長がそれを「承認」して任命するという形がとられます。
- 議長の拒否権: もちろん、議長は任命権者ですから、町長が示した人事案に納得がいかない場合は、それを拒否することも法的には可能です。しかし、円滑な行政・議会運営のため、事前に十分な調整が行われるのが通例です。
まとめ
- 法律上の任命権者: 議長
- 任命権の根拠: 地方自治法第138条
- その趣旨: 議会の独立性とチェック機能を確保するため
- 実務上の運用: 町長部局からの人事案に基づき、議長が同意の上で正式に任命する
議長の任命権は、単なる形式的なものではなく、議会の独立性を支えるための重要な権限であるとご理解いただければと存じます。
議会の権限
自治体の意思を決定する(決める・選ぶ)
まずは、自治体としての最終決定を行う権限です。
1. 議決権
- 内容: 条例や予算など、最も重要なことを決める権限。(※先ほど説明したものです)
2. 選挙権
- 内容: 市民が投票する選挙ではなく、「議会の中で人を選ぶ」権限です。
- 具体例: 議長や副議長、選挙管理委員会の委員などを議員の中から選挙で選びます。
3. 同意権
- 内容: 市長が選んだ重要な人事に対して、「その人でOKです」と同意を与える権限です。
- 具体例: 「副市長」や「教育委員」を任命する際、市長は勝手に決められず、議会の同意が必要です。
4. 承認権
- 内容: 緊急時などに市長がとりあえず独断で決めたこと(専決処分)を、事後的に「それでよかった」と認める権限です。
- ポイント: もし議会が承認しなくても決定自体は無効になりませんが、市長の政治的責任が問われます。
首長やお金の動きを監視する(チェックする)
首長が不正をしていないか、お金を正しく使っているかを調べる権限です。強さのレベル順に並べるとわかりやすいです。
5. 検査権
- 内容: 市の仕事や会計の書類を「見せてください」と請求してチェックする権限です。この検査はあくまで書面による検査となるので、実地検査は許されない。
6. 監査請求権
- 内容: お金の使い道について、プロである「監査委員」に対して「詳しく調べて報告してください」と頼む権限です。
- イメージ: 専門家に調査を依頼するイメージです。
7. 調査権
- 「100条調査権」
- 内容: 非常に強力な調査権限です。関係者を議会に呼び出して証言させたり、記録を提出させたりできます。
- ポイント: 嘘の証言をすると刑罰が科されるほど強力で、大きな不祥事があった時などに使われます。
- この権限は議会に与えられたもので、議員は委員会には権利はない。
- 専門的知識の活用
- 議会に参考人や鑑定人を招聘して専門家の意見を聞く。または専門家に調査、分析を委託する。
外部に声を届ける(市民・国へ)
自分たちの自治体のことだけでなく、国に対して意見を言ったり、市民の声を受け止めたりします。
8. 意見書提出権
- 内容: 議会の総意として、国(内閣や国会)に「こうしてほしい」という意見書を送る権限です。
- 具体例: 「学校給食を無料にする法律を作ってください」といった意見書を国に送ります。
9. 請願・陳情の受理権
- 内容: 市民から出された「お願い(請願・陳情)」を受け取り、審査する権限です。
- ポイント: 議会で「採択(その通りだ)」となれば、市長や関係機関にその実現を求めます。
議会自身を整える(内部のルール)
議会という組織を維持・管理するための権限です。
10. 規則制定権
- 内容: 議会の会議の進め方や内部のルール(会議規則)を自分たちで決める権限です。市長の干渉を受けません。
11. 懲罰権
- 内容: ルールを破ったり、品位を傷つけたりした議員に対して、ペナルティ(懲罰)を与える権限です。
- 具体例: 陳謝(謝らせる)、出席停止、最も重い場合は除名(クビ)などがあります。
12. 報告受理権
- 内容: 市長などから、事務の報告や書類を受け取る権限です。
13. 意見決定権
- 内容: 法的な効力はありませんが、「議会としての政治的な意思(決議)」を表明する権限です。
- 具体例: 「〇〇国によるミサイル発射に抗議する決議」や「交通安全都市宣言決議」などを行うことです。
議決が必要となる事項
市長や知事(執行機関)が独断で決めることができず、必ず議会の許可(議決)を得なければならない事項です。大きく分けて以下の4つのカテゴリーがあります。
1. 地域のルールを決める(条例)
もっとも基本的で重要な仕事です。金額に関わらず、市民全員に関わるルールは必ず議会で決めます。
- 内容:
- 条例を新しく作る、中身を変える、または廃止する。
- 具体例:
- 「路上喫煙禁止条例」を作って、違反者に罰金を科すことにする。
- 「市税条例」を改正して、市民税の減税・増税を決める。
- 「子どもの医療費助成条例」を作って、高校生までの医療費を無料にする。
- 条例改定が必要な事項例:
- 「公民館の使用料: 老朽化に伴う維持費増大のため、「1時間200円」を「1時間300円」に値上げする。
- 個人情報保護法: 国の法律が大きく改正されたため、町の「個人情報保護条例」の定義や手続きを新しい法律に合わせて書き換える。
- 「こども医療費: これまで「中学生まで無料」と条例に書いてあったのを、「18歳まで無料」に書き換える。
2. お金の使い道とチェック(予算・決算)
市民から預かった税金をどう使うか、正しく使ったかを決めます。
- 内容:
- 予算を決める(来年度の収入と支出の計画)。
- 決算を認定する(昨年度のお金の使い方が正しかったか認める)。
- 具体例:
- 「来年度、新しい図書館を建てるために10億円使う」という計画(予算)を承認する。
- 「昨年度の予算が、計画通り正しく使われたか」を監査委員の意見などを参考にチェックして認める(決算)。
3. 大きな契約・財産に関すること
高額な取引や重要な財産の移動は、不正を防ぐために議会のチェックが入ります。ここには法律や条例で定められた具体的な数字の基準があります。
※以下は一般的な市町村の基準(地方自治法施行令など)です。
議会はこの議決において、可決、または否決はできるが、修正議決はできない。なお議決が必要な契約について、議決を行わなかった場合は、その契約は無効となる。
- 内容と基準:
- ① 工事や製造の請負契約:
- 基準: 予定価格 5,000万円以上(※都道府県・政令指定都市は1億5,000万円以上)
- ② 財産(不動産など)の取得・処分:
- 基準(金額): 予定価格 700万円以上(多くの自治体は条例で2,000万円としています)
- 基準(面積): 土地の広さ 5,000平方メートル以上(※都道府県・政令指定都市は2万平方メートル以上)
- ③ 財産の交換・譲与:
- 土地や建物を交換したり、適正な対価なく譲渡・貸付する場合。
- ① 工事や製造の請負契約:
- 具体例:
- 工事契約: 老朽化した市民センターの改修工事を、建設業者と6,000万円で契約する(5,000万円を超えているため議決が必要)。
- 財産の取得: 新しい公園を作るために、民間の土地(6,000㎡)を3,000万円で購入する(面積・金額ともに基準を超えているため議決が必要)。
- 財産の処分: 使わなくなった古い小学校の跡地を、民間の会社に売却する。
4. トラブル・裁判に関すること
法的なトラブルや、権利・義務の変更には慎重な判断が求められます。
- 内容:
- 訴えの提起: 自治体が原告となって誰かを訴えるとき。
- 和解・調停: 裁判中に話し合いで解決(和解)するとき。
- 損害賠償: 自治体が誰かに賠償金を支払う額を決めるとき。
- 権利の放棄: 自治体が持っている権利(借金の取り立てなど)を諦めるとき。
- 具体例:
- 訴えの提起: 市営住宅の家賃を何年も滞納している住人に対し、部屋の明け渡しを求めて裁判を起こす。
- 損害賠償: 市の公用車(ゴミ収集車など)が市民の車にぶつかる事故を起こし、修理代として30万円を支払うことを決める。(※金額の大小に関わらず賠償額の決定は原則議決事項ですが、少額の場合は市長が決めて良いとする条例がある場合もあります)
- 権利の放棄: 災害などで生活が困窮し、どうしても回収できなくなった貸付金を「もう返さなくていい」と免除する。
法律上の15項目リスト
地方自治法第96条第1項に列挙されている事項です。5番と8番に数字の基準が入ります。
- 条例の制定・改廃
- 予算の定めること
- 決算の認定
- 地方税以外の分担金・使用料・手数料などの徴収(※条例で定めていない場合)
- 契約の締結(予定価格5,000万円以上の工事など、条例で定めるもの)
- 財産の交換、出資、支払い手段としての使用、適正な対価なく譲渡・貸付すること
- 不動産の信託
- 財産の取得・処分(予定価格700万円以上または5,000㎡以上など、条例で定めるもの)
- 権利の放棄(借金の免除など)
- 訴えの提起(裁判を起こすこと)
- 和解・調停(裁判上の仲直りなど)
- 損害賠償の額の決定(いくら払うか決める)
- 公の施設を区域外に設置すること(例:隣の市に火葬場を共同で作る場合など)
- その他、法律・政令で定められたもの
- 議員を派遣する事
- (※上記以外にも、議会が特に必要と認めて条例で「これも議決が必要」と決めたもの ※第96条第2項による追加議決事件)
議会が報告を受ける事項
これらは、議会の許可(議決)を求めるものではありませんが、首長(町長など)や教育委員会などの仕事ぶりを監視し、町の状況を把握するために必ず報告を受けなければならない事項です。
1. 教育に関する事務の点検・評価報告【追加事項】
教育委員会の活動が適切かどうかを確認する重要な報告です。
- 根拠: 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第26条
- 内容:
教育委員会が、自分たちの権限に属する事務(学校教育や社会教育など)の管理や執行状況について、毎年1回、点検および評価を行います。その報告書を首長に提出し、首長がそれを議会に報告します。 - チェックポイント:
- 「学力向上の施策は進んでいるか」
- 「いじめ対策は機能しているか」
- 外部の有識者の知見を活用しているかどうかも重要です。
2. 専決処分の報告
議会があらかじめ「軽微なことなら首長が決めていいですよ」と任せておいた事項について、首長が処理した後に報告するものです。もっとも頻繁に行われる報告です。
- 内容:
- あらかじめ議決で指定した金額以下の契約や損害賠償など。
- 法令の改正に伴う、条例の条文ズレなどの形式的な修正。
- 具体例:
- 公用車が起こした軽い接触事故で、相手方に10万円の賠償金を支払って示談したことの報告。
- 町営住宅の家賃滞納者に対し、建物明け渡しを求める裁判(定型的なもの)を起こした報告。
3. お金・財政に関する報告
住民の税金である町の財政がどうなっているか、定期的に報告を受けます。
- 財政状況の公表:
- 年2回以上、予算の執行状況(いくら使ったか)や借金の現在高など、自治体全体の財政状況が報告されます。
- 予算の繰越し(繰越明許費など):
- 年度内に工事が終わらなかった等の理由で、使いきれなかった予算を翌年度に回した(繰り越した)ことの報告。
- 継続費の精算報告:
- 数年かけて行う大規模工事(継続費)がすべて完了した際に行う、最終的な決算報告。
4. 監査の結果報告
町のお金の使い方が正しかったかどうか、専門家である監査委員のチェック結果を聞きます。
- 定期監査・随時監査の結果:
- 監査委員から提出される監査報告書の報告。事務処理のミスや改善点が指摘されます。
- 現金出納検査の結果:
- 毎月の現金の出入りが帳簿通り合っているか確認した検査結果(例月現金出納検査)。
5. 関係法人(外郭団体)の経営状況
自治体が出資している団体が、赤字になっていないかなどをチェックします。
- 法人の経営状況:
- 自治体がお金を出している「土地開発公社」や「社会福祉協議会」などの団体の決算や事業内容の報告。
- これの経営が悪化すると、将来的に町の財政負担になる可能性があるため重要です。
議会の運営
会議を成立させる・決めるための原則
1. 議事公開の原則
議会の会議は、住民にすべて見せなければならないというルールです。
- 内容:
誰でも会議を傍聴(見学)でき、議事録や資料も公表されます。①傍聴の自由、②報道の自由、③会議録の公表。 - 例外:
個人のプライバシーに関わる場合など、出席議員の3分の2以上の議決があれば「秘密会」にすることができますが、基本は公開です。
2. 定足数の原則
一定以上の人数の議員が出席しないと、会議を開いたり決議したりできないというルールです。
- 内容:
原則として、議員定数の半数以上の出席が必要です。
これが満たされない場合、議長は会議を休憩させるか、流会(中止)にしなければなりません。
3. 過半数議決の原則
物事を決める時は、出席している議員の過半数の賛成が必要というルールです。
- 内容:
「半数」ではなく「過半数(半分より多い数)」である点に注意が必要です。
(例:出席10人の場合、5人では過半数に達しておらず、6人以上の賛成が必要)
4. 議員平等の原則
すべての議員は、身分や権利において対等であるというルールです。
- 内容:
当選回数、年齢、役職、性別にかかわらず、全員が「1人1票」の議決権を持ち、自由に発言する権利も平等に保障されます。
5. 一議事一議題の原則
一つの議題(テーマ)の審議・採決が終わってから、次の議題に移るというルールです。
- 内容:
複数の問題を同時に話し合うと議論が混乱するため、一つずつ順番に処理します。
関連する議題を一括して審議する場合もありますが、その場合でも採決(決定)は原則として一つずつ行います。
6. 一事不再議の原則
一度議会で決まったこと(可決または否決)は、同じ会期中には二度と審議しないというルールです。
- 内容:
「さっき否決されたけど、もう一回提案しよう」と繰り返すと会議が終わらなくなるため、その会期中は蒸し返しを禁止します。
7. 会期不継続の原則
会期(議会が開いている期間)中に結論が出なかった案件は、会期終了とともに廃案になる(消滅する)というルールです。
- 内容:
次の会期には自動的に引き継がれません。
ただし、議決によって「閉会中の継続審査」と決めた場合のみ、例外として次の会期へ持ち越すことができます。
8. 現状維持の原則
変更を求める案が過半数に達しない場合、元の状態(現状)が維持されるという考え方です。
- 内容:
新しい条例案などが「否決」された場合、何も変わらない(現状維持)ことになります。
また、賛成と反対が同数になり、議長が決定権を行使する場合、議長は中立を守るために「現状維持(=否決、または変化させない方)」を選ぶべきだ、という運用上の考え方としても使われます。
9. 委員会審議独立の原則
委員会に任せた(付託した)案件について、委員会が審査している間は、本会議や他の委員会は手出しをしてはいけないというルールです。
- 内容:
委員会での専門的な審査を尊重するため、委員会が結論を出して報告するまでは、本会議でいきなり採決したり、議論に介入したりすることはできません。
10. 公正指導の原則
議長(または委員長)は、特定の党派や個人の利益に偏らず、公平に会議を運営しなければならないというルールです。
議会運営
議案の発案権
1. 首長(町長)の発案権
首長は、町の行政運営の責任者として、非常に広い範囲の発案権を持っています。
- 単独で提出可能:
議員のような「賛成者」は不要で、首長自身の判断で提出できます。 - 【独占権】予算の提出:
これが最も重要です。予算(お金の使い道)を提案できるのは首長だけです。議員は予算を提案することはできません。
※ただし、提出された予算に対する「修正案」であれば、議員も提出可能です。 - 主な提出議案:
- 予算
- 条例(組織、給与、税金、手数料など行政運営に関わるもの)
- 契約の締結
- 人事案件(副町長や教育委員の選任同意など)
2. 議員の発案権
議員も議案を提出できますが(地方自治法第112条)、乱発を防ぐためにハードルが設けられています。
- 賛成者が必要:
議員が議案を出すには、自分一人では出せません。必ず他の議員の賛同が必要です。- 必要な人数: 議員定数の12分の1以上の賛成者
- (例:定数12人の町議会なら、自分以外に1人以上の賛成者が必要)
- 出せる議案:
- 条例: 議員発議による条例(政策条例など)。
※以前はお金のかかる条例は出せませんでしたが、現在は財源の見通しがあれば提出可能です。 - 意見書: 国などに意見を届ける案。
- 決議: 議会の意思を表明する案。
- 修正動議: 首長が出した議案(予算や条例)を修正する案。
- 条例: 議員発議による条例(政策条例など)。
- 出せない議案:
- 予算: 前述の通り、予算そのものを作る権限はありません。
- 人事: 副町長などの人事を選任する案は出せません。
3. 委員会による発案権
議員個人ではなく、「常任委員会」や「議会運営委員会」という組織として、議案を提出することも可能です。
- 条件:
委員会の審査を経て、委員会としての結論が出たもの。 - メリット:
すでに委員会で議論されているため、本会議での説明などがスムーズに進みます。
※この場合、賛成者(12分の1)の要件は適用されず、委員会の決定として提出されます。
議案審議の流れ
①上程
- 上程とは議案を会議にかけること
- 議長が「これから、この議案を議題にします」と宣言します。これで正式に会議のテーブルに乗ります。
朗読
- 議案は朗読しない事を原則とし、議長が必要であると認めた場合のみ朗読させる事となっている。
②提案理由の説明
- 提出者(主に首長)が、「なぜこの議案が必要なのか」「どのような内容なのか」を説明します。
- 例:「老朽化した橋を直すため、〇〇万円の工事契約を結びたいです」
- 議案の内容が極めて簡単で説明を要しない場合は、議会の議決で説明を省略することができる。
- 議案の提出者が議員まはた委員会の場合は「趣旨説明」と呼び、当局が提案者となる場合は「提案理由の説明」と呼ぶこととなっている。
③質疑
- 議員が提出者に対して質問をします。
- 重要: ここでの質問は、あくまで「内容を理解するための確認」です。自分の賛成・反対の意見を言ってはいけません(それは後の「討論」で言います)。
- 良い例:「この工事の完了予定日はいつですか?」
- 悪い例:「私はこの工事は無駄だと思います!」(これはダメ)
- 委員会に付託が予定されている議案に対する本会議での質疑では、あくまで総括的大綱的な質疑にとどめて、詳細は委員会で行うべきである。
④委員会付託
- 全員参加の本会議だけで細かい審査をするのは大変なので、担当の「委員会」に審査を任せます。
- 議長が「この議案は、建設常任委員会に付託します(送ります)」と宣言します。
- ※簡単な議案の場合は、委員会審査を省略してすぐに採決することもあります。
⑤委員会審査
- 場所: 委員会室
- ここが審議のメインです。少人数の議員と担当職員(課長など)が膝を突き合わせて、詳細に審査します。
- 詳細な説明: 担当課長から細かい資料の説明を受けます。
- 質疑: 納得いくまで何度も質問できます。
- 討論: 委員同士で賛成・反対の意見を述べ合います。
- 採決: まず委員会としての結論(可決すべきか、否決すべきか)を決めます。
⑥委員長報告
- 再び全員が集まる本会議に戻ります。
- 委員会の代表者(委員長)が、「私たちの委員会で審査した結果、この議案は『可決』と決まりました(あるいは否決)」と、審査の経過と結果を全議員に報告します。
委員長の報告に対する質疑は、審査の過程と結果に対する質疑にとどめ、付託された議案に対し、提出者にすることはできない。
⑦討論
- 最終的な採決の前に、議員が公の場で「自分の態度(賛成か反対か)」を表明し、他の議員に「賛同してください」と訴えます。
- 反対討論:「私は〇〇の理由で、この議案には反対です」
- 賛成討論:「私は〇〇の点から、この議案は必要だと考え、賛成します」
- 簡易な議案で特に反対者がいないような場合でも討論を省くことはできない。
質疑: 「分からないことを聞くこと(事実確認)」。意見は言えません。
討論: 「賛成・反対の意見を言うこと(意見表明)」。人への質問はできません。
⑧表決
- 審議のゴールです。議長が「賛成の諸君の起立を求めます」と言って多数決をとります。
- 結果:
- 可決(成立): 議案が認められ、実行に移されます(条例なら制定、予算なら執行開始)。
- 否決: 議案は認められず、廃案になります。
- 議長は基本的に表決権をもたない。しかし可否同数となった場合は、裁決権を持つ。つまり議長の可否で決まる。また議長が議員として討論を行った場合は、表決権が生まれる。(討論した場合は議長席に戻れなくなる)
- 議員は表決を修正することはできない。
表決方法について
1. 起立表決(原則的な方法)
日本の地方議会において、最も基本的で原則とされている方法です。
- 手順:
- 議長が「本案に賛成の議員の起立を求めます」と述べます。
- 賛成する議員がその場に立ち上がります。
- 議長がその数を数え(または見て判断し)、「起立多数(または全員)と認めます。よって本案は可決されました」と宣言します。
- 特徴:
誰が賛成で誰が反対かが明確になります。
※最近導入が進んでいる「押しボタン式」の投票も、法的にはこの「起立表決」の一種(意志の公然表示)として扱われることが一般的です。
2. 異議なし採決(簡易的な方法)
全会一致(全員賛成)であることが明らかな場合や、簡単な案件について、時間を短縮するために行われる方法です。もし事前に反対者が存在すると議長が把握している場合は、この表決方法は採用すべきではない。
- 手順:
- 議長が「本案は、原案のとおり決することにご異議ありませんか?」と議場に諮ります。
- 議員たちが「異議なし!」と声を上げます。
- 議長が「ご異議なしと認めます。よって本案は原案のとおり可決されました」と宣言します。
- 特徴:
もし一人でも「異議あり!」と言った場合は、即座に起立表決などに切り替えなければなりません。
3. 記名投票(厳格な方法・オープン)
非常に重要な案件などで、誰がどう判断したかを記録に残す必要がある場合に行われます。
- 手順:
議員が演壇に行き、投票箱に票を投じます。
投票用紙には、「自分の氏名」と「賛成・反対」を書きます。 - 特徴:
後で「誰がどちらに投票したか」が完全に公開されます。歴史に残るような重要な議案で行われることがあります。
※通常、議員の5分の1以上の要求などがあれば、この方法に変更されます。 - 白票の取り扱い:
- 白票は否とみなされる
4. 無記名投票(厳格な方法・秘密)
人事案件や、議員の個人的なプライバシーに関わる懲罰、あるいは政治的な圧力から離れて自由に投票させたい場合などに使われます。
- 手順:
投票箱を使いますが、投票用紙には「賛成・反対」のみを書き、自分の名前は書きません。 - 特徴:
誰がどう投票したかは永遠に分かりません(秘密投票)。
※解職請求や不信任決議など、特定の状況では必須となることもあります。
5. 挙手表決(委員会での標準)
本会議ではなく、委員会でよく使われる方法です。
- 手順:
議長(委員長)が「賛成の委員の挙手を求めます」と言い、議員が手を挙げます。 - 特徴:
起立よりも動作が簡単です。少人数の委員会ではこれが主流ですが、小さな町村議会の本会議でも、規則で定めていれば挙手で行うことがあります。
まとめ:優先順位と使い分け
実務上の使い分けは以下のイメージです。
- 異議なし採決:
全会一致で揉めていない案件は、これでスピーディーに進めます(最も多い)。 - 起立表決(またはボタン):
反対者がいる場合や、重要議案でしっかり数を数える場合の基本スタイルです。 - 投票(記名・無記名):
議会が紛糾している時や、特に慎重を期す場合、または人事などで秘密にしたい場合に行う「特別な方法」です。
発言
1. 発言の自由(なぜ保障されているのか)
議員が首長(町長など)の顔色を伺ったり、後で訴えられることを恐れたりして、言うべきことを言えなくなっては困ります。そのため、議会内では最大限の自由が認められています。
- 法的な根拠:
地方自治法第132条には、「普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない」と書かれています。
これは裏を返せば、「無礼な言葉や個人のプライバシー侵害でなければ、何を言っても良い」という強力な自由を保障していると解釈されます。 - 外での責任(免責の考え方):
国会議員には憲法で明確な「免責特権(議会での発言について、外で責任を問われない)」がありますが、地方議員には法律上の明文の免責規定はありません。
しかし、最高裁の判例などにより、「正当な職務としての発言であれば、原則として個人の損害賠償責任などは問われない」と解されています。(※ただし、職務と無関係な誹謗中傷など、悪質な場合は訴えられる可能性があります)
2. 発言の制限(やってはいけないこと)
1. 議長の許可を受けること(発言許可の原則)
これが全ての基本です。議長の許可(指名)なしに、勝手に喋り出してはいけません。
- ルール: 挙手をして「議長」または「〇番」と呼び、議長から「〇番、〇〇議員」と指名されて初めて発言権が発生します。
- 違反例: 自席でブツブツと不規則発言(ヤジ)を飛ばすこと。
2. 議題外の発言の禁止(議題遵守の原則)
今話し合っているテーマ(議題)と関係のないことを話してはいけません。
- 理由: 会議が脱線して終わらなくなるのを防ぐためです。
- 違反例: 「道路工事の契約」の議案を審議しているのに、突然「教育問題」について熱く語り出すこと。
3. 質疑と討論の区別(性質の遵守)
先ほど説明した「質疑」と「討論」を混同してはいけません。
- 質疑の時間: 「自分の意見」を言ってはいけません(事実確認のみ)。
- 討論の時間: 「人への質問」をしてはいけません(意見表明のみ)。
- 違反例: 質疑の時間に「私はこの案には反対だ!」と演説を始めること。
4. 無礼の言葉の使用禁止(法律上の制限)
地方自治法第132条に基づく制限です。
- 内容: 議会の品位を傷つけるような、汚い言葉や侮辱的な言葉を使ってはいけません。
- 違反例: 他の議員や首長に対して「嘘つき」「恥を知れ」などと罵倒すること。
5. 私生活にわたる言論の禁止(法律上の制限)
こちらも地方自治法第132条に基づく制限です。
- 内容: 議題と無関係に、個人のプライバシーを暴露してはいけません。
- 違反例: 「町長は家庭内で〇〇というトラブルがあるらしい」といった噂話をすること。
6. 他人の発言に対する批評の禁止(質疑中の制限)
「質疑」を行っている最中は、提案者(首長など)に対して質問するものであり、他の議員の発言にチャチャを入れてはいけません。
- 内容: 質疑の相手はあくまで「提案者」です。同僚議員の質問内容を批判したり、評価したりしてはいけません。
- 違反例: A議員の質問が終わった後に、B議員が立って「さっきのA議員の質問は勉強不足だ」と発言すること。
7. 重複発言の禁止
同じことを何度も繰り返し言ってはいけません。
- 内容: 他の議員がすでに聞いたことや、自分がさっき言ったことをダラダラと繰り返すのは、議事進行の妨げになります。
- 違反例: 答弁(回答)を得ているのに、納得がいかないからといって全く同じ質問を5回繰り返すこと。
8. 発言回数・時間の制限
一人の議員が時間を独占しないためのルールです。
- 内容: 多くの自治体の会議規則で、「質疑は同一議題について3回まで」や「1回の発言時間は〇分以内」と決められています。
- 違反例: 持ち時間を大幅にオーバーして演説を続けること。
9. 発言の場所の制限(演壇発言の原則)
原則として、正式な発言は指定された場所(演壇)で行わなければなりません。
- 内容: 登壇して発言するのが基本です。ただし、簡単な質疑など、議長が許可した場合は自席での発言も認められます。
- 違反例: 許可を得ていないのに、演壇に行かず自席から勝手に大声で発言すること。
3. 発言の責任(ルールを破った時のペナルティ)
もし禁止事項を破って不適切な発言をした場合、議員は議会内部で厳しい責任を負わされます。
① 議長による措置(その場の対応)
議長には「秩序維持権」があります。不適切な発言があると、議長は以下の命令を出します。
- 発言の禁止: 「今の発言はやめなさい」と止める。
- 発言の取り消し: 「今の発言は議事録から削除します」と命じる。
② 懲罰(事後の処分)
議長の注意に従わなかったり、あまりに悪質な発言をした場合は、議会の議決によって懲罰(ペナルティ)が科されます(地方自治法第135条)。
重い順に以下の4種類があります。
- 除名: 議員の身分を失わせる(クビにする)。※最も重く、出席議員の3/4以上の同意が必要。
- 出席停止: 一定期間、議会への出入りを禁止する。
- 陳謝: 公の場で謝罪文を朗読させる。
- 戒告: 議長が厳重注意を行う。
まとめ
- 自由: 住民のために、恐れずに議論を戦わせる権利。
- 責任: 品位を守り、ルール(無礼・プライバシー侵害の禁止)を守る義務。
発言の種類
1. 質疑
議題となっている案件(議案)について、提出者(首長など)に疑問点を問い質す発言です。
- 目的: 議案の内容を理解し、賛成・反対の判断材料を得るため。
- ルール: 「自分の意見」を述べることはできません。あくまで「事実確認」です。
- 例:「この工事の契約金額の根拠は何ですか?」
2. 一般質問
議題とは関係なく、自治体の行政全般について首長の方針や政治姿勢を問う発言です。
- 目的: 住民の声を届け、政策の提案や行政の監視を行うため。
- ルール: 議案の審議とは切り離して行われます(通常、会期中の数日間が充てられます)。
- 例:「少子化対策として、どのようなビジョンを持っていますか?」
3. 討論
採決の直前に、議題となっている案件について「賛成」か「反対」かの意見を表明する発言です。討論は一人1回しかできない。
- 目的: 自分の態度を明らかにし、他の議員に賛同を求めるため。
- ルール: 反対討論→賛成討論の順に行います。「人への質問」はできません。
- 例:「私は財政負担が大きすぎるという理由で、本案に反対します」
4. 動議
会議の進行や手続きを変更するために、議員からなされる「提案」の発言です。
- 目的: 修正案を出したり、休憩を求めたりするため。
- ルール: 原則として、自分以外に所定の人数(1人以上など)の賛成者(サポーター)が必要です。
- 例:「議事日程の変更を求める動議を提出します」
5. 提案理由の説明
議案を提出した際に、その趣旨や内容を説明する発言です。
- 主体: 通常は首長が行いますが、議員提出議案の場合は提出した議員が行います。
- 内容: 「なぜこの議案が必要なのか」を説明します。
6. 委員長報告
委員会に付託された案件について、委員会での審査の経過と結果を本会議で報告する発言です。
- 主体: 各委員会の委員長。
- 内容: 「建設常任委員会では、慎重に審査した結果、全会一致で可決すべきものと決しました」といった報告です。
7. 議事進行に関する発言
会議の進め方がルール違反ではないか指摘したり、議長の采配を求めたりする発言です。
- 特徴: 他の発言中であっても、割り込んで発言することができます(優先権があります)。
- 内容: いわゆる「議事進行!」の声です。
- 例:「ただ今の発言は議題と無関係であり、不適切です。議長において注意してください」
8. 一身上の弁明
自分の名誉が傷つけられたり、誤解を受けたりした時に、身の潔白を主張するための発言です。
- 条件: 懲罰の対象になった時や、会議等の発言で自分の名誉に関わる批判を受けた時などに、議長の許可を得て行います。
- 内容: 「先ほど私の過去の言動について批判がありましたが、事実は異なります…」という釈明です。
9. 選挙及び表決に関する発言
選挙や投票を行う際に、その方法や手続きについて意見を述べる発言です。
- タイミング: 選挙または表決の宣言が行われた後。
- 内容: 投票方法への異議や、投票立会人の選任についての意見などです。
発言の通告と許可
1. 発言の許可(当日の絶対ルール)
議会の会議における大原則です。「議長の許可なしに発言してはならない」というルールです。
- 原則:
議員が発言しようとする時は、まず議長の許可を得なければなりません(これを「発言許可の原則」といいます)。 - 手順:
- 議員が挙手し、「議長(または〇番)」と呼びます。
- 議長が「〇番、〇〇議員」と指名します(これが許可です)。
- 指名された議員は、演壇などで発言を始めます。
- 理由:
もし許可制でなければ、声の大きい人が勝手に喋り続けたり、複数の人が同時に叫んだりして、収拾がつかなくなるからです。 - 例外:
「議事進行」に関する発言など、緊急を要するものは、他の議員の発言中であっても発言を求めることができますが、それでも最終的に議長が指名しなければ喋れません。
異議あり、異議なしの発言と、同義に対する「賛成」は議長の許可は必要ない。
2. 発言の通告(事前の予約ルール)
会議の当日いきなり挙手するのではなく、あらかじめ「私はこの件について発言(質問)します」と議長に届け出る制度です。主に「一般質問」や「質疑」で採用されています。
- 仕組み:
議会が開かれる数日前(自治体によりますが、一般質問なら3日〜1週間前など)までに、「発言通告書」という書類を提出します。 - 書く内容:
- 件名(大きなテーマ。例:防災対策について)
- 要旨(具体的な質問内容。例:避難所の備蓄食料の数は足りているか)
- 効果:
通告書を出すと、議長が発言の順番を割り振ります(くじ引きや先着順などで決めます)。
3. なぜ「通告」が必要なのか?
「抜き打ちテスト」のほうが面白い議論になるのでは?と思われるかもしれませんが、議会においては「通告」が非常に重要視されます。理由は以下の3点です。
- 正確な答弁のため(反問権の確保)
首長や職員は、何千何万という事業を抱えています。いきなり「あの道路の交通量は何台か?」と聞かれても、その場で正確な数字は答えられません。
事前に通告があれば、担当課が資料を調べ、正確な数字や方針を準備できるため、建設的な議論になります。 - 論点の整理(効率化)
事前にテーマが分かっていれば、関連する資料を配付したり、答弁者を待機させたりできます。 - 住民への周知
事前に「誰が何を質問するか」を公表することで、住民が「自分の関心あるテーマだから傍聴に行こう」と判断できます。
4. 通告と許可の関係(当日の流れ)
通告制をとっている場合、当日の流れは以下のようになります。
- 事前: 議員が通告書を出し、議長が発言順序を決めて「発言順序表」を作ります。
- 当日: 議長の手元には順序表があります。
- 指名: 議長は、挙手を待つのではなく、順序表に従って「次に、〇番、〇〇議員の発言を許します」といきなり指名します。
- 発言: 指名された議員は登壇し、発言します。
※つまり、通告がある場合は「挙手して許可を求める」というプロセスが省略され、「議長からの指名=許可」という形になるのが一般的です。
まとめ
- 発言の通告:
事前に「何を質問するか」を知らせる「予約」システム。これがないと、深い議論ができず、発言の順番も回ってきません。 - 発言の許可:
会議の現場で、議長から発言権をもらう「合図」。たとえ通告していても、議長が名前を呼ぶまでは勝手に喋ってはいけません。
発言の順序
1. 基本的な順番(交互発言)
討論は、採決(多数決)の前に行う最後の意見表明です。以下の順序で交互に行われます。
- 反対者の発言(1人目)
- 賛成者の発言(1人目)
- 反対者の発言(2人目)
- 賛成者の発言(2人目)
(以降、交互に続く)
このように、「反対」からスタートし、その後は「賛成」→「反対」→「賛成」と交互に発言するのが原則です。
2. なぜ「反対」が先なのか?
これには明確な理由があります。
- 現状変更への立証責任:
通常、議案は提案者(首長など)が「必要だ」と思って出しており、ある程度の正当性があることが前提です。
それに対して「NO(否決)」を突きつける側は、現状を変えようとする側なので、「なぜダメなのか」を先に説明する必要があります。 - 反論の機会:
反対意見(問題点の指摘)を先に言わせることで、賛成者がそれに対する反論(不安の解消)を行いやすくし、議論を深めるためです。
※もし賛成が先に終わってしまうと、後から出た反対意見に対して誰も反論できず、不安が残ったまま採決になってしまいます。
3. 本会議における特殊なケース(委員長報告との関係)
本会議での討論は、直前に行われる「委員長報告」の結果によって、最初の発言者が変わる場合があります。
原則は「委員会の決定(報告)に反対する者が先に発言する」です。
- ケースA:委員会が「可決(賛成多数)」と報告した場合
- 委員会は「OK」と言っています。
- これに異議を唱えるのは「反対」の立場の人です。
- したがって、反対討論から始まります(通常パターン)。
- ケースB:委員会が「否決(反対多数)」と報告した場合
- 委員会は「NO」と言っています。
- これに異議を唱えるのは、原案を救いたい「賛成」の立場の人です。
- この場合に限り、例外的に賛成討論から始まることがあります。
- (※ただし、会議規則で単純に「反対者から始める」と固定している自治体も多いため、確認が必要です)
4. 発言者が偏った場合
常に賛成・反対が同人数とは限りません。
- 片方しかいない場合:
「反対討論」のみ、あるいは「賛成討論」のみで終わることもあります。 - 人数が違う場合:
「反対」→「賛成」→「反対」→「反対」のように、交互の原則が守れなくなった時点で、残りの人が続けて発言することになります。
まとめ
討論の順序の鉄則は以下の通りです。
- 反対者が一番手: まず文句や懸念がある人が口火を切る。
- 交互に発言: 議論のバランスをとる。
発言内容の制限
1. 他人の権利・品位を守るための制限(法律上の禁止)
地方自治法第132条で明確に禁止されている、最も重い制限です。
① 無礼の言葉の使用禁止
議会の品位を傷つけるような、汚い言葉や侮辱的な言葉を使ってはいけません。
- 具体例:
- 「嘘つき」「間抜け」「恥知らず」といった罵倒。
- 相手の人格を否定するような攻撃的な表現。
② 他人の私生活にわたる言論の禁止
議題と直接関係のない、個人のプライバシーを暴露してはいけません。
- 具体例:
- 「町長は離婚調停中らしい」といった家庭の事情。
- 「〇〇議員は借金トラブルがある」といった噂話。
- ※ただし、その私生活上の行為が、公職にある者としての適格性(不正疑惑など)に直結する場合は、許容されることもあります。
2. 会議を適正に進めるための制限(ルール上の禁止)
会議規則や先例によって定められている、進行上のルールです。
③ 議題外の発言の禁止
今話し合っているテーマ(議題)から逸脱したことを話してはいけません。
- 理由: 話が脱線して会議が終わらなくなるのを防ぐためです。
- 具体例:
- 「道路工事の契約」の議案審議中に、「学校給食のメニュー」について話し出すこと。
④ 質疑における「意見陳述」の禁止
「質疑」の場面では、事実を確認することしかできず、自分の意見を述べてはいけません。
- 理由: 意見を戦わせるのは「討論」の場であり、質疑は情報の確認の場だからです。
- 具体例:
- ×「私はこの事業は無駄だと思います!」(意見)
- 〇「この事業の費用対効果の根拠は何ですか?」(事実確認)
⑤ 討論における「質問」の禁止
逆に、「討論」の場面では、自分の賛成・反対の意見を述べることしかできず、他人に質問をしてはいけません。
- 理由: 討論は採決前の最終的な態度表明であり、やり取りをする場ではないからです。
⑥ 他人の発言に対する批評の禁止
質疑などの最中に、同僚議員の発言内容を批判したり、評価したりしてはいけません。
- 理由: 質疑はあくまで「議員 vs 提案者(首長)」の対話であり、議員同士の言い争いではないからです。
- 具体例:
- 「先ほどのA議員の質問はレベルが低いですが…」といった前置き。
⑦ 重複発言の禁止
他の議員がすでに聞いたことや、自分がさっき言ったことを、意味なく繰り返してはいけません。
- 理由: 議事進行の遅延を招くためです。
3. その他の倫理的な制限
⑧ 虚偽の発言の禁止
当然ですが、嘘をついてはいけません。特に議会での発言は公式記録(議事録)に残るため、事実に基づかない発言は責任を問われます。
⑨ 差別的発言の禁止(ヘイトスピーチ等)
人種、信条、性別、社会的身分などに関する差別的な発言は、無礼の言葉に含まれるだけでなく、人権侵害として厳しく制限されます。
ルールを破った場合のペナルティ
もしこれらの制限を破って発言した場合、議長には以下の権限を行使します。
- 注意・制止: 「発言を注意します」「議題外です」と警告する。
- 発言の取消し: 議事録から不適切な部分を削除させる。
- 発言の禁止: それ以上喋らせず、演壇から降ろす。
- 懲罰: 悪質な場合は、後日議決によって「陳謝(謝罪)」や「出席停止」などの処分を科す。
まとめ
議会における発言内容の制限は、「品位(悪口・プライバシー)」と「ルール(議題・役割)」を守るためにあります。これらを守ることで初めて、言論の府としての機能が果たせます。
質疑と討論が混同されがちであるから注意すべきである。たとえば、「私は本案については、何々で…・・・・・あるから賛成するものであるが、しかし、何々について・・・・・・お尋ねしたい」というような質疑とも討論ともつかない発言は許されないものであって、それぞれの段階に応じた発言をすべきものである。
以上の内容制限に反して、発言が冗長にわたったり、議題を逸脱したり、質疑と討論が混同された発言がある場合は、議長は、まず発言者に注意して反省を促し、その注意に従わない場合は、発言の禁止を命ずることもできることになっている。
質疑とは
質疑は議題になっている事件に対しておこなわれるものであるから、現に議題になっている事件に対して疑問点を質すものでなければならない。また、自己の意見を述べることができない。この場合の意見とは、討論の段階で述べるような賛成、反対の意見であって、自己の見解を述べないと質疑の意味をなさないようなものについてまで禁止しているものではない。
討論
1. なぜ討論に通告が必要なのか?
最大の理由は、先ほど説明した「発言順序のルール(反対者先攻・交互発言)」を守るためです。
議長は、討論を仕切るために、事前に以下の情報を把握しておかなければなりません。
- 誰が発言したいのか?
- その人は「賛成」なのか「反対」なのか?
- 全部で何人いるのか?
もし通告なしで、その場で「ハイ!」「ハイ!」と手が挙がると、議長は「誰が賛成派で誰が反対派か」が分からず、「反対 → 賛成」の交互指名ができなくなってしまいます。
そのため、あらかじめリスト(発言順序表)を作るために通告を求めます。
2. 一般質問の通告との違い
同じ「通告」という言葉を使いますが、目的と期限が違います。
- 一般質問の通告:
- 期限: 本会議の数日前(3日~1週間前など)。
- 目的: 首長(答弁者)が、調査をして回答を作る時間を与えるため。
- 討論の通告:
- 期限: 採決を行う日の開議前や、委員長報告が終わった休憩時など(直前でOK)。
- 目的: 議長が発言の順番(シナリオ)を組み立てるため。
3. 通告がないとどうなるか?
多くの議会では、「通告がない場合は、討論なし(省略)とみなす」という申し合わせ(内部ルール)を作っています。
- 通告なしの場合:
議長は「討論の通告がありませんので、討論を終結します」と宣言し、いきなり採決に入ります。 - 飛び入り参加(通告なしの発言):
厳格な議会では認められませんが、柔軟な運営をしている小規模な町村議会などでは、議長が「他に討論はありませんか?」と聞き、その場で挙手して「反対討論!」と言えば許されるケースもあります。
しかし、スムーズな進行のためには嫌がられる行為であり、基本的には事前に伝えておくのがマナーでありルールです。
まとめ
討論は、その場で思いつきで喋るものではなく、「議長がパズル(賛成・反対の順番)を組むために、直前でも良いので事前の予約(通告)が必要」と考えてください。
動議
【1】案を備えている動議
(1)修正案の動議(修正案)…提出された原案をそのまま通さず、内容の一部を変えて可決しようとする提案。
(2)懲罰の動議…規律違反をした議員に対し、ペナルティを科すことを求める提案。
【2】案を備えていない動議
(1)会議の開閉に関するもの
① 何月何日会議を開くことの動議…次回の会議を行う日時を決める提案。
② 休憩、延会、散会、中止の動議…会議を一時休んだり、その日の日程を終了したりする提案。
③ 休会の動議…議会の会期中であるが、数日間会議を休みにしようという提案。
(2)議事に関するもの
① 日程変更及び追加の動議…予定していた議題の順序を変えたり、急ぎの案件を追加したりする提案。
② 即決の動議…委員会での詳細な審査を省略し、すぐに本会議で決めてしまおうという提案。
③ 議事延期の動議…今日の審議を後回しにして、後日改めて行おうという提案。
④ 執行機関の出席を求める動議…首長や教育長などに、会議に来て説明するよう求める提案。
⑤ 説明省略の動議…簡単な案件なので、提案理由の説明を省いて時間を短縮しようという提案。
⑥ 質疑、討論終結の動議…議論は出尽くしたので、打ち切って採決(投票)に移ろうという提案。
⑦ 秘密会とする動議…内容がデリケートなため、傍聴人を退席させて非公開で会議をしようという提案。
⑧ 委員会付託の動議…詳しく審査するために、担当の常任委員会に案件を送ろうという提案。
⑨ 特別委員会設置又は付託の動議…特定の問題を審査するため、臨時の委員会を作ってそこに任せようという提案。
⑩ 委員会再付託の動議…委員会の報告内容では不十分なので、もう一度委員会で審査し直させようという提案。
⑪ 委員会の中間報告を求める動議…審査が長引いている案件について、現在の審査状況を報告させようという提案。
⑫ 委員会の審査に期限をつける動議…いつまでも議論せず、〇月〇日までに結論を出せと委員会に命じる提案。
⑬ 議決事件の字句等の整理を議長に委任する動議…可決した内容の「てにをは」などの細かい修正を議長に任せる提案。
(3) 委員会におけるもの
① 委員外議員の出席を求め、説明又は意見を聞くことの動議…その委員会のメンバーではない議員を呼んで、話を聞こうという提案。
② 秘密会とする動議…委員会の傍聴を断り、非公開で審査しようという提案。
③ 所管事務の調査の動議…委員会の担当分野について、議案審査とは別に自主的な調査活動を始めようという提案。
④ 調査又は審査のための委員派遣の動議…現地視察などをするために、委員を出張させようという提案。
⑤ 閉会中の継続審査とすることを議長に申し出ることの動議…会期中に終わらないので、議会閉会後も調査を続けたいと本会議に求める提案。
⑥ 請願の紹介議員の出席を求める動議…請願を出した仲介役の議員を呼んで、詳しい説明を聞こうという提案。
⑦ 公聴会を開くことの動議…重要な案件について、住民や専門家の意見を聞く会を開こうという提案。
(4)選挙に関するもの
① 指名推選によることの動議…投票ではなく、議長などが当選者を指名する方法で決めようという提案。
② 選挙を延期することの動議…今は決められない事情があるため、選挙を後日に行おうという提案。
(5)懲罰に関するもの
① 懲罰特別委員会付託の動議…懲罰について審査するための特別な委員会を作り、そこに審査を任せようという提案。
② 一身上の弁明を聞くことの動議…懲罰や批判を受けた議員に対し、釈明や言い分を述べる機会を与えようという提案。
委員会
◯委員長報告に対する質疑は、審査の経過と結果に対する疑義にとどめ、付託された議案に対し、提出者に質疑することはできない。
◯議員は自己の所属する委員会の委員長報告については、質疑をしないことが望ましい。

