本当?「児童手当は効果小、住宅・保育が重要」論文ソースを確認

この記事でわかること

SNSで「会計検査院が“出生数を増やすための現金給付は効果が小さく、住宅支援は効果がある”と報告した」 という趣旨の投稿を見かけることがあります。ここでは、会計検査院ウェブサイトに掲載されている研究論文をもとに、 内容をできるだけわかりやすい言葉で整理します。

引用元(一次ソース):阿部一知・原田泰「子育て支援策の出生率に与える影響:市区町村データの分析」 『会計検査研究』No.38(2008.9)/会計検査院サイト掲載PDF: https://www.jbaudit.go.jp/koryu/study/mag/pdf/j38d08.pdf

注意:これは「検査報告書」ではなく、会計検査院サイトに掲載されている研究論文です。分析に使われた出生率データは1998〜2002年(5年平均)で、当時の条件に基づく推計・試算です。

論文は何を調べた?

この論文は、市区町村ごとのデータを使って、「出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数の目安)」が どんな要因と関係しているかを分析し、さらに政策(児童手当・保育所・住宅費)を動かすと どれくらい変わり得るかを試算しています。

  • 対象:全国 3,234市区町村
  • 出生率:1998〜2002年(5年平均)
  • 見たポイント:住宅費の目安(地価)、保育所の入りやすさ、所得、女性の仕事の負担の大きさ、教育志向の強さ など

結論

1)住宅費が高い(地価が高い)地域ほど、出生率は下がりやすい

論文は住宅費の目安として「地価」を使い、地価が高いほど出生率が低くなる関係がある、と整理しています。 とくに都市部では、この影響が大きい可能性が示されています。

2)保育所が足りない(入りにくい)地域ほど、出生率は下がりやすい

待機児童や定員超過などをもとに「保育所の入りにくさ」を表す指標を作り、入りにくいほど出生率が低い傾向がある、 としています。こちらも都市部の影響が大きい可能性を示しています。

3)児童手当(現金給付)は、出生率を上げる効果が「大きくはない」

論文では、児童手当には「子育ての負担を軽くする面」がある一方で、「世帯の所得が増える面」もあり、 結果として出生率を押し上げる効果は大きくなりにくい、と整理しています。 さらに制度設計によっては、かえって出生率にマイナスになり得る可能性にも触れています。

論文に出てくる試算の数字(SNSで切り取られがちな部分)

児童手当を増やした場合(論文の試算)

  • 出生率の増加:約0.9%(出生率で0.013ポイント程度)
  • 出生数の押し上げ:約1万人
  • 給付総額(前提):約1.03兆円 → 子ども1人増やすコストは年1億円、という計算

保育所の「入りにくさ」を解消した場合(論文の試算)

  • 必要な定員増(全国):約93,100人分
  • 費用(全国):約1,860億円
  • 出生率の増加:約0.63%(0.01ポイント程度)
  • 出生数の押し上げ:約6,700人
  • 子ども1人増やすコスト:年2,780万円、という計算

※これらは論文の前提に基づく試算です。論文自身も、所得階層や地域差などによって反応が変わる可能性があり、 不明確な点があることに触れています。

「住宅補助が効く」という話は、論文ではどういう意味?

SNSでは「住宅補助が効く」と短く言われがちですが、論文の中心は 「住宅費(地価)の高さが出生率にマイナスに働く」という整理です。 そのうえで、出生率の低い都市部では「保育環境の整備」と「地価(住宅費)への対策」が重要になり得る、と述べています。

まとめ

  • 会計検査院サイト掲載の研究論文(2008年)は、現金給付(児童手当)について「出生率を上げる効果は大きくなりにくい」と整理している。
  • 一方で、都市部を中心に「保育所の入りにくさ」や「住宅費(地価)の高さ」が出生率と関係し得る、としている。
  • 論文は児童手当・保育所について、効果と費用を具体的に試算している(ただし前提つき)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です