高畠町の有機農業〜これまでとこれから〜

3/2高畠町総合交流プラザで上記タイトルの谷口吉光氏の講演会が開かれました。

秋田県立大学地域連携・件数推進センター教授 谷口吉光氏の著書

講演内容メモ

◉みどり戦略では、市町村が広める役割を持つ。今までの有機農業は生産者が広めていた。
◉高畠町は有機農業で50年の歴史という価値がある。これは強み!。
◉有機農業、オーガニックが一般化してきた。身近になった。大都市から地方に理解を持つ人が増えた。差別化要因として薄れた。
たかはたオーガニックラボという組織がある。
◉兵庫県がオーガニックヴィレッジ宣言を一番多くしている。
◉有機農家と慣行農家が協力し合う体制をつくる必要がある。
◉いすみ市で有機米を給食に入れたのは、農家が有機農産物を生産する誘引をつくり、そして農家の収益性を高める戦略だった。
◉農水省が有機農業を進める理由はビジネス。つまり儲かるからという理由。
◉生協の宅配サービスパルシステム
やまがた有機農業の匠
e有機生活

先進的な産直産地の特徴

① 事業規模は数億〜十数億円
② 出荷農家は数十~数百名
③ 安全・健康・環境をベースとした付加価値・多部門的事業
④ 消費者との交流
⑤ 循環型農業をめざす新しい技術確立
⑥ 企業的な組織形態
⑦ 自力で積み上げてきた農民的な資本蓄積

産直の時代の主役は「産直産地」

□「産直の時代」に躍進したのは、国の政策に反旗を翻したアンチ農協、アンチ農水省の農民団体だった。
□産直によって発展したので「産直産地」と呼ばれる。
 例:農業の近代化(規模拡大、効率化、農薬や化学肥料使用、機械化などを推進する農政)に対する反対運動
 例:減反政策に対する反対運動
□こうした産直産地が大都市の消費者と結びついて、本格的な生産者組織に発展した。

「産直の時代」の高畠 強力な産直産地

□高島町には、強力な産直産地がいくつも存在する。
 米沢郷牧場(1974年~※前身団体の設立年)
 山形おきたま産直センター(1985年~、拠点は南陽市)
 上和田有機米生産組合(1986年~)
 おきたま興農舎(1989年)
 高畠町有機農業研究会提携センター(1990年~)
 ファーマーズクラブ・赤とんぼ(1995年~、拠点は川西町)
□強力な産直産地が存在することによって、有機農業を地域に広げる拠点が作られた。

「みどり戦略」

□2021年1月、農林水産省が「みどりの食料システム戦略」(みどり戦略)を発表した。
□そのラディカル(急進的)な内容は全国の農業関係者を驚かせた。
□ 2050年までに達成すべき数値目標:
・農林水産業のCO2排出量実質ゼロ
・化学合成農薬の使用量50%削減
・化学肥料の使用量30%削減
・有機農業を100万ha(全農地の25%)に拡

みどり戦略を推進すると、オランダのようになります。目的は新しい食ビジネスを創出ではないでしょうか。

若い世代の動き:たかラボ

□外薗明博氏と若手農家が町行政などと連携して始めた運動。
□これまでの有機農業運動とはまったく違ったスタイルで、シンボルマークや動画を作ったり、人びとを巻き込む多彩な切り口のイベントを次々に実施し、新しいつながりを生み出している。
□これがどのように展開していくのか楽しみだ

日本農業の常識を根底から覆す目標

4つの数値目標は日本農業の常識を根底から覆した。
「これまで農水省は『きちんとした農産物を育てるには化学肥料や農薬が必要だ』『農薬は使い方を間違えなければ安全だ』と指導し、地方自治体やJAはその指導を信じてきた。
それが突然『30年以内に農薬を半分に、化学肥料を3割減らす。有機農業を農地全体の4分の1に広げる』と言い出したのである。
全国の農業関係者が大きな衝撃を受けたのも無理はない

農薬と化学肥料と化石燃料の大幅削減は世界の潮流

□しかし、農水省やJAはそれを無視し、安易な慣行農業を続けてきた。
□ところが、2020年になって、アメリカやEUは、農薬と化学肥料を大幅に減らすと言した。
アメリカ:農業イノベーションアジェンダ(2020年2月)
EU:農場から食卓へ戦略(2020年5月)
□欧米の政策転換に取り残されないために、農水省は大慌てで政策転換を決めた。それがみどり戦略。突然の農水省の方向転換に現場は大混乱。
□もっと早く着実に転換していれば、こんなことにはならなかっただろう

農家数と面積を大幅に増やす?

□高畠町における有機農業の面積は約100ha。町の水田面積(約3,000ha)の約3.3%。全国の数字は0.6%だから5倍以上ある。
□しかし、25%にまで拡大するには100haを750haと7.5倍に拡大する必要がある。
□有機農業を広げるには、大勢の慣行農家を有機農業に転換してもらう必要があるが、それはとても難しいと言われている。
□「慣行から有機への転換」をどう進めればいいのだろうか

生産拡大の余力は少ない?

□理由1 消費者の高齢化と消費量の減少。「消費者との提携での取引量がかなり減っています。消費者は高齢化して、食べ続けられなくて止める、あるいは消費者グループが続かなくなって解散する。従来型の提携関係は限界近くにきているのかなという思いがあります」
□理由2現在の若い世代は収入が少なく、高い有機農産物を買い続けられない。
□理由3 有機農家が高齢化して、面積拡大に取り組むのが難しくなっている。効率的な除草技術が見つかっていない。

町行政の出番?

□これまで、高畠町の有機農業はほぼすべて農民運動が主導してきた。
□それはすばらしい成果だが、みどり戦略が突きつけているのは、有機農業を軸に地域農業全体を持続可能な方向に変えること。
□その課題は農民だけの力では突破できないのではないか。
町行政の力が必要ではないか?

有機給食を通した食と農の再生を

□市町村が給食で使う有機野菜、米、果物などを、農家が再生産できる価格で全量買い上げる。
□農家にとっては、有機農産物を地で着実に販売していける「新しい販路」である。
□子供たちが未来の有機農産物の消費者になる。また、子どもに影響されて親たちも有機への関心を高める。
□給食費と有機農産物の価格差は行政が補填すればよい。
□農水省の「オーガニックビレッジ」事業には、有機給食の導入が盛りこまれている

慣行栽培農家の考え方

転換参人の難しさ

有機農業を始めるには2つのタイプがある。
新規参人:非農家が新たに有機農業を始めること
転換参人:慣行農家が有機農業を始めること
口新規参入に比べて転換参入は難しいといわれてきた。
慣行農業の常識が邪魔をするから。

千葉県いすみ市の例

太田洋いすみ市長とのインタビューより

市長:(平成23年に有機農業を始めたんですが)その時に思ったことは、農家と多分一大戦争が起こるだろうと。

なんで今更有機農業をやるんだと。今更有機農業をやったって、どうにもならないじゃないかと。

お前は俺たち農家をつぶす気かと、そういう話になるんじゃないかと思いまして、躊躇したんですよね。

慣行農家の気持ちを想像する

【考え方の問題】
(1)慣行農業の何が悪いのかわからない。
 →国の基準を守って使っていれば、農薬や化学肥料だって問題はないはずだ」
(2)有機農業は慣行農業の常識から違いすぎて理解できない。
 →「有機農業は虫を増やし、草を増やし、菌を増やす技術です」(舘野廣幸さん)と言われても…
(3)有機農業で作物が育つ仕組み(メカニズム)がわからない。
 →「農薬や化学肥料を使わずに、どうして作物が積れるのか」
(4)有機農業に対する先人観から抜けられない。
 →「草だらけ」「病害虫の巣」「儲からない」「大変」「宗教」…
(5)有機農業で本当に経営できるのか。
 →「買ってくれる人がいるのか」「収益性が劣っているのでは?」
【対策の問題】
(6)病害虫の被害が出たらどうするのか。
 →「害虫が出たらどう防ぐのか」「減収しても補償がない」
(7) 関心はあるが、行政もJAも冷ややか。
 →「『有機農業の指導はできない』と言われた」
(8)関心はあるが、何から始めていいのかわからない。
 →「慣行から有機への転換プログラムがほしい」
(9) 指導者がいない。
 →「教えてくれる人がいない」「相談できる仲間がいない」

先進事例「熊本県山都町」

農業研修制度が2018年に創設を実施している。

  • 就農希望者が現役の農家のもとで直接有機農業を学ぶことができる。
  • 空き家への転居には補助金が支給されるなど、移住サポートもある。
  • 移住後の生活についても都度専門機関に相談することができる。
  • 必要な資材や農機などの手配についても、受け入れ先の農家や地元の方々から協力を得ることができる。
  • 担当者が定期的に巡回して就農状況を確認し、新規就農者は細かなアドバイスをもらえる。

くまもとグリーン農業推進宣言

熊本の宝である「地下水」と「土」を農業によって守り育てていくため、
土づくりを基本に化学肥料や化学合成農業の使用を減らした、
環境にやさしい農業を推進して行くことの宣言です。山都町は県内の自治体では初めて、2017年11月12日に宣言しました。
2020年までに生産宣言・応援宣言あわせ2020件にする目標を掲げ、それを達成することができました!

「あきたこまち」をどう守る?

重イオンビーム放射線育種「あきたこまちR」への2025年全量転換に対して 〜東京集会〜

 秋田県は日本を代表するお米「あきたこまち」を、農研機構が重イオンビーム放射線照射によって遺伝子を改変した「コシヒカリ環1号」から作った「あきたこまちR」に 2025年から全量転換するとしています。
 この重イオンビーム放射線の利用は戦後から世界各国で続けられてきたガンマ線を使った放射線育種とはまったく異なり、遺伝子の二重鎖を直接破壊して、突然変異を誘発します。ガンマ線による放射線育種は日本でも 2022年に終了し、世界でもほぼ終了を迎えたと考えられます。一方、重イオンビームによる放射線育種は実質日本だけです。
 「コシヒカリ環1号」はカドミウムを吸収する機能を持った遺伝子 OsNramp5の1塩基が破壊されており、その改変された遺伝子が「あきたこまちR」にも入っています。この遺伝子の変異が原因となって、「コシヒカリ環1号」や「あきたこまちR」は生命の維持に不可欠なマンガンの吸収能力が3分の1未満に下がってしまっており、収量も減少することが想定されます。こうしたお米の安全性(毒性学、栄養学等)は実験も行われておらず、安全・安心だという確証はありません。それにも関わらず、秋田県や農水省はこれらが同等だとして、流通する際には消費者が区別できないように「コシヒカリ」「あきたこまち」と表示して流通させることができ、さらに有機認証も可能だとしています。しかし、これは科学的に妥当なことでしょうか?適正な表示なのでしょうか?そもそも消費者は、重イオンビームで遺伝子を破壊されたお米を知らずに食べること、有機米として食べることを望んでいるでしょうか?
 この重イオンビーム放射線育種米は秋田県だけの問題ではなく、農水省は全国の主要品種としていくとする指針を2018年に立てており、来年度概算要求にも2025年までに3割(14都道府県)での導入を目標にしています。「あきたこまち」を皮切りに日本のお米が重イオンビーム放射線育種米に変わってしまう可能性があります。
 消費者の知る権利、安全である権利を奪い、以前とは同等ではないお米を生産者に強いるこの施策に対して、声を上げることが必要です。そこで3月29日、秋田県の農業に関わる方にもご参加いただき、東京で集会を開催します。ぜひ、ご参加ください。
日時:3月29日午後2時~4時半
場所:連合会館 203会議室(108名定員)あるいはZoomによるオンライン配備(500名)
参加費無料(ただし、カンパ求む)
参加申し込み:https://bit.ly/komachi0329
主催:「あきたこまちR」問題を考える実行委員会
連絡先:OKシードプロジェクト https://okseed.jp/ info@okseed.jp

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